97話 最後の禁断


 もう… ワタシ、ワルキューレがエデンの園の善悪の木に着いた時には…


 あぐらで座ったユキノはソレを味わうように食べていた…


 イブは見守るように‥ それを見て…


【 どう? 閻魔女王? おいしい? 】


 首に赤リボンつけたコウモリの魔王アスタロトも…


[ ユキノちゃん? おいしいかい? 最後の禁断の果実は? ]


 なんか…

 想像してたのと違った…

 祝福するような雰囲気だったの…


 なんかワタシも…

 オーラがみんなに流れない様に、ウチワをパタパタしながら…


『 くそユキノ おいしい? 最後の禁断の果実は? 』


 目を瞑って、うつむいたユキノ…


「メロンのような味がする」


 イブは、


【 なら美味しい 】


 肩を優しくポンとする…

 ユキノは真顔で見上げ、

「心配しないでイブ… 泣かないし…」


 立ち上がったユキノは…

「サタンから強奪したスキルが3つあった……『悪統括神サタン』と『異世界転移』と『不死』…誰か? どういうスキルか分からない?」


 アスタロトは、ユキノ前に飛び、嬉しそうに羽をパサパサしながら…


[ すごいすごい 全部まじっでヤバイのバッカじゃん! ]


 ユキノはアスタロトの全貌を見て、

「こうもり? おまえ誰だよ?」


[ オレ? オレは! ユキノちゃんのファンの魔王アスタロトだよ! あ? ユキノちゃん! 俺を配下にして! ユキノちゃん専用の帽子にさせて! ]


 スッと、イブはアスタロトの首を、後ろからスリーパーホールドして、


【なにを言っているアスタロト?おまえはワタシが処刑するんだから、1撃でね】


[ ひいい~! そんな~! ]


 ワタシは全部知ってたから、ユキノを見つめ、


『くそ女… 不死は…不死身よ…』


「それはなんとなく分かる」


『異世界転移は… 現世と地獄と天界と天国に…エデン以外なら、いつでも好きな場所にワープできるの」


「けっこういいわね… 熱いじゃん」


『最後のスキル『悪統括神サタン』はね…』


「うん」


『全ての世界のどの場所でも、今、悪事が起きていること感知できるモノよ… ためしに悪に心を委ねて瞑想してみなさい…』


「やってみる…」


 ユキノは瞑想してすぐに…


「なんじゃこりゃ? 現世…悪バッカじゃん…」


 ワタシは腕を組みながら… ウチワをパタパタしながら、笑みをユキノに向けて、


『くそ女~ これから永久的に忙しくなるぞぅ~ あんたはもうサタンの後任だしね、あんたの判断裁量サジ加減で、この世の悪を統括しないさいよ』


 意外と嫌がる素振りも見せずに、


「まあ、とりあえず、やってみるわ」


『あんた? なんか丸くなった? トゲが無くなった気がするけど… 最後の禁断の果実の効果かな?』


 ユキノは笑顔を向けて…

「かもね…」



 イブは、アスタロトをヘッドロックしながら、


【 じゃあ…閻魔女王…ワタシは帰るわ… 】


「イブ? 大丈夫? まだ死にたいとか思ってない?」


【 フフ『ロンギヌスの槍』が消滅したから、死にたくても死ねないのよ? 死ぬ術が無いもの…あなたも一緒になったわね? ワタシを死なせてくれそうな『メドゥーサ』『リバイアサン』『ベヒーモス』を閻魔女王が殺してしまったんだから… 】


 イブは、戦女神のワタシを「あっ?」っと見ながら、


【 まあ… まだ手段が1つだけありそうね… 】


 なに? ワタシに何がある? そうか…ワタシの魔法剣F(ファック)か?

 なかなかイブも分かってんじゃない…

 ワタシの本来の実力を… ニヤリ


 イブは、ワタシを見つめながら…


【 まあ… しばらくは生きてみる… 閻魔女王の新時代を見届けたいしね 】


 イブは、ヘッドロックを極めているアスタロトの頭を平手でパンっと叩き、


【おいアスタロト! バベルの塔の下まで運びなさい! 下はまだモリガンと天使達が戦争してるかもしれない! 止めに行くわよ! 西太后ババアにも… 伝えないといけない事がある…】


[ うん! イブ! ]


 パタパタっとイブの肩を、必死に掴んだアスタロトは去っていく…



 さてと…



『じゃあね…クソ女… ワタシも下に行くわ…』



 こっちを見つめたユキノは…


「じつはねワルキューレ…」


『なに?』


「最後の禁断の果実なんだけど…」


『うん…』


「それがまだ分からない… 何の禁断が解けたのか…」


『そのうち分かるんじゃないかな? じゃあ行くわ』


 またね…


 ワタシは先にエデンを出た…


 最後の禁断の果実でトゲが消え… まるくなった閻魔女王…


 ぜったい今の方が いい感じだよ



 がんばって…




 

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