第81話 オーク城(1)

 アリサたちが選抜チーム対抗戦で勝利した事を聞いて喜んだ。俺は相変わらずオークナイト狩りをしていたが、そろそろオーク城に入ろうと考えている。


 十二層のオーク城に入るには、城門の前に立つ六匹のオークナイトを倒して中に入るか、高い城壁を飛び越えて中に入るかである。


 俺はオークナイトを倒して入ることに決めた。城壁を飛び越えて入ったとしても、そこには別のオークナイトが待ち構えているだけだからだ。


 森の木の陰に隠れて門番オークナイトを監視していた俺は、『センシングゾーン』と『オートシールド』を発動させ、クイントジャベリンを連続で放った。


 二匹のオークナイトを弾き飛ばした俺は、森から飛び出してオークナイトたちの前に出る。『サンダーボウル』の射程に入った瞬間、クイントサンダーボウルを連続で放つ。


 早撃ちの練習をした成果が出て、全てのオークナイトを気絶させる事に成功した。俺は手早くオークナイトにトドメを刺す。

「ふうっ」


 一息ついてから、門を押し開ける。すぐに城への入り口があり、そこに入るとホテルのロビーのように広い空間が広がっていた。


 無骨な作りだが、壁にはタペストリーが掛けられていた。そこに織り込まれている絵は、玉座に座るオークキングの前に片膝を突くオークジェネラルの姿である。


「さて、どこから調べよう」

 俺は城の右側から調べる事にする。右側には階段があり、二階へ上る。二階は灰色の壁で囲まれた廊下とドアが並んでいた。


 用心しながら、一番手前のドアを開ける。金属鎧を脱ごうとしているオークナイトと目が合った。俺はトリプルサンダーボウルを撃ち込み、クイントブレードでトドメを刺した。


「ふうっ、最初の部屋からオークナイトが居るなんて、心臓に悪いな」

 部屋の中を調べる。テーブルや椅子が有るが粗末なものだ。特に気になる物はなし。


 次の部屋を調べたが、気になる物はなかった。次々に部屋を調べオークナイトとも戦ったが、宝物庫については何も分からない。


 この城はオークキングの城ではないようだ。規模が小さくオークナイトの部屋が数多く有る。二階を調べ終え、三階へと上る。


 三階の中央の部屋に入ると、三つの寝台が並んでいた。ここは寝室らしい。パッと見回して何も無さそうなので、廊下に出ようとした。


 その時、ドアから三匹のオークナイトが入って来た。俺は反射的にクイントサンダーボウルを放つ。一匹のオークナイトが倒れ、二匹が襲い掛かってきた。


 二本のロングソードが俺に向かって振られる。寝台に向かって跳躍した。ロングソードが背中を掠めたが、革鎧が守ってくれたようだ。


 だが、魔法を起動させる暇を与えられる事もなく、またオークナイトが襲ってきた。俺は窓に向かって跳びながら、クイントプッシュを窓へ放ち破壊する。


 破壊した窓から外に飛び出した。空中で城を見ると四階のバルコニーが目に入る。俺は『カタパルト』を起動、数百のD粒子リーフが俺を包み込みバルコニーに向かって投げ上げた。


 幅五メートルほどのバルコニーに無事に着地。下の方からオークナイトの叫び声が聞こえてくる。まずい事態になった。このまま脱出する事も考えたが、ここまで来て収穫なしというのも悔しい。


 このバルコニーへの出入り口は一つ、もうすぐオークナイトたちがここへ来るだろう。オークナイトに四階のバルコニーへ飛ぶところを見られているからだ。


 俺はバルコニーに置いてある大きなテーブルを並べて、バリケードを作った。そして、オークナイトが集まるのを待つ。


 少しするとオークナイトがバルコニーに雪崩込んできた。下の部屋では三匹だったオークナイトが十二匹に増えている。そして、バリケードの前で団子状態になって、バリケードをどかそうとした。


 俺はその瞬間を待っていた。七重起動の『ハイブレード』を起動し、横に構えた戦鉈を真横に薙ぎ払う動きに合わせてセブンスハイブレードを発動させる。


 団子状態になっているオークナイトに、セブンスハイブレードが襲い掛かり両断する。十二匹のオークナイトを真っ二つにしても、勢いが止まらないセブンスハイブレードは城の壁を切り裂いて止まった。


 轟音が響き渡り城が揺れる。俺は緑魔石<中>を拾い集め始めた。その時、壊れた壁の一部から階段が見えた。こんな所にも階段が有るんだ、と思いながら魔石の回収を終わらせ四階の廊下に入る。


 何気に見回して、おかしな事に気付いた。先程の階段への入り口がないのだ。入り口が有るはずの場所には、物置部屋みたいな小さな部屋が有るだけだった。


 じっくり調べたいけど、時間がない。あれだけの轟音を響かせたのだ。城中のオークナイトが集まるだろう。その時、床から音が響いた。ゴーッという音が響き、床板が横にずれて出入り口が開いたのだ。


 そこからオークナイトが出てきた。当然、俺と目が合う。トリプルサンダーボウルを放つ。それを胸に受けたオークナイトが後ろに倒れ、階段を転げ落ちていった。


「びっくりした……」

 俺は急いで階段を下りた。オークナイトが階段の途中で倒れている。そいつにトドメを刺してから、下へ向かう。途中にドアはなく一番下まで下りると、そこに通路があった。


 高さ五メートル、幅三メートルというかなり広い通路である。そこを進むと、大きなドアがあった。

「ここが宝物庫なのか?」

 俺はドアを開いた。中はドーム状の部屋で、十二個の黒い箱が置かれている。その中の四個は開いており、中は空だ。


 誰かが中の物を持ち出したのだろうか? 黒い箱をよく見ると金庫のようなものらしい。鍵穴があり、鍵がないと開かないのだろう。


 その鍵はどこに有るのだろう? その部屋には出入り口が二つあった。一つは俺が入って来たドア、もう一つは奥にあるドアだ。あのドアの向こうが怪しいのだが、不吉な予感がする。


 だが、確かめずに諦める事などできない。俺は危険覚悟で進む事に決めた。ドアノブに手を触れた瞬間、何かに押されて部屋の中に放り込まれた。そして、バタンとドアの閉じる音が響く。立ち上がって前方を見る。広い部屋の中央にオークジェネラルが立っていた。


 入って来た俺を見て、大きな鼻と牙が目立つ顔でオークジェネラルが笑う。身長が二百三十センチ、黒いスケイルアーマーを身に付けている。そして、手には大剣を握っていた。あんな物で斬られたら、一撃で即死だろう。


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