88話 トールの物語
《こりゃトール! なぜ悪魔を殺せない!? トドメ刺さない!?
「パパ(オーディン)ごめんなさい!」
ブ―――――――――ングシャ!!
ゲンコツを喰らう… けど全然、痛く無い…
《 いっでぇっ… コブシくだけた? くっ‥間違いなく おまえのパワーはズバ抜けている そのパワーは もはや スキルなど超越しておるのに…》
晩ごはん抜きにされた…
飼ってるチワワの『マリア』は、おなかいっぱい食べてる…
「おいしい? それ?」
《 ワン! ワン! 》
「ワタシって翼も変な形だし、着ている鎧も目立つし… 学校でいつもミカエルとメタトロンにイジメられてるの…今日も椅子に画びょう置かれてた…痛くなかったけどね♪」
《 クゥ~ン 》
「でもさ、イジメの事も、これからいう事も、パパには内緒だよ… 目立ちたくないから、いつも体育は手を抜いているの…」
《 ふわ~ 》
アクビしたマリアを抱え上げて、
「ワタシには夢があるの… 見て…」
机の上にマリアを置いて、机の一番下の棚を開ける。
ノートが4冊。
「ワタシが書いている物語… 長編小説…分かるかな? これを完成させるのが夢…あ! 噛むな!」
毎日、少しずつ書く…
現実とは違う世界を…
舞台? 主人公?
現生の女 ワタシが憧れるような、なりたいような女が主人公
強くて 世の中のルールに疑問を抱き、それと戦う女
小説の名前? すこし恥ずかしいタイトルだけど
『こんなのが神様やりゃあいい』
それから、長い時が経った…
父がいつも、ワタシの下着を隠れて物色吟味してるのに我慢が出来ず…
家を出て一人暮らしを始めて、すぐに…
ある人間の噂を聞いた…
その噂を聞いて、一度会ってみたくなり…
天国へ足を運んだ…
公園の噴水の見えるベンチに、そのやせ細った眼鏡の老人は座っていた…
「あなたが… ダガーさんですか?」
「あんたは?」
「名乗るほどの者ではありません…」
「きれいなひとだ…」
「あなた… 世界最長の小説を書いていたんですよね?」
「うん、書いておったが最長とは知らなんだ、なぜ知っとる?」
「あなたの本が… 『非現実の世界で』が認められたんですよ… 世界中に…」
「うぇ! イヤだ…イヤだ…」
「どうしてですか?」
「ワシの世界が… 誰に彼にも見られてしまう…汚される…汚い目で覗かれる…」
心から『素晴らしい』と思った
「じつはワタシも別の世界を持ってるんです…」
「あんたも? 純粋無垢そうなあんたが?」
「読んでもらえませんか?」
「暇で他にすることもない…」
家に来てくれた。
書斎を見て、
「こんなに小説を書いたのか? 凄いな…?」
ワタシは最初のノートを開けて、
「コレが最初です…」
数日後…
「66冊目… トールなにがあった?」
「分かりますか? ワタシが初めて悪魔を殺した時です」
ダガーはジッとワタシの目を見つめ…
「今までは純な文だったのが、文に攻撃性が生まれだした… 気持ちは分かるよ…」
「正直… 正義が何か分からなくなった時です…」
「伝染病の身重の女を主人公が殺した……あったのか?」
「近いことが」
「そうか…」
ダガーは、数ページ先を見て、本を置き…
「こっから先は見るに耐えれない…」
ダガーは去った…
理解してくれそうな唯一の読者に否定された…
でも書き続ける…
141冊目を…
だれも読まない物語…
『こんなのが神様やりゃあいい』
ある日…
フッと眠りから目覚めた時…
書斎から音がした…
ページをめくる音…
しずかにドアを開けると…
「ククク… さいこうさいこう…」
ワタシの物語を読んでた、それは黒い鎖の蛇…
「ヘビに理解できるの?」
蛇は後ろのワタシを振りむいて、
「あ? 見つかった? ちっ」
去ろうとした、けど…
「まって… ヘビ…」
「なに?」
「どこまで読んだ?」
「あんたの本なら、すでに最新まで読んでるよ…」
「ほんとう?」
蛇はどこからか、眼鏡をつけて、シケモクをスパスパと吸いながら、
「ああ… 特にこの作品さあ…主人公がさあ…途中から141冊目から? 瞳が変わるんだよねえ… その辺とか最高だぜぇ」
そこのポイントのコメントがうれしかったから、
「そこで完全に
「変わるのが生き物だからね… リアリティあるよ」
「リアリティ…」
眼鏡を外した蛇はグルグルの『渦巻き』の瞳で見つめてきた…
あ? ワタシがイメージしてたモノだ…
その瞳で、
「あんたも
「ならヘビ… その瞳で…ワタシを
「覚醒したいなら… そこに寝て、またを開け…トール…」
「うん」
怖い・・・でも・・・ これでいい・・・
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