第17話

子供達は子供達で、色々考えていた。


いつもは四人で眠るのだが、今晩はイーサンとブライト、アウロアの三人で眠る事になった。

と言うのも、少しでも両親の距離が縮まればと、幼いながらも子供達が考えた作戦である。

だから、ブライトとアウロアの距離はとても近い。

そしてイーサンはブライトにお願いする。


「お父様、僕とお母様をギュッとだっこして」


当然、ブライトは喜んでイーサンとアウロアを抱きしめる。

アウロアの表情は凄い微妙なのを気にすることなく。

そんな二人を見て、イーサンは『もっともっとがんばんなきゃっ』と思いながら眠りにつくのだ。



アウロアが子供達に離縁の相談を持ち掛けた時、双子達は衝撃を受けると共に『とうとう現実になってしまった!』と頭を抱えた。

と言うのも、彼等の先生はエルヴィン。

授業で誓約書の勉強をする時に、ブライト達の誓約書を見せ解説していたのだ。

よって、誓約書の中身はブライトよりも詳しかったりもする。

そしてエルヴィンから、もしかしたら近い将来、誓約書の一部が履行されるかもしれないという事も聞かされていた。


離縁・・・までは行かないと思っていたが、何となく危機感は彼等の中にもあった。

両親はそこそこ・・・・仲は良い。

特に子供達といる時は、共通に守るべき者がある所為か非の打ち所の無い親になる。

だが、そこから一歩離れてしまえばそれこそ『そこそこ』なのだ。

それは子供達も感じていた。そしてそれが、とても寂しく不安だったのだ。


いくら次代の王となるべく教育を受けていても、たかだか四才の子供である。

両親が何よりも大切な彼等にとって、離縁は何が何でも避けなければならない。

万が一、二人が離縁したとして、母親が誓約書通り城に残り一緒に住んだとしても、心が離れ冷めた夫婦、両親として側に居てくれても子供達は嬉しくない。

不安で不安で仕方がないイーサンとシャーロットは、思わずエルヴィンに泣きついた。

そんな子供達にエルヴィンは、大丈夫と何でもないように笑ってくれた。子供達にとってその笑顔は、不安を払拭したと同時に後光が差して見えた事は言うまでもない。

離縁阻止の対策として、イーサン達がいれば、母親であるアウロアは渋々ではあるがブライトを受け入れてくれる。だからその関係を慣らしていけばいいのだと言われたのだ。

当然、子供達は喜んで協力する事を宣言し、ヴィルトも加え『離縁阻止対策チーム』を立ち上げた。

予防策として、普段から両親となるべく一緒にいる様に心がけた。

イーサン達も単純に、今まで以上に両親に甘えられると大喜びしていたのだが、なにせ国王と王妃である。

なかなか我侭を言える状態がないのだ。つまりは四人で過ごす時間があまりとれない。

今まではこれが普通だと思っていて何の疑問ももっていなかったが、こんなにも家族四人で過ごす時間が少なかったのかと改めて認識する。

確かに普通の貴族や平民とは違う事は分かっている。

分かってはいるが、大切な家族が壊れてしまえば話は又別だと子供達は幼いながらに思う。

はてさてどうしようかと悩んでいる時に、イライザの話が出たのだ。

そしてエルヴィンより、離縁の話が有力になってきた事も聞かされた。

それに対しての対策を取ろうとしていた矢先、ブライトが行動を起こしてしまったのだ。


「恐らくアウロア様はお二方の意見を聞きに来ると思います。一旦は受け入れる振りをして、最後は泣き落としでアウロア様を陥落してください」

「わかった!」

「わかったわ!」


そして彼等は、見事に母親であるアウロアを陥落させ、一年の猶予認めさせたのだった。

その猶予のおかげで、少しではあるが今まで以上に家族で過ごす時間が増えていった事は言うまでもない。


兎に角、父親であるブライトは必死だった。子供達の目から見ても。

その姿はとても新鮮で、色んな意味でイーサンとシャーロットを安心させた。

政務を執っている父親は誰よりもカッコイイ。だが、母親に対するヘタレっぷりは初めて見る姿で、とても可愛らしく大好きになった。

「それをギャップ萌えって言うんですよ」とヴィルトが教えてくれた。

いつもはそつの無い姿を崩す事が無かった父親が、母親の前ではデロデロに甘く相好が崩れまくっている。

そんな二人を嬉しそうに双子達は見守っているのだ。

今はまだ、離婚の危機であるはずなのに、これまで以上に家族が近く感じる。

「まだまだゆだんはできないけど、なんか楽しいね!」

「うん。みんなといっぱいいっしょにいられて、幸せ!」


安心できる状態ではないのに不思議なものだと思いながら、イーサンとシャーロットは家族の幸せの為に、色んな策を出しあい額をくっつけながら笑い合うのだった。


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