第982話 青龍との戦い
三橋師範は、ラッセルズにトドメを刺そうとしている青龍に駆け寄った。青龍は上条から受けた傷から血を流している。三橋師範はその傷の近くに跳び込んで、鱗がない部分にカトヤンガを叩き付けた。
すると、衝滅波が放射されて鱗のない部分から青龍の内部に入った。その直後に爆発が起きて青龍の血肉が周りに飛び散る。青龍が苦痛の叫びを上げた。それを聞いた者が心臓を鷲掴みにされるような響きが込められていた。
「仕留めたんですか?」
上条が三橋師範に確認した。
「いや、まだだ。油断するなよ」
次の瞬間、青龍の角から膨大なエネルギーを感じさせるいくつもの稲妻が飛び出した。三橋師範と上条は即座に魔力バリアを展開する。
その魔力バリアに稲妻が衝突して落雷のような轟音を響かせ、周囲に激しい火花を飛ばす。二人は連続で放たれる稲妻の攻撃をギリギリで耐えた。
ただ最後の稲妻が落ちた時、上条の魔力バリアが崩壊して身体を電流が走り抜けた。但し、身体の防御力を上げる魔装魔法を発動していたので、死なずに済んだ。
青龍の攻撃を受け切った三橋師範は、『フラッシュムーブ』を使って青龍の傍まで飛んだ。その顔は鬼のような形相になっており、どれだけぎりぎりの戦いをしているのかを感じさせる。
三橋師範は、衝滅波で広げた胴体の傷口に向かって『トーピードウ』のD粒子魚雷を投げ込んだ。D粒子魚雷は傷口から青龍の内部に潜り込み、そこで爆発する。
凄まじい爆発音が響き渡り、血煙が周辺に広がる。爆発する直前に『フラッシュムーブ』で距離を取った三橋師範は青龍の状態を確認した。
青龍の胴体がボロボロになり、ほとんど千切れかかっていた。青龍は弱々しく藻掻いていたが、しばらくすると動かなくなって光の粒となって消えた。
ローランズたちを避難させ、手当をしていた十兵衛が戻ってきた。
「十兵衛、ドロップ品を探してくれ」
「承知しました」
十兵衛がドロップ品を探し始めると、三橋師範は倒れている上条のところへ行く。上条は初級治癒魔法薬を飲んだところだった。
「大丈夫か?」
上条が地面に座ったまま頷いた。
「ちょっと痺れていますが、大丈夫そうです。それより魔法レベルが上がりましたよ」
魔装魔法の魔法レベルが『29』になったという。
「儂もだ。生活魔法の魔法レベルが『21』になった」
その時、十兵衛が何かを見付けて戻って来た。
「何を見付けたのだ?」
三橋師範が尋ねると、まず琥珀魔石<小>を十兵衛が渡した。それから小さな宝箱のようなものを渡す。それを見た上条が立ち上がった。
「それが『躬業の宝珠』なんですか?」
「開けてみよう」
三橋師範はマルチ鑑定モノクルで罠がないか調べてから開けた。中には水晶球のようなものが入っていた。
「間違いない。『躬業の宝珠』だ」
「約束通り、それは師範のものです。どんな躬業なんです?」
三橋師範はマルチ鑑定モノクルで調べてみたが、詳しい事は分からない。
「帰ってから、グリムに調べてもらおう」
三橋師範は躬業の宝珠を仕舞い、残りのドロップ品は上条のものだと言った。トドメを刺したのは三橋師範だったが、突破口を開いたのは上条だった。
「そう言えば、ラッセルズはどうなりました?」
「あっ」
三橋師範は完全に忘れていたようだ。三橋師範は上条を残してラッセルズを探しに行った。そして、地面にラッセルズが墜落した時の痕跡を発見した。
ただ痕跡だけで肝心のラッセルズの姿がない。どうやら無事に逃げたようだ。三橋師範はローランズたちのところまで戻り始めた。
その間に上条はドロップ品を探し、長柄の武器を発見した。その武器は西遊記に出て来る二郎神君の武器として有名な『
戻って来た三橋師範がマルチ鑑定モノクルで調べてみると、グリムが所有する光剣クラウ・ソラスと同じように【浮身】という機能があるようだ。使用者の意思で重量を十分の一まで軽くする事ができるらしい。
そして、青龍の角のように魔力などを稲妻に換えて放出する事ができるとマルチ鑑定モノクルが教えてくれた。これは間違いなく神話級の魔導武器だ。
躬業の宝珠は手に入れられなかった上条だったが、強力な武器を得てオーストラリア遠征が無駄ではなかったと感じた。
「師範、ラッセルズはどうしたんです?」
「逃げたようだ。見付からなかった」
「そうなんですか。一言文句を言ってやろうと思っていたんですけど」
「それが嫌で逃げたのかもしれんな」
「三人の具合はどうなんです?」
「ローランズが一番重傷だが、命に別状はないと十兵衛から報告があった」
ローランズたちから話を聞くと、ラッセルズと組んで戦っていた訳ではないようだ。中ボス部屋を出たローランズたちはラッセルズと別れて青龍を探していたらしい。
「ラッセルズは、三人の後を尾行していたのかもしれんな」
三橋師範と上条は話し合い、怪我をしているローランズたちと一緒に地上に戻る事にした。一人だけ自分では歩けない者が居たので、生活魔法の『ウィング』を使って運ぶ。
三橋師範が四層の草原まで戻った時、三橋師範は殺気のようなものを感じた。
「上条、気を付けろ」
「魔物ですか?」
「そうだと思うが、殺気みたいなものを感じた」
次の瞬間、何かが三橋師範たちの近くに撃ち込まれ、爆発すると同時に大量の煙を吐き出した。
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