第154話 広場
「アハハ。何か盛り上がってると思ったらカードゲームしてたんだ」
「ごめんね。うるさかった?」
ちょっとした休憩のつもりだったんだけど、まさかあんなに白熱するなんて。……熱くなってたのは私じゃないけど。
「ぜ~んぜん。ってか、あれくらいの音で休めないようだと冒険者以前に魔法使いは務まらない感じでしょ」
「言っておきますけどドロシーさん。私はまだ負けたわけではありませんわ。王都に戻ったらもう一勝負です」
「ええっ!?」
正直、もうイリーナさんとはポーカーしたくないんだけど。でもせっかく誘ってくれてるわけだし。ゲームを通してもっとイリーナさんと仲良くなれるかも。
「あっ、次は私もやる感じだからね。ってかどうせならレオっちもいれてクランの皆でやらない?」
「あら。いいですわね。レートはどうします?」
「お、お金は賭けなくてもいいじゃないかな?」
でもクランの皆で遊ぶのは楽しそう。……レオ君、今頃どうしてるかな? ラミアが暗躍してるみたいだけど、王都にはガルドさんだっているんだし、普通に学生してる分には危険はないよね? むしろ心配なのはアリアの方かも。お父様がリトルデビル事件での高評価に味をしめてアリアに危険なことをさせてないといいんだけど。
前を歩くメローナさんがこちらを振り向いた。
「変に緊張されるよりはよほどいいが、ラミアは数ある魔物の中でも上位に位置する捕食者だ。立ち会うなら油断はしないようにな」
「アハハ。了解です」
「正体暴きを外で行うのは、討伐を視野に入れてのことですの?」
私達は屋敷を出て里の外れにあるという広場に向かっている。なんでもそこにラミアとラミアに姿を真似された少女を移動させたらしい。
「その通りだ。生きた齢にもよるが、ラミアの体躯は巨大で、嘘か真か最大クラスにもなると広大な森を包むほどと言われている。実際今里にいるラミアもその辺の家よりは大きかった。室内で戦えば建物の崩壊の影響をより強く受ける私たちの方が不利だろう」
「うわー、魔法も使えて単純なパワーも桁外れってすっごい厄介な感じじゃん」
「不安であれば里の避難所にいてくれて構わない。ドルド殿にもラミアの特定だけしてもらって戦闘はこちらが引き受ける予定だ」
「そうはいきません。ドルドは仲間ですもの。私達も立ち合いますわ」
そう言ってイリーナさんはドルドさんの頭を撫でる。少女姿のドルドさんはそんなイリーナさんを何も言わずにジッと見上げていた。
「私達は私達で身を守るんで、エルフの皆さんはラミアの討伐に集中する感じでよろしくです」
「分かった。だが無謀な行動は取らないよう十分気を付けてくれ」
私達を心配するメローナさんの案内で広場に到着。広場と言っても普段は訓練所として使っているらしく、一面に広がる草原、その所々に草の生えてない円状の大地が点在していた。多分だけど、あの上で訓練してるのかな?
「子供とラミアは離れたところにそれぞれ寝かせている。魔法で拘束はしているが近付く時は注意してくれ」
メローナさんが指差す先には台座の上で眠るエルフの子供がいた。その周囲には武装したエルフが沢山いて、よく見ればここから結構離れた所にある円の上でも同じような光景が展開されていた。
「ねぇねぇドロシー。エルフがこれだけいる光景って何気に凄くない?」
「うん。これなら何があっても大丈夫そうだよね」
数ある魔族の中でもエルフは魔法の扱いに長けた種族。そんなエルフがこれだけいるんだから、たとえ相手が危険指定特Aのラミアでも何とかなりそう。
「それでは頼む。まずはそちらの子から調べてくれ」
メローナさんが二人いるエルフの子供のうち、私達の近くで寝かされている子を指さした。
「ドルド、準備はよろしくて?」
「万全かどうかを聞いているのであらば、どのような準備をしたところで万全などと呼べる状態に届くことはないだろう。そもそもーーむぐ?」
イリーナさんの指がドルドさんの唇を抑える。
「よろしくて?」
(コクコク)
こうしてドッペル族によるラミアの正体暴きが始まった。
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