第3話 アウロアside

初めてブライト様と会った時、これといって何も感じませんでした。

整った顔立ちは勿論でしたが、小麦色の髪と夕焼けの様なオレンジ色の瞳が綺麗だとは思いました。でも、それだけ。

巷では美丈夫で名を馳せ、貴族令嬢からかなりの人気があると聞いていましたが、私の心には何も響きませんでしたわ。

未だ亡くした恋人を想ってなのかと言われますが、そういうわけではないのです。

愛しい人は確かに心の奥に居ます。でも、もう二度と恋はしないなど、そこまでは思っていません。

良い縁があれば結婚はしたいし子も欲しい。

ただ、今は一人でいた方が楽だと思っていたから。そんな時、カスティア国王が父の逆鱗に触れ、フロイデンは独立したのです。


彼の事は顔合わせの前に色々調査しましたわ。

王としての資格は十分にあり、愚鈍な父王より遙かに優秀。

父王は女好きで正妻の他に五人の側妃がいる。

神の采配なのか、側妃との間には女子しかおらず、全て他国や有力貴族に嫁いでいるようですね。

息子であるブライト様は女好きではないけれど、騙されやすいようです。

つまりは簡単にハニートラップに引っかかる、別の意味でのおバカさんみたいですわ。

そんなブライト様をカバーしているのが、側近のエルヴィン。

でも今回の側妃騒動はエルヴィンどころか誰にも相談しないで、独断で私に打診したのでしょう。


ホント、馬鹿ですわ・・・・


私と陛下の間には、恋愛と言う感情はありません。

結婚も子作りも全て義務。義務というより、私は仕事だと考えていますの。

夫から、側妃や愛人を囲いたいと言われた時、割り切れると思いましたから。

でも、結婚までの経緯が経緯でしたから、他に女を作る事は無いだろうと思っていました。が、やはりバカは馬鹿だったという事なのでしょう。


ここいらで、潮時かもしれないわね・・・・


一番重要な仕事である子供を作ったのですが、これは想定外でした。双子の可愛らしい兄妹を産んでしまったのです。

仕事と割り切って産んだのですが、やはり自分の子は可愛い。

彼が浮気もせず、家族愛を持って接してくれていれば、そこそこ良い家族になれるのではと思っていました。

でも、彼自ら終止符を打たれたのです。

子供達はまだ四才。離縁するには早いかもしれませんね。

私には恋人を持つ権利もあるけれど・・・子供達はどう思うのかしら・・・・

まぁ、恋人の選定にも時間がかかるでしょうし、子供達の意見も聞きながら決めていけばいいかとも思いますわ。

王妃をしている間は子供達にも自分の恋人となる人と一応、接触しなくてはならないでしょうから。

子供達にはカスティア国のもですが、フロイデン国の理念をも叩きこんでいますの。

側室を持とうとする父親は、即軽蔑対象になると思われます。

かく言う私も、恋人を作ろうとしているのだから同じかもしれませんわね。

理解してもらえるかはわからないけれど、其処は誠意をもって説明責任を果たすつもりですわ。誓約は大事だという事も。


さてさて、話をさっさと進めないとね。


「陛下、そろそろお話を詰めてもよろしいでしょうか?」

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