怪奇探偵社

神山人海

第1話

歯がガチガチと鳴り身体が震える。

全身の毛穴から汗が吹き出し彼女を抱きしめる腕に力が入る。

駄目だった僕一人でやっちゃいけなかったんだ。

見えるだけで声は聞こえない。

目の前のそれは角が生え、牙を剥き、爪を研ぎながら大きく開いた眼で僕らを見下ろす。

涎を垂らし、その大きな体躯で腕を広げて僕たちを少しずつ肉体と精神を追い詰める。


「なんとかしてよ!あんた専門家なんでしょ!」


彼女が顔をこちらに向けて叫ぶ。

そんな大声を出さなくても聞こえる!とこちらも声を張り上げたかったが恐怖で言霊が詰まる。


「そ、そんなこと言っても・・・。僕は見えるだけでまだ何も・・・できなくて・・・。」


代わりに出たのは情けない言い訳だった。

無理矢理にでもついてきてもらえばよかった、どうして意地になってしまったんだろう。

怪物は腕を振り上げ僕らに振り下ろそうとしている。

僕は目を瞑りどうしてこんなことになったのか走馬灯のようなものが見えてきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る