(二)-4

 夕方まで町を行き交う人たちや店の人などに父親のビアージョ・ピエッティのを知っているかどうか聞き回った。しかし知っている人は全くいなかった。中にはどのような人相かと聞かれることもあったが、ささいな手がかりも得られなかった。そもそも父が失踪したのはもう五年も前で、あまり良く覚えていない。あごひげを生やしていたことは覚えているが、そもそもあごひげを生やしている男性はこの町にも大勢いた。特に船乗りであれば、ヒゲがない人間の方が珍しいくらいだった。島で生活する人も、成人男性ならヒゲをはやしていて当たり前だった。逆に僕たちみたいに若くてヒゲがまだ伸びていないのは、むしろ子どもと同じと見なされた。

 そのようなわけで、父につながる望みは、ジーノという人と会うことだけとなった。


(続く)

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