リモート探偵・黒川進の事件簿 File01 天下茶屋殺人事件
一卍ハヤト
プロローグ
「何とかせんと、
弘美は『
「こんにちは、こちら黒川探偵事務所の所長、黒川進です。仕事のご依頼ですか」黒川は黒のジャケットの下に黒いワイシャツを着ていた。下のほうは机で見えなかったが、黒いレザー革のソファー椅子に腰かけていた。
「大変なんです。好美が警察に連れていかれたんです」
「好美さんが、ああ、そうですか」
「『ああ』て何やのよ」
「ああ、失礼しました」
「また『ああ』て言うた」
「失礼しました。好美さんというのは、お友達ですか」
「妹です」
「なるほど、ということは、あなたはお姉さんですね」
「もう、当たり前のこと聞かんといて!」
「それは失礼しました。ところで、そちらは、どこですか」
「え? 今、マンションですけど」
「あの、どちらのマンションですか」
「天下茶屋です」
「てんがち?」
「天下茶屋!」
「天下茶屋というのは、何県ですか」
「そんなもん、大阪に決まってるやないの!」
「知らなくてごめんなさいね。ところで、どうして妹さんは警察に?」
「
「もう少し順を追って話してもらえないでしょうか。それはいつの出来事ですか」
「今ですよ、今! 今さっき!」
「ということは、夜の8時前後ということですか」
「そうです」
「場所は?」
「え? 自宅マンションですけど」
「自宅に警察が来たんですか」
「ちゃうわ! 居酒屋に!」
「今、自宅マンションとおっしゃったんで」
「それは今、うちがいる場所や!」
「それは失礼しました。自宅近くの居酒屋ですね」
「そうです。て言うか、1階です」
「そちらのマンションの1階ですね」
「そうです。来てもらえますか?」
「いやあ、今から大阪へは、行けませんねえ」
「ええ!? 来てもらわれへんの? ほんなら、話損ってことなん?」
「いやいや、そうじゃないんです。私はリモート探偵なんですよ」
「あ、そうや。リモート探偵て何なん」
「リモートで事件を解決します」
「言うてる意味がわからんわ」
「わかりますよ、そのうちに」
そう言うと、黒川進はにやりと微笑んだ。
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