47話 ナイトメアの正体(2)


 ドくされセントが!!


 くっそっ…


 もう少しでナイトメアの正体が分かったのに~

 もう苦しまずに済んだのに~~

 キラキラな苦笑いを向けるセントを睨みつける…


「ごめん☆」


 ワタシは死神のキセルを胸の隙間から取り出してシートポケットに入れ、

「もう一回行くわ… 死神のキセルが犯人か確かめなきゃ…」


「大丈夫?☆ むちゃくちゃ顔色悪い…真っ青…☆ 小岩のジャンキーみたい☆」


 ワタシは大きくため息を吹いた後に、セントを見て、

「今度は2分後に起こして…」


「分かった☆」


 目を瞑る…

 体の緊張を解くと…

 もう眠りかけになる…

 少し重たい瞼を うっすら開いた…

 見える… ワタシの重ねた両手の左の親指…

 目を瞑る…


 え?


 あ?


 癖…? あったわ…

 


 子供の頃…

 爪噛むの… なかなか止められなくて…

 とうさんはその癖が大嫌いで、人が変わったように怒る

 怒る…とうさんが大嫌いだった



 青春を謳歌おうかしろ?



 そっか… 


 小学卒業の寄せ書きで、ませた智佐が難しい字を書いてたじゃん





 『みんな青春を謳歌しろ! 夢は海外にいくスチュワーデス  智佐』

 












「ユッキー … 智佐… リスカで自殺したらしいよ?」


「エリカ、マジ?」


「ユッキーが追い込み過ぎたからじゃない? 親友だったのに?」


「ワタシなりの愛情表現だっての… 何も死ぬこと無いだろ…」



 後日…


 前の机の上の花を見ながら…


「メンタル弱すぎだろ… バカ…」


 ワタシは高校を辞めた…









 障害者用のトイレ…

 座る便座の上で、今までの事を思い出し、答えを導いた…


 今まで開かなかったスライドドアがス―――っと開く…

 向こうには誰も見えないけど…

 ワタシはそっちを向き、

「魔王級の夜魔ナイトメアなんて、存在していない…」


 低い… 心の声が聞こえる…



 《 青春を謳歌しろ 》



 黒いビニール袋を被った上下迷彩服が横から現れ、

 コッチを向く… 手にはいつものオノ…


「オーディンが… ワタシを庇った時に仕掛けたね?」



 《 ワタシは ナイトメア 》



「おまえはドッペルゲンガー」



 《 ちがう 》



「サーチマニア思い出した… 黒い鎖蛇のスキルの中に『ドッペルゲンガー』てのがあったんだよ…」


 《 ククククク ベルゼブブめ よけいなスキルを強奪されたわね 》


「その黒いビニール袋を剥がせば、ワタシの顔があって見たら死ぬんでしょ?」


 《 はずしてごらんなさい 》


 ドッペルゲンガーは口に左手の親指を強く当てる… ガシャガシャと音がする。


「うせろ、ドッペルゲンガー」


 《 呪ったモノが死ぬか解除しないと ワタシはずっとあなたのユメの中に居続けるのよ 》


「まじ? …超最悪じゃん」


 《 ながく生きた者もいない 眠りが深くなれば ワタシは あなたの記憶も思考も操作できるんだから 》




 アッッチ~~~!!



 《 また会いましょう ワタシはワタシが殺す 》






 横にセントが、


「どうだった?☆ 今回はうなされてなかった☆」


 ワタシは焼かれた小指をさすりながら、


「ナイトメアの正体が分かった」


「だれ?☆」


「ワタシ…」


「え?☆」


「ナイトメアなんて夜魔は存在しない、そう呼ばれているモノは… イブのドレスの黒い鎖蛇の呪い『ドッペルゲンガー』よ」


「ドッペルゲンガー?☆ 見たら死ぬと言われている?☆ じゃあユキノ様は‥‥呪われた?☆」


「まちがいない…」


 ワタシはセントを見て、

「ありがとうセント…死ぬトコだった…頭殴ってごめん」


 ほっぺにキスした

「あっ☆ ユキノ様☆」


 赤くなったセントの顔を見て、

「ごめんBL(ホモ)だったよね」


「うん…☆ でも…☆」


「さてと…」

 立ち上がる…


「ユキノ様?☆ どこへ?☆」


 セントを向き、立てたヒトサシ指を口に持って来る…

 歩む…

 少し前の席で、眠っているスチュワーデスへ…

 胸に小さなネームがある…


 『 CHISA 』


 やさしくぎゅっと抱きしめる。

 震えている…智佐に、


「スチュワーデスになれたんだ? がんばったね… 智佐のスマイルは最高だった」


「うん…」


「智佐…本当にごめん… ワタシの方がバカだったんだ…」


「うん…うん…ごめん…ワタシ乗客全員の飲み物にクスリを…やらないと殺すって…黒い蛇に言われて…ナイトメアがワタシを殺しにくるって…」


「智佐…心配すんな…ワタシがお前の分の悪夢ナイトメアを背負ってあげるから…」


 手を離すと…

 智佐は顔を上げた…


「ユキノ…」


 その時…


 智佐の瞳が……

 回転し… グルグルの渦巻きになる

 見覚えのある瞳…

 智佐の口角が上がり…


《 青春を謳歌しろぅぅぅ… ユキノちゃぁぁん 》


「鎖蛇… 智佐になにをした?」


《 コイツ? 心配すんな♪ ドリフター●のアイツの様に何もする価値もねえよ… まあ…おまえは昔イジめてたらしいけどね? 親友だったんだろう? この俺より悪魔じゃん? オレは意味のねえ殺傷しねえし 》


「イジメたつもりなかったし」


《 なら オレとお前は一緒だぁぁ グス…ある意味被害者だぁぁ 》


「くっそうぜええなぁ‥おまえ…」


《 ククク… いい眼差しだ…『ジェロニモ』のようだ、たまんねえ…》


「殺す…」


《 殺す? 長い長い生涯でイブ以外に初めて言われちった… 》


 智佐の手がキルユーし… コッチにグルグルの瞳を向け、凄い睨みで…


《 ガチでいく… 》


 ワタシは中指を立て、


「おまえは…ワタシがぶっ殺す…」



《 そのまえに~ ドッペルゲンガーで死なないでね~♪ バ~イ♪ 》



 ガクっと


 智佐はうなだれた。



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