異世界探偵
総督琉
始まりの事件
1、殺人
異世界転移。
もしそんな経験をするのであれば、それはこの世に未練がなくなった時にしてもらいたいものだ。
とはいってもな、動き出した歯車を止めることはできない。だからこそ、私はこの道を歩まなくてはいけないと決断した。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
異世界。
その世界では誰もが特殊能力を有しており、それによってその世界では多くの事件が未解決に包まれていた。だがそんな中で、一人の男は次々と事件を解決していった。
「夏。依頼人が来たよ」
少女は黒椅子に座り窓の外を眺めていた男へとそう言った。男は振り返り、口を開いた。
「そうか。では通せ」
事務所へ入ってきた一人の女性。深く帽子を被っているせいか、素顔などは見えないが、スタイルからして女性だろうと言うことだけは分かった。
「では依頼内容は?」
「
「これから?」
男は思わず首を傾げた。それもそうだろう。
事件を起こすというのに、これから予告を出すわけでもあるまいし、それに事件が起こると察知することすらできないだろう。
だが女性は『これから』そんな意味深な発言をした。
そして事件が起こると言われた次の日、男は大きな旅館へ来ていた。とても豪華で高級感の溢れる旅館。その旅館に、男は弟子である少女を連れてやってきていた。
「ねえ夏。本当にタダでこんなところに泊まれるの!?」
「ああ。だからといってはしゃぐなよ。かんな」
「うん。分かったよ」
かんなは内心ワクワクし、満面の笑みで目の前にある豪華な旅館を見ていた。
そんな弟子の心境を悟りつつも、男はその旅館の中へと足を運ばせる。自動ドアを進みまず目にしたのは、巨大なシャンデリア。シャンデリアを見上げ、かんなは珍しそうに眺めていた。
だがこれからここで事件が起こる。
それは殺人事件か、それともただの無銭での宿泊か、それとも盗難かは分からない。
それを知る男は、客や店員などを警戒しながら警視していた。
「かんな。まずは部屋へ行こう」
「よーし。部屋だー」
かんなは走って階段を駆け上がって行った。男は階段のそぐそばにあったエレベーターに乗り、部屋がある最上階、つまりは五階を目指していた。
扉が開くなり、そこにはかんなが堂々たる表情で立っていた。
「夏、遅いぞ」
「相変わらず元気だな」
「子供は元気が一番なんだぞ」
「はいはい。元気元気」
部屋へついた男とかんなは荷物を部屋に置いた。既に夜になっていたことから、男とかんなは大浴場で体を休めていた。
時刻は二十二時十分。
大浴場には男とかんなのみ。先ほどまでは二人ほど風呂に入ってはいたが、既に退散していた。広い大浴場で体を休め終えた二人はコーヒー牛乳でも飲みつつ大浴場を出ていた。
二人は大浴場に隣接しているゲームセンターに人が集まっていることに気づいた。
謎の女性から『事件』が起こると聞いていた男は真っ先にゲームセンターへと走り出していた。そこで男が見たのは、全身に包丁か何かで傷をつけられ、血まみれになっている男の遺体であった。
「本当に事件が……」
女性の言ったことは本当のことであった。
予告もないこの事件を最初から知っていた女性は何者なのか、その答えは今は分からない。
今目の前で起きている事件、それを解けば、犯人は分かるのだろうかーーいや、きっと分からないだろう。
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