星屑倶楽部

南部 健二郎

第1話 祝福され生を受けたオヤジ達

 まさか自分が、50歳まで独身のままだとは、微塵も思わなかった。むしろ2回くらい離婚歴があるような人生を送ると思っていた。悲しさはないが、脱力感を伴う虚しさには、たまに襲われる。

 当然、昔からの友人達は、ほぼ結婚し、子供も授かっている。しかし、そんな彼らを観ていて、多少の焦燥感を湧き上がらせる事は、確かにあったが、内情、つまりその結婚生活とやらの現実を聞き、ガキの頃に漠然と思い描いていた、淡い幻想みたいなものは、どんどん萎んでいった。その幻想とは、例えば、新婚旅行は海外。子供は3人くらい。仕事も順調にいき、30年ローンで一戸建てを購入する。といった昭和後期のモデル世帯みたいなものだ。

時代は移り、昭和、平成、そして今は令和になった。

ある友人は、3人目の奥さんと暮らし、たまに酒を飲むと、家での立場はあまり良いとは言えないと、愚痴をこぼす。また、他の友人は、30歳くらいで結婚し、しっかりと二人の子供をもうけ、子育てを全面的に妻に任せて、本人は夜のクラブ活動に余念がない。

そして、数少ない成功例としては、たいてい奥さんだけが元気で、旦那はどんどん老け込んでいくパターンだ。

これは、公務員、銀行員などに多くみられる。

カップル自体に問題はなくとも、授かる子供に、何か問題がある事もある。

 そして、自分勝手な結論が作られていく。

 一人の方が楽だ!自由だ!楽しい!という真理。結婚しなくても、できなくても、生活が出来てしまう、偏った便利さにズブズブと浸かった生き方だ。

 思い返せば、俺達はガキの頃から恵まれた環境にいた。テレビは、朝からアニメが放映され、夕方頃には、特撮ヒーロー番組の再放送。そして夜7時からまた、何かしらのアニメが放送されていた。街で100円玉を握りしめ、熱中していたゲームは、ファミコンへと姿を変え、一気に広まった。服装に関しては、DCブランドが全盛期で、その後は、デニムをベースにコーディネートするアメカジ、渋カジなるものが主流となっていった。

 各メディアが、皆をまんまと躍らせて、物欲を積極的に煽っていった。

そして、その集大成的存在として、コギャルが現れた。

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