2度目の諦め

 どうやってそうなったかは覚えていませんが、担任の先生が私の親と面談をしてくれることになりました。

 私と母と担任の先生の3人です。三者面談ってやつですかね。特別に先生が時間を作ってくれました。

 母は特に問題なく約束の日の夜、授業が終わった後に学校に来てくれました。


 面談室のような、あまり広くない部屋だった気がします。

 3人きり、静かな空間。

 話は全て先生がしてくれました。私は何も話していません。母も先生の話を聞いていました。

 先生が母に何を話してくれたのかは全く覚えていません。

 私が嫌だったことなどを話してくれたんだと思います。家のことや受験のこと。

 そして母はたった一言、笑って言いました。


「娘が勝手になったことです」


 その一言で面談は終わりました。


 帰り道。

 どうやって学校から出たのか、どうやってそこまで来たのかわかりません。

 真っ暗闇の中、母が先を歩きます。私はその後ろを歩きます。


「ああ、ダメなんだ」


 そう思った瞬間のことだけははっきりと覚えています。


「私の親はダメなんだ」


「先生があんなに話してくれたのに、それは全部私が勝手にやったことで、自分は知らんぷりなんだ。面談は無意味だった。なんにもわかってもらえなかった。私の苦しみはすべて私が勝手に作り出したもので、自分たちは全く関係ないって思ってるんだ。どうしてそんなことが思えるんだろう。少しも寄り添ってくれない。何にもわかってくれない。


 もうこの親はダメなんだ」


 大きな挫折を味わいました。


 せっかく誰かの手を、大人の手を借りたのに何もできなかった。

 なんにもわかってもらえなかった。

 それが私にはショックすぎてたまりませんでした。


 もうこの先、どうやったって無理なんだろう。

 私はただ静かに我慢をして家を出ることができる日をじっと待つしかないんだ。



 その面談はまるでなかったように、次の日からはまたいつも通りの日常が戻ってきました。

 私の心だけが変わってしまいました。


 あの面談のことを父にどう話したのかもわかりません。

 父から私に話をしてくることはありませんでした。

 もしかしたら、母は面談の内容を父に言っていないのかもしれません。



 あの面談は私が親を嫌いになる理由ひとつになっただけでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る