80話 vs 邪龍 アーリマン(1)
「おじゃまする」
と、セぺトは言いながら、SMX(クルマ)の後ろのドアを開けると、
後ろの
ショウ 「なんだ!? このデッカイハゲたオッサン!?」
リュウト 「なんでメガネ割れてるの!?」
ワタシは後ろを向いて、
「ショウ、リュウト、狭いけど、少しの間だけ我慢しろ」
車を廃墟の街アーリマンへ走らせる。
セぺトはその道中、知りうることを全て話す。
妻の不貞のせいで、我が子ではない子が、サイレンを鳴らしたとか…
カーリーという街は人間が年を取り、子を産めるとか…
老人になりやがて死ねる街とか…
ワタシは一応、セぺトをサーチマニアしてみたけど… 反応も無し。
やがて、街の幾つかの高層ビルが見え始めた…
遠くから見たら大都会だね…
この街の住民全て気が狂った?
いつものと違うサイレンの音で?
街に入ると早速… 違和感だらけ…
急に深い霧がどこからともなく発生。
なぜか道路に車が全く無い。
見える建物すべて…無残な姿…
まさに絵に描いたような廃墟の街。
ん? あれは? アイツ? まじか…? 🏢 👀✨
街の景色に、後ろのセぺトも驚いているけど…
ワタシは後ろのセぺトを振りむいて、
「2年前の異変とやらの時に、核爆発みたいなのがあったの?」
「無い…」
「それなら…2年の間に、何者かに滅ぼされちゃったみたいだね? 人影も全く見えない」
「わからない…」
ジッと街を見ているセぺトに、目的地の鉄塔が見えて来たから、
「セぺト、14時まで後どのくらい?」
「後20分」
ワタシ達の車は問題なく鉄塔の近くまで来た。
「セぺト先に降りて」
「わかった…」
セぺトが先に降りた、
その時、横のセントが、
「ユキノ様☆ アイツ☆ 絶対に頭がおかしいし怪しいよ☆」
「なぜそう言い切れるのよ?」
「アイツの言う☆ 400万の大都市カーリーなんて地獄には存在しない☆」
「なら、あのメガネ割れたデカいハゲたブサなオッサンはガイジか…?」
「それかオレタチを騙そうとしてる☆ あの見た目…正義じゃないし☆」
「たしかにね…」
「アイツを鉄塔のここに捨てて☆ この廃墟の街アーリマンを出よう☆」
考える…
A オッサンをココで捨てて、この街を出る。
B オッサンと鉄塔に向かう。
ワタシとオッサンの共通点がある。
ワタシは
オッサンはアーリマンの影の悪夢。
同じ悪夢。
オッサンの言うアーリマンの声は…
ワタシと同じなら自分自身の声のようなもの…
大体… もうワタシの中では… 答えは分かっていた。
Bを選ぶ。
「中年奴隷は必要は無い… 置いていくわ」
「え?☆ あの鉄塔に行くの!☆」
「セント…たぶんここ…はっきり言って勝負時…」
「なにが?☆」
「アーリマンは邪悪なんでしょ?」
「うん☆ 姿が確認できてない邪悪な存在☆」
「オッサンを置いて街を出ちゃダメよ~ダメダメ」
ワタシはドアを開けて、外に…
セントと話をしてたせいか、不安でセぺトは唇を噛んで下を向いている。
ワタシはセブンスターに火を付けて、
「ふ~~」
強く吸って吹かした、そのタバコを…
「タバコ… 切れてるんでしょ? 吸いなよ?」
セぺトに渡す。
受け取ったセぺトは、タバコをつまんだまま…
「嘘をついていると思ってるよな…でも…たしかにあるんだ…カーリーは…」
「受け取ったら、吸えよ」
「え?」
「アンタの
「閻魔女王…?」
「ゆっくり吸っていいからね…」
セぺトはす~っと吸った後に…
眼鏡を外す…
近眼か? 顔を近づけてきた…
「あんたなら… アーリマンを倒せるのかも…」
ワタシはセぺトに、
「あと時間は?」
「今は13時45分…あと15分」
「まだまだ時間はある」
とワタシが言うと、セぺトは割れた眼鏡をかけ直して、
「急がないと」
と先に歩む。
うん?
子供が鉄塔のどこから走ってくる?
セぺトが!
「ガイラン!!」
「パパ!」
パパ? 子は可哀そうだけど… よく似てるし完全に親子じゃん? セぺトは屈んで抱き合って、
「ガイラン… よかった生きていて…」
「うん! でもねえ… でもねえ…」
「どうした?」
「あのおねえちゃんを殺さないと… 僕が死んじゃうんだ…」
ワタシを見るセぺト…
「閻魔女王を…?」
知らぬ間に… ケルベロス達の乗っているSMXは霧に消えている…
ガイランという子供は…
「パパはこの土地では… 誰にも負けないらしいよ… 念じてみて… あの女の首をポキっと…」
ガイランの顔は父セぺトと本当によく似ている…
うすうす気づいていたけど… ワタシには答えが分かった…
アーリマンの正体…
それは、もう1つのセぺトの人格…
セぺトは想像を絶する強大な魔力とイメージを持っている…
地獄には本来、存在しない廃墟の街アーリマンの全てが…
もう1つの彼の心の邪悪の形…
本来のセぺトは、
あの現世と同じく、年を取る街カーリー… それを創り守るモノがセぺト…
おそらく…
セぺトとアーリマンは、過去に幾度も同じ様なことを…
同じ様な時間を繰り返している…
セぺトはコッチを困った顔で見て、
「だめだ。14時に、サイレンを鳴らさなきゃ…カーリーの街を元に戻すために…」
息子は、
「サイレン鳴らさないで! ころして!! ころしてえ!! あのおんなころして!!」
またどこからともなく女が現れ、
「サイレンを! ならしちゃダメ!! あの女をころして! サイレン鳴らしたらワタシとガイランは死んでしまうわ!」
セぺトは両手を頭につけて、
「ダメだダメなんだ… 元に戻さなきゃ…」
直後、女を見て、
「おまえも死ぬんだな? サイレン鳴らしたら?」
「そうよ…死んでしまう…ワタシはあなたを心から愛しています…だからサイレンを鳴らさないで!!」
「裏切ったお前が死んで…? 街が元に戻る…? なら…サイレン鳴らそう…」
「ワタシは! あなたを裏切ってない!」
「うるせえブス!! 最初から全然好みじゃなかったしよ!! お前の友達の方が好きだったんだ!! ブスが!! 美顔? バカかお前!? 美顔でブスが直るか!? ブスのクセに性格もクソで! 違う男の子を孕んで俺に世話させやがったクソ女なクセに!! ふざけんなブスが!!」
「あなた…別人みたい…どうしたの…?」
セぺトは信じらないことに、
「このクソみたいなお前に似た! ブサイクなガキ!!」
「うげ!!」
我が子を蹴飛ばしやがった…
「これも死んでいいだろう? 俺にはカーリーの街の方が信じれる…俺が守り神で全てをコントロールできるんだからな…人間は仮面を被り裏切りぃぃ…醜くぅぅ…自分勝手でぇぇ…正統姿勢を貫きぃぃ…底の見えない欲望はぁぁ安全ならばぁぁあどこまでも酷い事も考えぇぇ欲すぅぅ…ククク…だからカーリーから廃墟の街への輪廻が楽しいぃィィイシュラビィィ…バロウムカァァ…グラマギィィィ…サイレン…サイレン…」
ワタシなんか入ってる、セぺト…いえ…アーリマンの肩をポンっと叩く、
「おまえ、その割れた眼鏡で世界を見てんじゃねえよ…」
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