愛のカタチ
夕崎まほろ
独白
大好きで、たまらない人がいた。
穏やかで優しくて、陽だまりみたいな明るさを持った人だった。
悪戯好きなやんちゃ坊主だった兄にいつも振り回されていて、アイリスを泣かせた尻拭いをよく押しつけられていた。おろおろしながらあの手この手で慰めて、ようやく彼女が泣き止んだとき、ほっとしたように零れる笑みが、今も印象に残っている。
大好きで、たまらない人がいた。
同い年だったはずの兄とは全く違う、冷静で紳士的なふるまいをする人だった。
大人びた雰囲気の彼は子供の目から見ても非常に魅力的で、今思うと憧れのような幼いものだったけれど、恋心を抱くには十分だった。子守やメイドたちでさえ手が付けられない腕白小僧だった兄をたしなめるのはいつだって彼の役目で、いじめられたときにはいつも彼のもとに駆け込んでいたことを覚えている。
だから、見捨てることなんてできなかった。
―どれだけの苦痛を伴うものだったとしても、自分だけは二人の味方でありたい。
醜い打算も混じっていたけれど、あのとき、確かにそう願ったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます