放課後(2)
そして、やってきた放課後。
俺は、やっぱりこれ以上変な噂が立たないようにこっそりと一人で帰ろうと裏口の方に向かっている。
柊さんは生徒会の仕事だ、今すぐ帰れば見つからずに済む! もし問いただされたらタイムセールに急いだ、と言えばいい!
「!!」
遠目だが、裏口の方で人影が見える。誰だ? まさか………いや、それはないな。
だが、近づいて行くにつれて、容姿がはっきりしていった。
色素の薄い髪をなびかせながら佇む女子生徒…………俺が知ってる中で、あの髪の色、髪の長さは一人しかいない。
「やっぱり、先に帰ろうとしましたね? 白上くん 」
「柊さん………」
やはり、柊さんだった。何故気づかれた…………本当にエスパーなのか………?
「はぁ。私に言う事はありますか?」
「ご、ごめんなさい……」
「よろしい。じゃあ罰として」
「?」
え、罰なんてあるの?…………いや、俺が悪いから何でも受け入れよう。
◇◇◇
「……あの、柊さん?」
「なんですか?」
「さすがに、恥ずかしいんだけど……」
「我慢してください」
柊さんがだした罰は、『手を繋いで帰ること』だ。いや、これ罰ゲームなのか………?むしろ、ご褒美に近いのでは……。
よく手入れをしてあるきめ細やかな肌、女の子らしく小さくて柔らかい手だ。
「柊さん? こんなとこ誰かに見られたらまた勘違いされるよ?」
「なんですか? 白上くんは私と勘違いされて嫌なんですか?」
「嫌、ではないけど……」
「なら、いいじゃないですか」
んーーーそう言う事ではないんだが。と言うか、その口ぶりだと………いや、自意識過剰だな。
首を横に振り、邪な考えを頭から消す。
「やっぱりメガネは外さないのですか?」
「あーまあ、陽乃さんに言われたらね」
陽乃さんには自分の事や、花月の事で色々援助してもらったり、と中学校のころ大変お世話になった。その人から頼みなら断る理由なんてない。
「陽乃さん…………白上くんが女の子を名前で呼んでるの珍しいですよね」
「そう?」
「はい、というか、学校の子に話しかけても名前呼ぶ事ないですよね」
たしかに、俺は人を呼ぶ時に滅多に名前は呼ばない………いや、ごめん。うそ。
本当は、名前を覚えてないんだ。割とマジの方で。悟と陽乃さん以外、今は柊さんもかな。それ以外の人と関わる事を進んでしないから覚えてないんだよな。
「あの、やっぱり、会長と付き合ってるんですか」
柊さんは繋いでいた手を離し、顔を俯かせながら訊いてきた。あ、やっと離れてくれた。ちょっと名残惜しいと思ってしまうが、誰かに見られるよりらマシだ。
「陽乃さんとはそんな関係じゃないよ」
「! 本当ですか!」
「本当だよ? それに、陽乃さんと俺じゃつり合わないよ」
「そうですか、そうなんですね」
柊さんは、ぱぁぁぁ、っと顔を明るくして小声で何かを呟いている。
本当に陽乃さんにはそう言った関係じゃない。
好きと言われれば好きだが、恋愛的な好きではなく、憧れからくる好きになる。
「では、はい」
柊さんそう言うと、手を差し出してくる。え、終わりじゃないの……。
「いや、さすがにもう」
「勝手に帰ろうとしましたよね?」
「いやでも」
「勝手に帰ろうとしましたよね?…………ね?」
ニコッと笑う柊さん。何故だろうか、普段なら可愛いと思うかもしれないけど、今はとても怖く、逆らえる気がしない。
俺はまた柊さんと手を繋ぐ。なんで、こんなに手を繋ぎたがるんだ……。本当は、とまた勘違いしてしまうじゃないか。俺が知らないだけで、今どきの男児なら付き合ってなくてもこういう事をするのか?
分からない……。今度、悟にでも聞いてみよう。
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