89話 トールのFIN


 螺旋の通路、

 上がれば上がるほどフロアーは狭くなってる?


 ワタシはセブンスターを咥えタバコしながら、

「頂上まだかよ! いいかげんに高すぎだろ!」


 その時…


「あ? ここか? 最上階は?」


 螺旋の通路は終わり…

 東京ドームサイズのフロアーの反対側に階段が見える…

 その上に扉…


 間違いなく、アレが屋上への扉…


「やっと、来たなセント?」


「うん☆」


 SMX(クルマ)は階段へ進むと…


 な!?


 急に正面の壁崩れた!? 何か来る!?


「みんな! 頭下げろ!!」


 グシャン!! ‥‥‥バタン


 斬り飛ばされ舞い落ちたクルマの屋根…


 黒の水平の何かが、後方の壁ごとワタシのSMX(クルマ)を貫通してオープンカーにしやがった…


「今の何よ!?」


「黒い金属の三角の羽だった…トールだ…☆ 味方のはずだけど…☆」


 セントの金属の羽の言葉で、ワタシは戦うために準備をセコセコとしながら、

「きっと次の攻撃が来るよ… セント、車運転して下のフロアーに避難しておけ…」


「中年奴隷は?☆」


「目が見えない中年奴隷は、あの今の高速の一撃に対応できない… ワタシ1人で行くしかない…」


「分かった☆ 死なないでね☆」


「よっしゃできた。 ココまで来て死ねないでしょ?」


 ムチを持ってオープンカーから降りると、すぐにセントはバックして下のフロアへ向かう。


 ワタシはすでに前に立っていた、

 金の鎧に、金のアームメットヘルムを被ったトールを見つめ、


「トールだっけ? 律儀に待っててくれたんだ?」


「閻魔女王ユキノ… 会いたかった」


 女の声… アームメットヘルムの隙間から見える瞳は『渦巻き』…

 その瞳は鎖蛇サタンにそっくり…


「そうよ… ワタシが閻魔女王」


 トール握った右のガントレットの甲を見せて、


小指を上げて、

「ベルゼブブ」

次に薬指を上げて、

「メドゥーサ」

中指も、

「ミノタウロス」

人差し指、

「リバイアサン」

右の指、全て広げ、

「ドッペルゲンガー」


次は左手の小指、

「ベリアル」

薬指、

「フェンリル」

中指、

「モリガン」

人差し指、

「アーリマン」

両手全てを広げ、

「ベヒーモス」


 広げたガントレットをクロスにして胸に当てて…

 ワタシにお辞儀するように…


の… 次の敵はワタシ…」


「無駄に前振り長えし、時間が無えし… すぐに終わらせてやるよ」


「…いかにもヒールキャラらしい、いい返事、公言する…おまえを一撃で殺す…ワタシの物語はつねに一撃必殺!」


 パ――――――――――――――ン!!


 黒い▲(三角)の羽が急に開く!! 直径5メートルくらいか!?

 トールは!

「いくぞ!! 閻魔女王!!」

 ガシャンっと…


 逆方向に飛んで壁を貫通して消えた… すごい馬力だわ…


 見えないけど、おそらく、いまトールは塔の周りを飛んで最高に加速つけてる… ワタシを超速攻撃で殺すために…


 上にエデンがあるのなら、おそらく上からの攻撃は無い…


 ワタシは床に…


 ラクシュミの商店街の文房具屋で買った方位磁針コンパスを、バラして取り出した磁石を石畳に置き… 身構えて、磁石をただ見つめる…


 すぐに…

 スッとわずかに反応した…


 後ろか…

 振り返る…


 ワタシは… 精神を『S』に強力に委ねた後…

 ムチを振りかぶって…

 どうせ高さはワタシのお腹ぐらい? 方向はコッチ!!


『S』pace    !!

『M』agnitude  !!

S難度 ★★★★★ ★★★★


ブ―――――――――ズバン!――――――――グシャ!!――ン!!


 感触もだけど、崩れた石壁から見えた… 向かって来てたトールの金の胴体に大当たり…


 全自動のサーチマニアが発動する…

 ワタシの脳に情報が…

《《《《

『S』earch

『M』ania

最高の身体 トール

LV 1000

HP 7600

攻撃 8000

防御 10000

速さ 6000

魔力 7000(▲翼 加速ブースト全振り)

スキル

『飛行(超速)』『▲翼突攻撃(超)』『▲翼斬攻撃(超)』『馬鹿力 (チート)』

『スタミナ(超)』『タフ(超)』『慈愛』

ドロップアイテム

【黄金の鎧(トール専用)】【黄金のアームメットヘルム(トール専用)】


トールの個人情報

くそサタンの声が‥‥

トールをサーチマニアしたなら、お前はすでに死んでいる 3 2 1 

》》》》


 最後、変な声があったけど、

 トールは、むちゃくちゃ強い… でも、もう終わり。


 後はクルっとトールの胴体にムチ巻いて…

 遥か向こうまで伸びたムチを、


「うおおおおおおお―――!!!」


 限界のチカラでトールを一本釣り!!


グウウ―――――――――――――ン!!

 ガシャ――――――――――――


 バベルの塔の天井を切り砕きながら! トールの体は! 


 ズズ――――――――――――――――――グシャン!!


 向こうの壁に逆さまで崩れ落ちる…

 もう▲(三角)の羽も完全にひん曲がって壊れてるけど…


 まだ終わらせねえ…


 そのまま、

『S』ander !!!

『M』uchi !!!

S難度

★★★★★

★★★★

 コッチ向いて逆さまのトールの胴体に巻いた伸びたムチを!

 ズリュリュリューーーーーーー!!

 ムチはヤスリと化し!高速に動き! トールに絡まった胴体の黄金の鎧を削り切断させる!! 


 あ?


 ズルンっと切れた鎧から白い上下の服着た体が滑り落ちて出てきた…


 ムチの巻き付けが甘かったか…?


 仕方ないからムチを戻して歩み寄る…


 こっちに頭を向けて、仰向けで倒れてる…


 力なく右手を上げようとしてるけど、

 すぐ石畳に落ちる、45度以上は上げれないみたいね…


 アームメットヘルムはエグイくらい凸凹… 

 なんかの道具無いと外せないくらいに…


《おっ…こ…ぇお…し…て》


 アームメットヘルムの隙間から『渦巻き』の瞳が涙を浮かべている…

「なに? 起こして?」


「こ‥お…し…て…」


「ころして?」


「う…ん」


「やめとくわ」


「なん…で…なの? ワタシは…あなたに…ころして‥‥ほしい…の…に」


「時間がねえから」


「こおせぇぇ!!」


 無視して、

 後ろを振り返ると…

 セントの運転する、オープンカーになったSMXが来る…


 直後!! 後ろから! ワタシの首に!! 腕が回る!!


「ならあぁ!! ワタシが殺すぅぅ!!」


「うううう…」


 こいつ! 弱ったの演技!? 火事場の馬鹿力!?


 凄い締め付け… やば… ‥ いしき‥



 ポ――――ン!!



 後ろから! セントの運転するSMXが跳ねた!?



 舞うワタシとトール!!

 

 力は弱まったけど、腕を離しやがらねえ!!



『S』pace !

『M』uchi !

S難度★★★


 ヒュ―ン クルクル


 空中でトールの首にムチ巻き付けて! 更に伸ばしたのをSMXのハンドルに巻き付ける!!


「いけセント!! 躊躇するな!! 全力で飛ばせ!!」


「了解!☆」


 ズズズ――――――――――――!


 石畳にこすれて痛いってもんじゃない!!


「はやくしねぇぇ トールぅぅぅ」


 首の締め付け… 凄い…


 急に… 車は止まった…?

 

 苦しい… ヤバイィィ

「ううう…どしてぇぇ? セントクルマを止めるぅぅ」


 グニュ


 金属? アームメットヘルムが潰れた音?

 締める力が弱まった… まさかセント…? バックした…


「ハア‥ハア…」


 ワタシは立ち上がってトールを見て、

 こいつ(トール)… 

 アームメットヘルムを被ってたから車のバックに気づかなかった?


 たぶん、こいつのパワーならもっと早くワタシを絞め殺せたよね…?

 本当のところは分からない…

 こいつがどんな顔してたのかも… どんな女だったのかも…


 クルマから降りたセントは、かしこまった顔でトールを見てる…


 なんか後味は悪い…


 だけどね


『S』pear

『M』uchi 

S難度 ★★

 ワタシはムチを、鋭利な槍にした。


「トール… あんたへの供養だよ…」


 胸にぶっ刺す…


「感じたか? 閻魔女王のトドメを?」


 まだ… 生きててくれた?

 トールの右手が少し上がり動いた… そして… 落ちた。


 首を触る、死んでる。

 

 どういう意味かは知らないけど… 

 その右手はペンを握るような手の形だった。



 ワタシはムチで一直線に砕けた上を見る、


「トールとケンカしてる間に先を越されたようね… 上がやたらと騒がしい…」



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