59話 戦女神ワルキューレの荷物


 ワルキューレの、赤のフェアレディZがあった公道まで、赤鬼セントの運転で走らせる。

 たしか、この岩壁の緩やかなカーブを曲がれば…?


 あったわ。


 SMX(クルマ)を止めると…

 牽引してた後ろの荷台から、まだ自然治癒(弱)しきれてない… まだ髪の毛も無い全身が黒と赤色の大火傷の状態のワルキューレが降りて… フェアレディZへゾンビの様に歩みながら、黒の胸当ての中から車のキーを出して、開錠のボタンを押した。

 ワルキューレはハザードが点灯したのを見て、

「あううぅっ… キー持って行ってて良かったわ~~…ああ痛いぃぃ…今くらいがぁぁ… たぶん~1番痛い~かゆい~~ワタシのぅぅフェアレディにぃぃ入るぅぅ」


 ワルキューレが運転席のドアを開けた!


 その瞬間!!


 

 ド――――――――――-ン!!!  🔥     👀💦




 フェアレディZが爆発炎上!?


 敵に爆弾を仕掛けられてた!?


 フェアレディZを包む炎の中から!!

 火だるまになったワルキューレが両手を上げて歩いている!!


 生きてる!?


 ワタシは慌てて、三体鬼ケルベロスに!


「助けに行くよ!! まじ死ぬアレ!!」


赤鬼セント「ラジャ!☆」

青鬼ショウ「うん」

白鬼リュウト「ういっす」


 皆、SMXから出て、

 それぞれの色のタキシードをワルキューレに叩きつけ…

 結構、時間かかったけど…

 なんとか鎮火できた…


 だけど…

 もう…


 ワルキューレ… 目も口も鼻も耳も指も性別も分からない…


「ゼ…ン‥‥ト‥‥グゥゥ‥‥…ウエェン…」


 自然治癒(弱)を持ってても…

 もうこれでは… とても無理…

 惜しい仲間を失ったわ…

 すごく臭かったけど…

 ワタシはワルキューレを見つめながら、


「セント… 最期はついていてやれ…」


 セントはかしこまった表情で、

「うん…☆」


 その時…


 後ろから…


  《 大丈夫だ 》


 の声が、

 振り向くと、

 灰色のフードを深く被った誰かが立っていた。

 ワタシはムチを構え、


「敵?」


「仲間…」


「衣装からして天界からの助っ人には見えないんだけど…」


「妖魔ネビロス…」


「修羅地獄の四天王の1人? …なんで味方なの?」


「そんなことよりも急がないと、ワルキューレが本当に死ぬぞ」


 ワタシとケルベロスは、ネビロスの歩む道を開ける。

 ネビロスはワルキューレの前で屈み、

「これは酷いな…」

 おへその辺りを右手で触れたネビロスは…


細胞復元回復フルボッキ…」

 

 すると!!

 みるみるワルキューレの火傷がムクムクっと元の肌に復元!

 全て焼け落ちていた金髪ベリーショートも復元される!

 焼け消えていた天使の翼も復元される!


 すごい!!


 すぐに、ワルキューレはムクっと背中を上げて…


「あ? 治った?」


 すぐに立ち上がり!

 燃えるフェアレディZを見て、

「ワタシのフェアレディZ!!」


 完全回復してから、ワルキューレの体から死臭が漂い始めてたから、

 ワタシとネビロスとケルベロスは離れた距離に避難した。

 魔法剣 F(ファック)の水魔法で、火を消そうとしているワルキューレを見つめながら、


「ネビロス… すごいスキルね…もしかして、それでワタシも回復させたの?」


「ああ… 間に合って良かった…」


 ワタシはネビロスを見て、

「なら命の恩人ね…ありがとう」


「閻魔女王? ここに戻って来れたという事は…サタンを倒したのか?」


「アレはサタンじゃなかった。 サタンから大魔王に委任された堕天使ベリアルが、大魔王サタンを名乗っていた」


「そうか、これで修羅地獄四天王の残りは、私とモリガンの2人」


「パズスは?」


「イブが殺した」


「そう、ネビロス… あなたのスキル凄いから仲間にならない?」


「無理だ。 私はイブに封呪された… この修羅地獄から出れないようにな…」


「残念… では、またいつか会いましょう…」


 後ろを振りむいた時、

 ネビロスが、


「このままいけば、モリガン率いる大軍が待ち構えている… 戻ってワタシのテリトリーからバベルの塔を目指すがよい…」


 背中を向けたまま…

「ありがとうネビロス」


「閻魔女王… なぜ、私がお前達を助けるのか気にならないのか?」


「あ? そうだそうだ」


「名前は出せないが、イブの周りに、お前を支援する私のあるじが1体いる…言えるのはそれだけ…」


「アンタの主に会ったら礼を言うね」


 その時、

 諦めたワルキューレがこっち向いて、


「ネビロス! 車貸して! 返すから!」


 ワタシは呆れた顔でワルキューレを見て、

「お前に車は、もう勿体ないわ」


 親指で、SMXの牽引する荷台を指して、

「お前は、アレでいいじゃん?」


「やだ! ワタシ戦女神だよ! 荷台なんてまるで家畜じゃん!!」


 セントが、

「あのパジェロは?☆」

 ベリアルの白のパジェロを指差した。


「さすが! セントくん! でもパジェロのキーが無い…」


 セントは赤いタキシードの胸ポケットからキーをワルキューレに

 ポ――――ンと投げて、ワルキューレは右手でキャッチ。


「持ってきといた☆」


 ワルキューレは涙目笑顔でセントを見つめ、

「いつも… ありがとう…セントくん…」


 パジェロにパタパタと飛んで行き…

 運転席のドアを…


「ふうぅぅ…まさか…これも爆発って…無いわよねぇぇ」

 ガシャ… ソ~~

「ほっ…」


 運転席に入ったワルキューレは、すぐにパジェロを方向転換し

 窓を開けて、ワタシを見て、


「クソ女、先いってるわ」


  ブ―――――


 ワタシはケルベロスを見て、

 

「さあ、ワタシ達も行くよ」


「うん☆」

「うん」

「ういっす」


 荷台を繋げたSMXに乗り込む…



  ~~~~~~~~~~~~~~~~


 パジェロの中


 小柄なワルキューレは運転しながら、椅子を調整している。


「ちっ、もっと前に出ないの? ちっちっ、ギリ届くけどぉぉ!」


 右手首を見つめ…

「ベリアルのせいで、ミサンガが燃え消えちゃった… またどっかで緑の毛糸を手に入れなきゃ……」


 サイドケースの中のKing & Prince高橋●斗のウチワを見て、

「コレはラッキーでした。さっきのトコに落ちてた♪敵に取られなくて良かった♪」


 次に、

 黒い胸当ての中をまさぐり…

 小さなクマのぬいぐるみ(話し相手)を取り出し、


「うわ! 茶から黒になってる!? でも~ 愛情はぁぁ一緒です」


 ぬいぐるみを、

「セントくんは助手席~~」

 助手席に前向きに置いた後に、

 また、黒の胸当ての中をまさぐり、ピンクの●ーターを取り出し、

 オンにすると、うい~~~と作動した。

「ラッキ――♪ ぶじぶじ~♪」


 また、胸当ての中をまさぐり、

 アンドロメダのラブホの自販機で買った道具ビッグサイズを取り出し、


「うわ…溶けて? 形がぐちゃってるよ…」


 オンにすると… うい~~~~と作動した。

 その形と動きを、まじまじと見つめながら…


「ふ~ん… なるほどねぇぇ… ちょっとだけぇ…気になるかな…」



 

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