許されなかった

 高校生活も後ほんの少し。

 大学の方から入学前の課題などが送られてきて、いよいよ大学生になるんだなと実感し始めてきた頃。

 私は親に「一人暮らしをしたい」ということを伝えることにしました。


「一人暮らしがしたい、大学の寮とかでもいいから」


 答えはNOでした。


「大学までそんなに遠くないでしょ? ここから通えば無駄にお金もかからないし」


 そう言われました。

 親の言い分も、普通なら理解できます。

 大学まで電車で1時間半とかで許容範囲だし、お金も家賃とかが別でかかってくるとなると実家にいる方がよっぽど楽です。


 でも、私は違う。


 私は、親が嫌で一人暮らしをしたいんだ。

 何よりも親と離れたいって気持ちがあって、お金がかかるとか、そんなの、私にとって大した問題ではなかった。

 お金を稼ぐことが大変なのはわかってる。

 一人暮らしにどれだけお金がかかるかもたくさん調べた。

 その上で私はここにいるより、一人暮らしをしたいと思った。


 それだけ私にとってこの場所は地獄でした。


「お金も自分でなんとかするから!」


 それでもやっぱりダメでした。


 親からすれば、一人暮らしをする理由がないみたいです。

 そりゃそうですよね。


「お前たちと一緒にいたくないから一人暮らししたいんだよ!」


 なんて、本当のこと言えるわけないじゃないですか。

 そんなこと言ったら怒鳴られますよ。


 正直、一人暮らしの件はダメもとで言ってみよう、みたいな気持ちではありました。

 でも、やっぱり辛かったです。

 一人暮らしをしたくて、そのためにあんなにバイトを頑張ったのに。


 こんなに親と離れたいっていう意思が強いのに、これ以上、私は強く出られませんでした。


「やっぱり私は親に逆らえない。大学卒業して、就職して、1人で生きていけるようにならないとダメだ」


 改めてそう思わされました。



 私、ずっと親の言いなりなんです。


 親とぶつかって自分の意見を伝えるとか、今回のことはそこまですることではないかもしれませんが。


 それでも、私の意思が尊重されるとか、そもそも親が私の話をしっかり聞いて考えてくれるとか、そんな経験がないんです。


 親に従う、それ以上に、親に支配されている生活で。


 逆らったらまるで殺されるんじゃないかってくらい、怯えながら言うことを聞いてきました。

 でも、本当はそんな関係、おかしいんですよね。


 頭ではおかしいって思っていても、私はそれしか知らなくて。

 親に自分の意見を素直に言えている姿なんて想像できません。

 親には全て否定されると思っていて、何かひとつ言うのにも、とても勇気が必要です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る