第49話 凌辱


 山田が違和感に気付いたのはその時だった。


 人の気配、それも10人以上いるようだ。


 ビームライトを向ける。


 精気のない顔の男女がこちらを見ている。


 よく観察しようとした山田目がけて吹き矢から放たれた矢が飛んでくる。


 体をひるがえして最初の矢は避けるものの数が多い。


 何本目かが右足太ももの付け根に当たる。


 加賀副隊長は無線を飛ばそうとするもちょうどチャンネルを変えてしまっていて本隊に連絡が取れない。


 矢には毒が塗られていたのか山田は太ももを抑えたままその場に崩れ去る。



 「いやああああああ」このみは原始的な合図に切り替えた。


 おそらく500メートル先の本隊に声は届いているだろう。


 山田が倒れたのを見ると10人の男女は思いがけず素早くこのみの方へ詰め寄ってくる。


 くるみは毒矢を気にして振り返ることができない。


 ゾンビのようにも思える人たちが近寄るとすごい異臭だ、それに着ている服が何十年も前の物にも思える。


 2人の女性が吹き矢を構えながら距離を取りこのみを釘付けにすると3人の男性が迫ってくる。その目はどこか恍惚としている。


 

 170センチあるこのみと同じくらいかそれ以下しかない3人は横一列になって手を伸ばしてくる。


 このみは男たちの腕を払いのけながら後ろへ後ろへと下がっていく。


 このみが下がるのに合わせて吹き矢の女性も近づいてくる。


 このまま距離を取ろうとしたがそれはうまくいかないようだ。


 

 このみが1人目のみぞおちに思いきり正拳突きを入れると、男の口から汚物が吐き出されそのままそこに倒れ込んだ。


 2人目の男は上段回し蹴りが見事に決まり壁まで吹っ飛び倒れる。


 そのまま3人目の男に正対しようと思った瞬間、思いもかけない強さで腕を掴まれる。身動きできなくなったのを見計らってそれまで距離を取って見ていた他の男たちもこのみに殺到する。



 このみは地面に倒され迷彩柄の制服を上から脱がされていく。


 何人もの男がその性欲を満たそうとこのみの体に群がる。


 このみは涙が止まらなかった。なんでこんなこと?


 凌辱りょうじょくが始まったころ。



 距離を取って吹き矢を構えていた女性2人が同時に倒れた。


 最上隊長と近藤が同時に殴り倒していた。


 そこから、2人はこのみに乗りかかっていた6人ほどの男たちをあっという間に排除していった。


 かろうじて下着姿になっていたこのみに凛が駆け寄り自分のジャージを羽織らせてあげる。


 瞬は山田の方に向かったが山田は意識がなく呼吸もしていない。


 最上隊長が調べたが、すでに死亡しているとのことだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る