娘からママが欲しいと言われ、親友に相談してみたら、何故か学年一の美少女がきた

南河原 候

プロローグ

誕生日プレゼント

ピピピッッッッ!!と煩い目覚ましを止める。


四時か……………起きるか。


気怠い身体を起こそうとすると下半身に違和感を感じる。


なんだ? と思い布団をめくって確認する。


そこには、天使のような寝顔で、気持ちよさそうに寝ている少女───花月かげつがいた。



そういえば、昨日一緒に寝たな。



花月を起こさないようにゆっくりと身体を動かして、布団からでる。


花月の頭を優しく撫でて部屋をでていく。


「ん………ママ……」


「!?」


起こしてしまったかと後ろを振り返るとまだ寝ていた。


寝言か、と俺は安心して部屋を出て行った。


…………ママか。



◇◇◇◇



俺、白上しらがみましろの朝は早い。


朝四時に起きて、まだ眠い頭を覚ますために、洗面所で顔を洗う。


「うっ……冷たい」


重たい目蓋が開き顔が引き締まる。


次に洗濯機に洗濯物を入れて洗っとく。ついでにここで制服に着替える。

それが終わったら次は、部屋の掃除に行く。



リビング、廊下、自分の部屋を順番に掃除機を軽くかけていく。だけど、今日は花月が寝ているから花月の部屋を先にやっていく。



◇◇◇◇



「よし、終わった」



掃除が終わったら次は朝食の準備をするのに、キッチンに行く。


キッチン着いたら、冷蔵庫から食材を取り出し調理を始める。


今日は、味噌汁と卵焼きとサラダを作る。


と、その前に時間を指定しておいた炊飯器を炊けているか確認する。



炊飯器を開けるとぶわぁ、と蒸気がでてくる。


米が一粒一粒ちゃんと立っている。



「よし、ちゃんと炊けてるな」



確認し終わったら朝食を作っていく。



◇◇◇◇



朝食ができたら食卓に並べていく。


並べ終わったら次は洗面所に行き、洗濯物を持って縁側の方に干しに行く。


「うっ、冷えるな……」


四月に入ったと言え、まだまだ肌寒い。あ、曇ってるな、飴降るかな?



ちら、と庭にある桜の木に目をやる。


開花が早かったせいかちらほらと葉っぱを見せ始めていた。



洗濯物も干し終わり、次はゴミをまとめて、ゴミ捨て場に持っていく。


学校行く前とかに持っていきたいが、ゴミ捨て場とは逆方向のため時間がある時に持っていくしかない。



それらが終わったら、多分まだ寝ている花月を起こしに行く。



これが俺の朝である。


親が共働きで忙しく家に帰ってする事が少ないため、俺が一人でやらないといけない。



「お。おはよう、花月」



と思ったら、パジャマを気崩し、目を擦りながらまだ眠だけな顔をしている花月が二階から降りてきていた。



「おはようございましゅ……パパ」

「ご飯できてるから顔洗ってきな」

「ふぁ〜い」


欠伸をしながら返事をしておぼつかない足取りで洗面所に向かっていく。


大丈夫かな、と心配になり洗面所に入っていくまで見守った。


◇◇◇◇


先程、俺の事をパパと呼んでいたが、俺と花月は親子ではなく兄妹だ。



花月は元々、叔父の子だ。


花月がお留守番中に、両親が交通事故で亡くなってしまったそうだ。



叔父夫婦は駆け落ちだったらしく引き取れるのがうちの家族だけだったらしい。だけども、うちの親は仕事、仕事と、仕事を優先してしまうから、幼くして親を失った花月にとっては良い環境とは言えない。俺だって親より、祖父達に育てられたと言ってもいいぐらいだ。そんな所に来たら更に心を閉ざしてしまうかもしれない。



だから、俺が寂しくならないように、不自由させないように、毎日笑顔で過ごしてほしくて、一生懸命頑張って、毎日鬱陶しいぐらい構った。家事は一通り祖母に教わっていたから難なくこなせた。


そしたら、いつの間にか『パパ』と呼ばれるようになっていた。



そうこうしてるうちに、紺色と白色のワンピースに着替えてから花月が洗面所から帰ってきた。



銀糸のようなロングの銀髪。


睫毛が長くぱっちりとした瞳。


整った鼻梁。


大きくなったら絶対に、美人さんになるだろう。銀髪なのは外人だった母親のを受け継いでいる。



「ちゃんと着替えてきたな、えらいぞ」



よしよし、と優しく頭を撫でてあげる。花月はえへへ、と嬉しそうにしていた。



花月は席に座り、俺はご飯をよそってから花月の真反対の席に座る。



『『いただきます!』』



ぱくぱく、と美味しそうに食べだす花月。俺も続いて食べだす。



そういえば、と思い出し花月にとある事を訊く。



「なあ、花月。誕生日プレゼント何がいい?」

「んー」


悩ましそうに目を細め唇をとんがらせている。


少しすると顔を俯かせる。言いづらい事なのかな? 仕方がないなぁ。


「大丈夫だよ。どんな欲しい物でも用意してあげるから、言ってみな」


優しく笑みを浮かべて花月に訊いてあげる。


そうすると、花月は顔をあげてよしっと気合いを入れてこう告げてきた。



「ママが欲しい!」

「え」


静まりかえった部屋に箸が落ちる音だけが響き渡る。俺の脳は一瞬フリーズした。



今なんて? ママ……? いやいやいや、きっと聞き間違えだ。



俺は聞き間違えだと思ってもう一度聞き直す。



「だから、ママが欲しい!」


俺は持っていた箸を落とし、フリーズしてしまった。



花月、ごめん。流石にそれは無理だ…………。



暫くして、俺は考えるのを一回止めて、苦笑いをして誤魔化した。

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