第287話 鳴神ダンジョン八層
鳴神ダンジョンに到着した俺は、着替えてからダンジョンに潜る。ここで活動する冒険者も増えたようで、知らない冒険者とすれ違う。
巨木が密集している場所へ向かい、その奥にある転送ルームに入った。そこから五層へ移動すると転送ルームの外に出て、五層の中ボス部屋を通って六層へ下りる。
六層はファントムが居るアンデッドエリアなので、エルモアと為五郎を出す。為五郎に聖爪手を装着し、ファントムが出た場合の準備をする。
エルモアと為五郎が居ると俺は何もする必要がない。ほとんどのアンデッドをどちらかが倒すからだ。ただグールが出た時だけ、俺の出番となる。
グールはできるだけ遠くで倒したいので、フォートスパイダーのドロップ品である魔導弓を取り出した。この魔導弓はグールを遠い距離で倒したい時に便利なのだ。
弓のスイッチを入れるとリムからD粒子が噴き出し弦が張られた。その弦の中央にはトリガーボールがある。直径二センチほどのトリガーボールを引くと弦も一緒に引き絞る事になる。
すると、紅い光を放つ矢が現れた。俺は遠くから近付いてくるグールに狙いを定めてトリガーボールを放す。紅魔矢が飛翔しグールの頭を貫通する。グールはそのまま倒れて消えた。
「高い魔導弓を、グール専用に使うというのもどうかと思うけど、グールの臭いでモチベーションが下がるよりはいいか」
現れたグールを片っ端から魔導弓の紅魔矢で仕留めた。
『その魔導弓ですが、異常に命中率が高く感じるのですが、命中率にも補正が掛かっているのですか?』
「補正というより、ロックオン機能みたいなものが有るようだ。仕組みが分かったら、生活魔法に組み込むんだけど」
残念ながら仕組みはさっぱり分からない。
『それは残念ですね』
俺は頷いて六層の奥へと進む。七層へ下りる階段まで到着し七層へ向かう。ここは針葉樹林が広がる極寒のエリアだ。為五郎から聖爪手を外して、エルモアと一緒に影に潜らせた。
保温マントを羽織って、『ブーメランウィング』を発動し戦闘ウィングを出すと乗って飛び上がる。吹雪いてきたので、スピードは出せないが快適な状態で七層を通過した。
八層に下りるとジャングルが目の前にある。保温マントを仕舞って為五郎とエルモアを出す。為五郎に聖爪手を装着しながら面倒だなと思い始めた。
「為五郎が使っている特性付きの爪を、腕の中に仕込めると思うか?」
俺はメティスに質問した。
『そうですね……腕のいい職人に頼めば、仕込めると思います』
シャドウクレイ以外で作られた物を影に潜らせるためには、二つの方法がある。一つはシャドウパペットを作製する時に、その体に埋め込む。もう一つは影属性を付与するというものだ。
ソーサリーアイやソーサリーイヤーは前者で、エルモアの鎧は後者になる。
『為五郎に新しい身体を与えるのですか?』
「大きく損傷した場合は、パワーアップを考えようと思ったんだ」
その時、ブルーオーガと遭遇した。一匹だけのブルーオーガが戦鎚を持って駆け出した。それを迎え討つために、トリシューラ<偽>を持ったエルモアが前に出る。
エルモアに向かって振り下ろされた戦鎚が、トリシューラ<偽>と呼ばれる
エルモアとブルーオーガが凄まじい勢いで戦い始めた。パワーは互角でスピードはエルモアが上のようだ。そして、槍術を練習したエルモアはトリシューラ<偽>を巧みに使ってブルーオーガを追い込み、三つに分かれた穂先を突き立てた。
その瞬間、トリシューラ<偽>から衝撃波が撃ち出されてブルーオーガが消える。
「エルモアがブルーオーガを倒したという事は、C級冒険者並みの実力が有るという事だな。これで魔法が使えれば、相当な戦力になるんだけどな」
『魔導吸蔵合金を使えませんか?』
「エルモアは魔力バッテリーを組み込んでいるから、たぶん使えると思う。どんな魔法を使いたいんだ?」
『『クラッシュランス』と『クラッシュボール』ですね。接近戦では『クラッシュランス』、遠距離戦では『クラッシュボール』という使い方になると思います』
それを聞いた俺は考えた。遠距離戦で『クラッシュボール』というのは、どうなんだろうと思ったのだ。『クラッシュボール』の射程を考えると遠距離戦に向いているように思えるが、その飛翔速度が遅い点を考慮するとどうなんだろう、と考えてしまうのである。
「元々『クラッシュボール』は、試作魔法で本格的な魔法を創る前に<空間振動>の特性を確認するために創ったものだから、そろそろ切り札となる魔法を創るか?」
『いいですね。遠距離戦に使えるものを希望します』
「そうなると、<分散抑止>は必須だな」
その時、『センシングゾーン』を使う事で鍛えられたD粒子センサーが、何か動く物体を捉えた。その方角にパッと視線を向ける。
『どうしました?』
「気配がした。気を付けろ」
『もしかして、ヴリトラでしょうか?』
エルモアがトリシューラ<偽>を構えて尋ねた。
「まだ分からない」
そこは雑草と木が生い茂る場所だったので、敵を発見し難い。目を凝らすと草が動いている場所が有る。
「攻撃するぞ!」
俺は『クラッシュボール』を連続で発動しD粒子振動ボールをばら撒いた。その一つが命中したらしい。巨大な蛇が鎌首をもたげて、攻撃の体勢に入った。
その長大な胴体の一部に穴が開いている。俺は七重起動の『バーストショットガン』を発動した。次の瞬間、三十本の小型爆轟パイルが飛翔しヴリトラの周りで爆発、土砂を巻き上げて命中したかどうか分からない。
だが、ヴリトラが
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