第44話 丹波川村


 地下通路の内部は人が通れる道は一本道で長く東西に伸びている。


 ただ、通路上部などに横穴があるようで最初に遭遇した狼、特に後方からやってきた群れはそこから現れたと思われる。


 最上は手元のタブレットに報告書の原案をまとめていた。


 やみくもに動いて体力を消費することもリスクだが一か所にいてまた狼などの襲撃を受けることも危険だ。


 食料は山田のバックパックと加賀副隊長のバックパック、亜香里が持っていたバックパックにあったものから回収したものを含めると節約すれば1週間分の食料はあるようだ。水に関しては浄水器もあり現状問題なさそうだった。


 問題はこの地下通路にどのような危険があるのか分からないということだ。


 狼といい、大量の水といいチームのメンバーや依頼主クライアントへどのような危害が及ぶか分からない。


 「隊長」


 最上が考えていると瞬から声がかかった。


 「なんでしょう」


 「推測ですが、山梨県丹波川村まで続いていると思います、そしてそこに手口があると思います」


 「山梨県ですか・・・」


 山梨県丹波川村までは100キロくらいあるだろうか?


 1日12時間歩いたとして50キロ、2日歩けばたどり着くのだろうか。


 「ただ、出口が安全な場所であるとは断言できませんが」


 「そこも魔女関係の場所ですか?」


 「はい」


 最上は少し考える。


 しかし、出口があるならば向かうしかないだろう。


 「行きましょう、神木様」


 「はい、隊長・・・」


 近藤、加賀副隊長、瞬、凛、最上隊長、山田の順番で歩き出す。


 目的地が分かったところで少し前進する気力が湧いてきているようにも思える。


 6本のビームライトの閃光が通路内を照らす。


 足元は悪くない。ずっとこのままであれば1日50キロというノルマは達成できるかもしれない。


 2時間ほど歩いたところで湧き水があり、浄水器に入れてから口に入れる。


 かなり冷えていて美味しい。


 瞬は飲みながら水がこんなにも美味しいとは思えなかった。


 後ろを見ると凛も冷たい水をごくごく飲んでいる。


 目が合う。


 凛は俺が守るから、そう気持ちを込めて見つめた。


 凛は小さく頷いた。

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