第239話 雷神ダンジョン十層の中ボス部屋
新しい魔法を試そうと思っていたのだが、予想以上に威力が高く、低層の魔物では威力を試せそうにないと感じた。そこで四層から八層までは『ウィング』を使って、空中を駆け抜ける。
九層に到達。広大な草原の真ん中を大きな河が流れており、草原のあちこちに林がある。その林にシャドウベアが居るので、その林を渡り歩くようにしてシャドウベアを探す。
『ここにはブルーオーガも居ますから、気を付けてください』
「分かっている。問題ない」
最初の林でブルーオーガの集団と遭遇した。問題ないとか言ったけど、問題ありだ。ブルーオーガの集団なんて、聞いた事がない。
『撤退というのも、選択肢の一つです』
メティスのアドバイスで、なぜか落ち着いた。俺は『バーストショットガン』を試す事にする。それで数を減らせないようなら撤退だ。
ブルーオーガの集団との距離は、百メートルほどだ。九匹の集団である。五重起動の『バーストショットガン』を発動する。
三十本の小型爆轟パイルが空中に形成され、ブルーオーガの集団に向かって飛翔する。それは目では追えないほどの高速で飛び、数匹のブルーオーガに命中した。
その瞬間、小型爆轟パイルが爆発。ブルーオーガに命中しなかった小型爆轟パイルも地面や木の幹に命中して遅れて爆発する。小型爆轟パイルが命中したブルーオーガは、爆発で致命傷を負い消えた。
その爆発に巻き込まれたブルーオーガも傷を負った。九匹だったブルーオーガが、五匹になっている。
俺を指差しているブルーオーガが居た。その瞬間、オーガの咆哮が響き渡り集団がこちらに向かって駆け出した。俺はもう一度クイントショットガンを発動する。
この時、ブルーオーガが散開してから駈け出したら、俺は撤退したかもしれない。だが、ブルーオーガは密集したまま行動を続けた。
二度目の『バーストショットガン』が三十本の小型爆轟パイルを撃ち出した。ブルーオーガに命中した小型爆轟パイルは、ブルーオーガが装備している鎧を貫き内臓を串刺しにした状態で爆発した。確実に致命傷を与えられる威力である。
連続した爆発が収まった時、生き残ったブルーオーガが一匹だけになった。その一匹も傷を負っているようで、よろよろしている。
俺はクイントコールドショットを発動してトドメを刺した。
『お見事です、さすがB級冒険者ですね』
メティスの声を聞きながら、俺は爆発で穴が開いている地面を見詰めていた。『バーストショットガン』の威力が思っていた以上に凄い、と感じていたのだ。
『マジックストーン』で赤魔石<中>を回収してから、次の林を目指した。そこでシャドウベアと遭遇する。久しぶりに見るシャドウベアは、大きく見える。
体長はそれほどでもないのだが、筋肉の厚みが凄いので圧迫感がある。この魔物はパワーが凄いのだが、素早さは並みなので戦いやすい。
突進してくるシャドウベアに向かってクイントオーガプッシュを発動する。高速回転するオーガプレートをシャドウベアの顔に命中させて突進を止める。
その時にシャドウベアが後ろ足だけで立ち上がって、敵を威嚇するように咆哮する。この瞬間がチャンスだった。クイントコールドショットをシャドウベアの胸に向かって発動するのだ。
胸にD粒子冷却パイルが命中したシャドウベアは、仰向けに倒れ内臓が凍りついて息絶えた。これが最も効率的なシャドウベアの倒し方のようだ。
俺はシャドウベアを探して倒し、シャドウ種の黒魔石、最近では『影魔石』と呼ばれるようになっている魔石を十三個手に入れた。
ちなみに、この影魔石は本来の黒魔石とは少し違うようだ。黒魔石は魔導職人たちが使う工具になるのだが、影魔石を使って工具を作ると質の悪いものしか作製できなかったらしい。
シャドウクレイは合計で三百六十キロほど回収した。もう少し手に入れたいので、十層の中ボス部屋で一泊して、明日もシャドウベア狩りをする事にする。
十層は草原エリアであり、草原の奥に小山がある。その小山に洞穴があり、洞穴の奥に中ボス部屋があった。
ここで遭遇する魔物はギガボアが手強いくらいで、それ以外は大した事はなかった。
そのギガボアも目が悪いらしく、冒険者に気付かない事が多い。俺は一キロくらい先にある小山へ進み始めた。一キロなので『ウィング』を使わずに歩く。
途中でクリムゾンラビットなどと遭遇した時のために為五郎を出して護衛させる。近付いてくるクリムゾンラビットを為五郎が仕留めて魔石を拾ってくる。
「よくやった」
そう言った時、ギガボアが気付いて襲ってきた。まだ命令していないのに、為五郎がギガボアを迎え討つ。その突撃を聖爪手を装着した両手で受け止める。
ギガボアのパワーは為五郎以上なので、為五郎は押されて後ろ足で地面に深い傷を刻みながらズズッと後退する。突進の速度が落ちたのを見た俺は、ギガボアの横に駆け付けクイントコールドショットを撃ち込んだ。
ギガボアの腰に命中して後ろ足が動かなくなった。突進が止まったギガボアに、為五郎が聖爪手を叩きつけて仕留める。<斬剛>の特性が付与されている聖爪手は、魔物の頭を切り裂き致命傷を与えたのだ。
小山に到着し洞穴に入る。洞穴の奥に進むと四角い地下空間に出た。そこが中ボス部屋である。収納アームレットから野営の道具を出して休憩する。中ボス部屋は暗いので、ランタンを出して点灯。俺だけだったら、暗視ゴーグルだけで良いのだが、為五郎が居る。
コムギが影から出てきた。
『誰も居ないようですね』
「このダンジョンは、八層の火山エリアがあるから、嫌われているんだ」
『耐熱服が必要なエリアですね』
一休みした俺は、影から見張り用のタア坊を出した。食事をして寝る用意をする。為五郎は俺の傍に横たわり、タア坊は中ボス部屋の中をうろちょろしている。
シャドウベア狩りで疲れたので、眠りについた。
「デュー」
というタア坊の声で目覚める。
「もう少し寝かしてくれよ」
半分寝ぼけていた俺は、タア坊へ言った。
「デュ―――!」
タア坊が俺の腹の上によじ登ってもう一度鳴き声を上げる。その時になって警告の声だと分かって周りを見回す。
中ボス部屋の奥に変なものが見えた。三メートルほどの淡い光を放つ球体である。その球体が空中に浮いていた。
『これは中ボスが復活しようとしているのです』
メティスが断言した。俺は戦闘準備を始める。やっと鎧などを装備した俺が、黒意杖を取り出す。
「ここの中ボスは、リビングアーマーだったな?」
『そうです。武器は光剣クラウがいいと思います』
リビングアーマーがアンデッドの一種だったのを思い出す。
その時、空中に浮かぶ球体が強い光を放ちながら明滅する。色も青白い色に変わっていた。そして、フルアーマーを装備したようなリビングアーマーがポコッと生まれた。
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