第404話 探索の方針
マグニハンマーを何度か試してみて、魔力を注ぎ込む量に比例して威力が上がるのを確認した。
「さて、マグニハンマーの威力も分かったし、次は十一層のバステト神像のところで、他の情報を手に入れられないか、試してみよう」
俺は中ボス部屋に戻って迷路を通って転送ルームへ行き、そこから十層へ移動。転送ルームを出て十層の中ボス部屋へ飛ぶと、十一層へ下りて砂漠エリアへ入った。
またホバービークルで飛び始めるが、すぐにキラーオストリッチの群れと遭遇した。『アッレーッ!』という悲鳴を聞きながら、ホバービークルを飛ばしピラミッドに到着する。
ピラミッドの中に入ってガッカリした。バステト神像がなくなっていたのだ。
「どういう事だろう?」
『同じ人間に二度目はない、という事でしょう』
「独り占めをさせない、という事か」
ちょっと残念だったが、ダンジョンが独り占めさせないようにするかもしれない、というのは予想のうちだった。仕方ないので十層の中ボス部屋に戻る。
『これからどうしますか?』
「この樹海ダンジョンが開放されるのは、一ヶ月しかないんだから、今のうちにできるだけ探索しようと思っている」
『探索するとなると、三通りの方向が考えられます。最初の選択肢は、他の冒険者たちと同じで、六層から探索を始めるというものです』
「競争相手が多そうだな」
『それでは、十層から上に向かうというものと、下に向かうというものになりますね』
「リスクとリターン、どちらを優先するかだな」
下に向かえば、より一層強い魔物と遭遇するだろうからリスクが大きくなるが、そのドロップ品は高価なものになるのでリターンが大きくなる。上へ向かう場合は、その逆になる。
「よし、決めた。下に行こう」
どうせなら十五層を目指そうと思ったのだ。
『今日は、ここで一泊しましょう。疲れたのではないですか?』
「いや、それほど疲れてはいないが、まあ、ここで一泊するのが良さそうだ」
俺は影からシャドウパペットたちを全員出した。為五郎が目に留まる。
「そう言えば、為五郎用の強化パーツが難しいようなんだ」
『爪を腕に内蔵しておいて、何らかのスイッチで飛び出すようにするというものですか?』
「ああ、一度試作品が完成したんだけど、何度か試してみると壊れてしまったんだ。爪が飛び出す手と腕の間には手首の関節が有るからな。手首が自由に動くけど、爪が飛び出す仕組みというのは難しいようだ」
『諦めて、今まで通りにしたら、いいではありませんか』
「そうだな。でも、何だか悔しいな。為五郎が指の間からジャキンと爪を出すのを見たかったんだけど」
『……理解できません。十一層の砂漠エリアや十二層の草原エリアは未調査地域が、かなり有りますけど、どうしますか?』
「戦闘ウィングで上空から調査して、何か有ったら地面に下りて詳しく調査するという感じで行こう」
『バグワン殿に比べると、大雑把というかアバウトというか……』
「今回は期限が決まっているんだから、このくらいでいいんだよ」
という事で、俺は十一層へ行って上から砂漠エリアを調査した。
「あれは何だろう?」
砂漠で砂煙が上がっているのを発見。近付くと、それが全長七メートルの大トカゲだと分かった。皮が銀色と黒の斑模様になっている。初めて見る魔物だ。
『あれはモトゥルリザードです。戦車のように頑丈な大トカゲだと言われています』
「頑丈なトカゲか。そう言えば、スティールリザードと戦った事も有ったな。スティールリザードと比べるとどうなんだ?」
『頑丈さなら、モトゥルリザードが上です。ですが、こいつは動きが鈍いので、倒すのは簡単でしょう』
鈍いと言っても、普通のワニくらいのスピードは有る。どのくらい頑丈か確かめるためにセブンスコールドショットを発動して、D粒子冷却パイルをモトゥルリザードの背中に向けて放つ。
D粒子冷却パイルはモトゥルリザードの背中に命中したが、先端の数センチが食い込んだだけで、すぐに抜け落ちてしまった。
「なるほど、頑丈だ」
『クラッシュ系か、光剣クラウ・ソラスなら倒せると思います』
もしかすると神剣グラムでも倒せるかもしれないが、あの剣の実力を確かめていないので除外した。
戦闘ウィングに乗ってモトゥルリザードの上を通過した。大口を開けて威嚇しているが、飛んでいる俺を攻撃する手段はないようだ。
精密攻撃で頭を狙う事にして、モトゥルリザードの頭をロックオンして『ガイディドブリット』を発動しD粒子誘導弾を放つ。隕石が落ちるように上空から落下したD粒子誘導弾が正確にモトゥルリザードの頭に命中して空間振動波を放射する。
その空間振動波の破壊範囲は直径二十センチほどなので一撃で仕留める事はできなかった。そこで同じ箇所を狙ってもう一発『ガイディドブリット』を発動する。今度は脳を完全に破壊し、モトゥルリザードの動きを止めた。
「あいつ、まだ生きているのか?」
脳を破壊したのに、モトゥルリザードが消えないのを見て驚いた。
『……あれはダンジョンエラーかもしれません』
まさかと思いながら、動かないモトゥルリザードに近付く。死んでいるように見えるので、近くに着地して確かめる。モトゥルリザードは死んでいるようだ。
「久しぶりのダンジョンエラーか。モトゥルリザードの肉は食べられるのかな?」
『食べられるようです。しかも大変美味しいと記録に有りました』
こういう情報は魔物用鑑定ゴーグルで調べても分からないので、メティスに質問するのが一番だ。魔物用鑑定ゴーグルはメティスでも分からない魔物が出てきた時に使う事になるだろう。
まず血抜きをした。血抜き用の吊るし台を収納アームレットから出して逆さまに吊るしてから、頸動脈を切って血を抜く。血抜きが終わった後、『Dクリーン』を使って綺麗にして予備で持っている時間遅延機能付きの収納リングに入れる。
この収納リングは、ボーンドラゴンを倒した時に手に入れたものだ。容量は縦・横・高さが五メートルの空間と同じなのでモトゥルリザードの死骸も仕舞えるだろう。
『その収納リングを今まで使わなかったのは、どうしてですか?』
メティスの質問に照れたように笑う。
「婚約指輪にしようかと思っていたんだ」
『なるほど、そろそろ使うので、性能を試そうというのですね』
「からかうなよ」
収納リングを大切そうに仕舞う。それから砂漠エリアの全域を空中から調査した。結果として、大したものは発見できなかったので、一度地上に戻る事にする。
ダンジョンエラーで手に入れたモトゥルリザードの死骸の処理を、冒険者ギルドの専門家に頼もうと思ったのである。
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