今熱がある時に病院へ行ったらどうなるの? そんな疑問にお答えできるかも知れない、コロナ禍における、慢性疾患を抱える人の緊急発熱外来体験記

スズヤ ケイ

コロナ渦における、慢性疾患を抱える人の緊急発熱外来体験記

 この頃ようやくにして、疲弊した医療体制の実情が取り沙汰されるようになってきましたね。


 しかしニュースなどでは医療従事者ご本人や、専門家からのコメントを通して発進されることが多く感じ、患者としての目線でコロナ渦の弊害をお伝えしたいと思い、こうして筆を取りました。


 始めに誤解されないように断言しておきますが、私は新型コロナウィルス陽性反応者ではありません。


 このコロナ渦が始まる以前より、とある慢性疾患で定期的に通院を続ける、一般外来にあたる患者です。


 特別命に別状はないものの、薬を飲まなければ少々生活に支障が出る、その程度の症状です。


 ここでは分かり易く花粉症くらいに思って貰えれば結構です。



 すでに述べたように、私は定期的に通院を繰り返し、投薬を続ける生活をしております。


 それはコロナ渦においても変わる事はなく、なるべく人が少ない時間を選んでこそこそと通院をする日々です。


 しかし病院ではコロナ対策として、入り口で来院者全員の検温がされるようになっています。

 そのお陰で私は、毎回緊張しながらそれに臨む事になったのです。


 何故なら、私は持病や投薬の影響があるせいか、元々の平熱が36,8℃程度と高めだからです。

 毎日体温をチェックしていますが、37℃を超える事も普通にあります。でも元気です。


 一応補足しておくと、コロナが流行り始めた時期に病院にて検査を受けています。

 ウィルスによる炎症反応等が見られず、私自身も諸症状が皆無なままで二週間以上を経過している為に、体質によるもの、とのお墨付きを頂いております。

 そして今現在も熱はあっても身体に異常はありません。


 幸いにしてこの1年程、通院時の検温で37℃を超える事はなく、無事に診察を受けてこられました。

 しかしそれでも、熱が上振れして入り口で引っかかったらどうなるのだろう、という不安を毎度毎度感じていたのです。


 普段病院のお世話になる事のない完全健康体な方はご存じないかも知れませんが、薬の処方箋というものは、病院に行ってすぐにはいどうぞ、と出して貰えるものではないのです。


 物凄く軽い効能のものであればそれもあり得るのですが、私の場合は定期的に医師の診断を受け、薬の効き目を確かめながら処方を微調整していく、という形で投薬をなされています。

 故に、診察を受ける以前の段階、病院内に入る許可を得るところからが最初の試練となる訳です。



 以上が前置きとなりまして、本題に入ります。


 先日、いつものように病院へ向かい、入口で検温を受けました。手で触れずにぴっと顔の表面温度を測るアレです。


 しかしその日は特別寒かったせいか体温計の調子が悪く、35℃以下というありえない数字が出てしまったんですね。


 そこで看護師さんから、改めて脇の下に挟むタイプのもので測り直すように頼まれたのです。


 すると……恐れていた事が現実になってしまいました。


 37℃を超えてしまっていたのです。


 そこからはもうエマージェンシーコールですよ。


 申し訳ありませんがこちらでお待ち下さいと、入り口から離れた壁際にぽつんと置かれた椅子に座らされ、用意されたストーブの前でじっと待つ時間のいかに長かった事か。


 入り口では電話で緊急発熱外来です、対応お願いします、だの、よく聞き取れない恐らく合言葉のようなものを交わし合う声が忙しなく響いて来る訳です。まさにサスペンスですよ。


 私の場合は常連ですから、カルテと診察券からすぐに身元がわかります。その分はスムーズだったのでしょうね。

 しばらくして戻ってこられた看護師さんに、電話番号や住所などいくつかの本人確認の質問をされ、問題なく照合が済みます。


 そしてその後は病院の裏手へ案内されました。


 そこにはプレハブ小屋がいくつも設置されており、中はエアコンと送風機で空調が完璧な待合室となっていました。


 その一つで待っているように伝えられ、ぽつりと一人取り残される私。寒い。


 大事になってしまった……と怒涛の不安が押し寄せます。


 とりあえず家族にちょっとやばいかも、と電話をかけ、ふぅと一息ついたところへ、また慌ててしまう事態に直面します。


 私が電話をかけている間に、病院からの着信履歴が何度も入っていたのです。


 ここからは電話でやり取りをする手筈だったようで。

 看護師さんもお疲れのようでしたし、そこまで伝え忘れていたのでしょうね。


 電話番号の確認をしたのはこの為か、と膝を打ちつつも呆然とする私のスマホが鳴りました。


 今度こそきちんと電話に出てお話を伺います。


 すると電話口にて、改めて氏名と生年月日などを子細に確認をされました。かなりの念の入れっぷりです。


 それが済むと本来の受付に移ったのか、保険証の番号を聞かれて確認が済むと、電話診察となるので医師から直接電話が来るまでお待ち下さいと、一旦電話が終了しました。


 まさかの電話診察! そういうのもあるのか。


 その日は院内も混雑していたらしく、診察の順番は大分後ということだったので、これ以上慌てても仕方ないと腹を括った私はスマホをいじって待つ事にしました。


 数十分後、私がメールの文章を打とうとしていた所へ、着信が入りました。


 しかし折悪くキーボード画面が出ていて妙な操作をしてしまったらしく、キーボードが消えずに電話応答ボタンが押せないという最悪の状態に。


 私が悪戦苦闘している間にも呼び出しは続きます。

 余計に焦る私はいつまでもどう対応したら良いのかわからない。


 最終手段、再起動しました。


 数分後、再びかかってきた医師からの電話にはまず平謝りするしかありませんでした。

 向こうからすれば相当迷惑だったことでしょう。


 こういう可能性もあるので、電話受診を待つ際はスマホをフリーにしておく事を強くお勧め致します。


 閑話休題。


 電話での診察は普段通りに進みました。担当の先生は私の体質を理解されているので、いつもの熱が上振れしただけで、PCR検査の必要もないだろうとの診断でした。


 無事に診察が済んだところで、次は受付からの電話がかかってきました。


 今回のお会計についてです。


 熱がある場合は院内に入れないので、当然受付で会計をする事も出来ない訳です。


 2週間後にまた来院して、検温をクリアすればその時にお支払いを、という話でした。


 そして薬局についても同様だったのですが、こちらは少し困った事がありました。


 本来であれば、薬局にも入れず薬は後日郵送という形らしいのです。


 しかし私の場合、その日の診察で薬を一部新しいものへと切り替える事になりました。


 今すぐ飲めるストックが無いのは問題です。

 そこを配慮して頂いた病院側が看護師さんを薬局へと派遣して、私のいる待合室まで薬を届けに来て下さったのです。


 なんという頭の下がる思いでしょう……

 ただでさえ人手が足りてはいないでしょうに、このような軽症の患者にここまでの手間をお掛けしてしまったのです。


 もちろん私はマスクをした上で手指を消毒しておりますし、看護師さんも全身フル装備の臨戦態勢ではありましたが、このご時世に熱があるという人へ薬を手渡しするなど、その心労、いかばかりか想像を絶します。

 本当に感謝に堪えません。



 これが、ただ薬を貰いに行くだけのつもりだったのに、思わぬ大事件に発展してしまった顛末です。


 私は今、次回病院へ行く事が非常に怖くなっています。

 自分自身、手間が増えて面倒だなというのもありますが、何より今の医療現場を支えておられる皆さんへ、余計な負担をかけてしまいかねない事が、何より恐ろしいのです。


 私などはこれでまだ良い方で、もっと重篤な患者さんだって沢山おられます。

 これ以上コロナが蔓延すれば、そういった方々への医療が疎かになってしまう可能性があるのです。


 身近にあった医療サービスが、気軽に受ける事ができなくなる恐怖を、少しでも多くの方へ知って頂きたくてここまで長々と書かせて頂きました。


 外出を控え、手洗いや消毒などの基本対策を取っておられる方々はもちろんの事、不要不急の外出をして羽目を外してしまいがちな方にこそ、この記事を読んで頂きたく思います。


 外出しなければ行えない趣味をお持ちの方の気持ちはよく分かります。私もカラオケが趣味ですから。

 しかし今ではカラオケは自粛して、それに代わる家の中でできる趣味をと、こうして文章を書く事を見出しました。

 他にも、無暗に外出して密にならずとも楽しめる娯楽はあると思うのです。


 どうかこれ以上この災禍を自ら広めるような迂闊な行動は、出来得る限り控えて頂きたいと切に願います。

 コロナに感染した結果、被害を受けるのは自分一人ではないと言う点、何卒留意して欲しいのです。


 乱文乱筆失礼致しました。

 ここまでお読み頂きまして、誠にありがとうございます。

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