空へ上がる

 私は子供の頃からお転婆だったと思う。

 思うというのは自己申告なので認めてほしい。

 多分周りからはお転婆どころかじゃじゃ馬だと思われていたに違いない。

 大人が目を離したら姿が消え、ただいまと言った直後両親が気付いた瞬間には玄関から飛び出していた。

 誰も知らないところに行ってみたいと今でも思うし、世界の果てだって見れるものなら見てみたい。未だ誰も届いた事のない海の底や、私たちの誰もたどり着いたことのない空の果てだって知ってみたい。

 だからこっそりと町を抜け出して、外へ出たときに私はこの隧道トンネルを見つけた。一人が通るので精一杯なそれは、何処までも何処までも続き足がくたびれたな、帰ろうかなと思った時に隧道トンネルの先に光が見えた。

 せめてアレを見て帰ろうと重くなった足を動かし進む。

 ――青い、青い光が見えた。今まで見た何よりも青い、それが。

 足が早くなり暗闇を抜け――私はそこで彼と出会ったのだ。

 私たちとは違う言葉を話す彼とはそのあと数度同じ場所で出会った。

 見知らぬ生き物も、見知らぬ場所も私の好奇心を刺激するものでしかなく幾度も幾度も出会う内に彼は何か同じパターンの音を出している事に気づいた。あいさつでは?という事実に気付いた時に私も同じ事をする事にした。互いに言葉は通じないけれど意図は通じ合うことが出来た。

 音も文字も違うけれど、私はここに度々通った。待ち合わせ、何て事が出来るようになったのはつい先日のことだったので、居る時は嬉しいし居ない時は何か寂しい気になったりもした。だけど今日は待ち合わせをしていて、そこに彼がいると思うと隧道トンネルの先へと進むためも強く水の中を掻き分けるのだった。

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