(三)-9

 まさか僕の知らないところで、自分の兄弟が増えているとは思わなかった。郷里には一〇歳離れた弟がおり、アンドレアの彼女の家に預けてきた。それなのに、その弟とは別に弟がいるとは! 夢にも思わなかった。

 パオロはロザンナさんが育ててくれるとのことだった。だから僕はパオロがもっと大きくなったときに迎えに来ることを約束し、家を出た。

 僕とアンドレアとジーノさんの三人で商会に戻ってきた。

 僕たちが商会の三階の部屋に上がろうとしたとき、ジーノさんが言った。

「明日正午にバレンシア行きの定期便が来る。それに乗れ。バレンシアへ行けば、オヤジさんの足取りを追えるかもしれない」

 僕たちは「わかった、ありがとう」と短くお礼を言って、ジーノさんと別れた。


(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る