30話 終着駅(2)


 オーディンはワタシ達を見て!


「この鎖はワシが相手する! ユキノ! お前たちは先へ行け!」


「オジサン! 分かった!」


 ワタシは中年奴隷の背中に乗って足を組み、階段の槍を持った敵兵をムチで蹴散らしながら、三体鬼ケルベロスと階段を下りる!


駅の外、目の前には一面の鎧兜の敵兵!

赤鬼セント 「多すぎる!」

青鬼ショウ 「俺達、武器ないし」

白鬼リュウト 「ユキノ様! どうする!?」


 敵兵達は槍を突き出し迫ってくる!

「閻魔女王を殺せー!」


 面倒だからアレを使う!


 精神を『S』に強力に委ねた後…

 ワタシはムチを振りかぶって!


『S』pace     !!

『M』agnitude  !!

S難度 ★★★★★★★★★



 ブ―――――――――――――――――――ン


 遥か向こうまで伸びたムチを!


「うおおおおおおおーーーー!!!」


 限界のチカラで振る!!


 グウウーーーーーーーーーーーーーーーン


 超長距離に伸びたムチの半円の剛撃!!

 うじゃうじゃいた敵兵達は黒板消しの消されるように前から消えた。


 向こうに、2つの洞窟が見える!


 左側の洞窟の上には『安全経路』と書かれている!


「あそこか! ケルベロス! 急げ!」


セント「はい☆」

ショウ「うん」

リュウト「ういっす」


 ヒュヒュヒュヒュヒューーーー


 上空のメロン気球隊からミサイルランチャー!? あぶない!


 ドドドドドーーーーーン


 洞窟の手前にミサイルが落ち! 黒煙が洞窟の前に立ち込める!


「これじゃ!? とても近づけない!」


 横に、金髪ベリーショートの黒の胸当てのチビ女(ワルキューレ)が来て、

「クソ女、上のメロン気球はワタシがなんとかする、急げ」


「分かったわ…ん」

 え? このチビ女…ワキガ? ……まさか股間? 凄く臭い変な匂いがする… 気持ち悪い…ううっ…


 とても気分が悪くなった…


 チビ女は肩の後ろの翼をパタパタして、

 上空のメロン気球隊へ向かった…


 くさ


 メロン気球隊はチビ激ワキガ女へ、ミサイルランチャーを放ちだす。

 ココはオジサン(オーディン)とワキガ(ワルキューレ)に任せた!


 先へ行く!


 目の前に2つの洞窟、当然! 左の安全経路!


 S級の魔物が2体いる右の迷宮ラビリンスになんて絶対いきません!



 洞窟に入った!


 石造りの壁には火の玉の入った灯篭があり、中は結構明るい。

 それに涼しい…


「ケルベロス! もっと速く走れ!」


 振り返り、遠のいていく後ろの出入り口の光を見つめながら、

「ワタシを鎖蛇から庇ってくれたオジサン生きていてね…」

 とか言ってたら!


 ガガガッガガガーー


 急に石壁が! 後方に落ちたー!


 ワタシは、

 浮いて進む、四つん這い中年奴隷の首輪のリードをグイっと引いて停止させ、

「え? どゆこと?」


「まさか☆」


 洞窟の奥から 低い声が聞こえる…


《 久しぶりに‥…生きた人間が喰える‥‥ 》


 セントはワタシにキラキラ苦笑いで、

「ここラビリンス☆ 今の声はたぶんミノタウロス☆」


「なんで? 表には安全経路と書かれていたわ?」


「たぶん、標識を入れ替えられていた、たぶんババアかメロンがした☆」


 ワタシは前を見て、

「しかたない…中年奴隷をなぶってSパワーを回復して、ラビリンスを突破する」


「はい☆」

「うん」

「ういっす」


 ワタシはムチを中年奴隷の尻(けつ)に、


 パーーーーーン!


「ぼい! (^ω^)」


 じゅじゅん↑↑





    -- 終着駅 --


 カーーーーン

 カン!!!

 カカカン!


 駅の外で、オーディンと鎖蛇の、グングニルの槍と鎖の頭をぶつけ合う音がする。


 駅のホームでメロンレディを介抱してた剣道面ババア…

「うううっ…は? どうして気を失った? (*´Д`)」

 目覚めたメロンレディに、

「ワルキューレの『死臭』じゃ! 風下に立って一気に吸いすぎたんじゃ! 顏が無いワタシは大丈夫だけどね!」


 立ち上がったメロンレディは上空のメロン気球隊を見て、

「うわ! だいぶ減ってる!? ( ゜Д゜)」

 ババアはしぼみ落ちる気球を見上げ、

「相手は飛行を持つワルキューレ、気球では分が悪い……それよりも」


 ババアは駅のホームから、下で戦うオーデインと鎖蛇を見つめ、

「最強オーデインと五分で戦っておる黒い鎖…いったい何者じゃ?」

 メロンレディはババアの隣に立ち、

「あれはイブの武具の鎖じゃないか~ 同志じゃ~ 鎖がんば! (´▽`)」


 ババアはオーディンと戦いながらも笑っている黒い鎖蛇の顏を見て、

「ちっ、なんか嫌な感じだけどね…」




   -- 終着駅外の荒野 --


 鎖蛇!


 オーデインに突攻撃連射!!


「おりゅあ~~たたたたた!たたたたた!たたたたたた!」


「ふん!ふん!ふん!ふん!! はあ…はぁ…」


 オーデインに疲労の色が見え始めた…


「くっ… 攻撃防御補助魔法を使ってもダメとは… このままでは…」


「どうだ高橋名人直伝の16連射の味は!? どうした!? ジジイ!! 天界最強も大したことネエな~~♪」


 オーディンはササっと下がり、地にグングニルの槍を刺し!


「いでよ!! 飛竜王バハムート!!」



 ドガガーーーー!!

 天からの大きな落雷と共に!

 高さ20メートル! でっかい飛竜が現れる!


 オーデインは片膝をつき、バハムートの背を見つめ、

「ハァハァ… これを呼べば飛竜の統制が無くなるが…しかたあるまい…体力回復の時間稼ぎになれれば…」


 バハムートは振りかぶって!

 ファイアブレス(超)を鎖蛇に放とうとしたが!


 ヒュイイン~~クルクルクルクルクル


「ガオ!? ガッ!? ンン…」


 ギュウっと巨体も動けない様に、口も閉じる様に鎖に巻かれた。


 バハムートの顏の前で笑みを浮かべ、

「デカけりゃいいってもんじゃないんです♪ 実用性なんです♪」


 ビュン!


 鎖蛇の頭が、バハムートの眉間を貫通した…


 バハムートは力なく崩れ落ちる…


 死骸はフワっと消えた…



 その時…


 少し離れた所で、強烈なつむじ風が起き、晴れると…


 鎖蛇と繋がった黒の鎖のドレス、

 右手に水色のティファニーのバッグを持った、

 剃髪の美しすぎる女イブがいた。

 イブはチラッとオーディンを見た後に、鎖蛇を見ると、イラついた顔で、

「ワタシにまとわりつく蛇… いつまで時間をかけている…?」


 鎖蛇は0点を取って怒られる子供のように…

「ごっごめん…」


 右手のバッグを、自らの顔のところまで持ち上げ、

「アダムはお怒りだ!!」


 近くのちょうどいい岩に、股間の間にバッグを置き、腕を組み座り、

「ウスノロが! さっさと終わらせろ!」


「イエッサー!」



「勝機…」




 オーディンは天にグングニルの槍を掲げ!


「落ちよ!!  怒りのいかづちよ!!!」



 ピカ



 ドーーーーン!!!!


 強烈な雷が鎖蛇に当たる!!


 電流は鎖を辿りイブにたどり着く!!


「ぎょえーーー!!!!」


 プスプスと… 煙が体中から出ているイブは…

 黒こげ…

 鎖蛇は涙目で、

「イブ!? 大丈夫!?」


 ビューーーンとイブに近づく


「あっ…あっ…だ‥‥むぇぇぇ‥‥」

 黒こげの指がピクピクと動いている…

「非常に深刻な状態だ… でも不老不死だから大丈夫かな? イブには自然治癒(強)もあるし」


 鎖蛇はオーデインを見ると、


「な!?」


 グングニルの槍を掲げ!

「不老不死でも、もう一発喰らえば灰になるかもな…フフ」

 追撃の雷を呼ぼうとしていた!


「やめて! おじい様! イブが本当に死んじゃう!! 死んだら何が起こるか知ってるだろ!!」


「もちろん!! イブが死ねば!! 鎖蛇!! お前の力は急激に弱まる!! イブの後でゆっくりと料理してやるわ!!」


「そんな!! あやまるから! もう悪いことしませんから! イブだけは!!」


 オーデインは鎖蛇を無視して!


「落ちよ!!  怒りのっ



 ビッ‥‥ン



 高速の何かが、

 オーディンを横切るように動いた。

  オーディンの姿はない。


  上で戦況を見ていたワルキューレ… 目をかっ開き…


「そんなバカな… オーディン様が勝てていたのに… イブとあの蛇に勝てていたのに…」


 突然現れた… 灰色の狼を愕然と見つめ、

「なんでアレがいるのよ…」

 思い出すように、

「アレをデビルマウンテンに封じるのに…ど れほど天界の戦力が削られたと思っているの…?」

 絶望感からか、フッと横に倒れそうになる。




 口をモグモグと無表情に動かす、大きな灰色の狼フェンリル。

 右の前足は義足がハメられている


 意識が戻った黒こげのイブはフラフラと立ち上がってフェンリルを見て、

「さすが迷彩魔獣フェンリル… 助かったわ… オーデインは美味いか?」

 モグモグしながら無表情にイブを見返し、

「イブ…オレヲダシテクレタ……ケルベロス…オレ二コロサセロ」


 フェンリルは口から「ペッ」と吐き出す。


『ロンギヌスの槍 (後2撃で破損使用不可)』

『エデンの鍵』

『ブルセラグッズ』


 イブはドロップアイテムに近づき、『ロンギヌスの槍』を右手に持った。


「フフ…近々…『創造主』に合うのが楽しみだわ」


 さらに、『エデンの鍵』も左手で取り、鎖蛇の口に、

「まとわりつく蛇… これはオヌシが持ってた方が都合が良い」


 黒い蛇は口の中に入れ、

「ゴックン…へへへ♪ イブとオレが欲しかったモノ♪」


「グググ…カ…ラダ…ガ‥‥イタイ…」

 急にフェンリルが苦しみだす…


 イブは嬉しそうに、倒れたフェンリルに歩み、腹を優しくさすりながら、

「良かったねフェンリル… レベル1000のオーデインを殺したから、格段に進化レベルアップしてるのよ…進化の痛み…フフ」


 右手でロンギヌスの槍を持ちながら、フェンリルを触るイブは、自分のオデコに左手の人差し指を当てて、

「ワタシのサーチマニアで見てあげる」


《《《《

『S』earch

『M』ania

魔獣フェンリルはオーデインを殺したのでレベルアップしました

LV 300➡450

HP 1500➡2500

攻撃 1500➡3000

防御 300➡400

速さ 3000➡3800

魔力 0

スキル

『嗅覚探知』『視力5』『死闘』『迷彩 (チート)』

new➡『グングニルの尻尾槍 (チート)』


フェンリルの個人情報

デビルマウンテンに封じられていた突出したスピードを持つ魔獣

封じ込めるのに天界の凄腕18名とケルベロスが駆り出された

大きいワンボックスカー程の体

鋭利な大きな牙に強靭な顎の力、固く鋭い爪を持つ

悪食で物でも何でも食べる

昔、敗れたケルベロスに深い執着心を抱いている

》》》》


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