28話 ジャック死刑


 ん?

 ここは?


 異様に明るい照明の部屋…

 壁のフックに… 縄、多種のナイフ、ノコギリ、電動ドリル、折り畳みの長テーブルも壁に掛かっている。

 なるほどね… さすが地獄… さて、どうする?

 とにかく冷静に…

 手は後ろに、縄でギッチギッチに縛れている…

 起き上がり、板張りの壁にドン!と前蹴りをする。

 納屋とかでは無く地下室…?


 部屋にワタシの武器のムチは見当たらない。


 その時、天井が開き…

 地下へと繋がる階段から3人の男が下りてくる。


 3人かよ… しかもこいつら、おそらく猟奇犯…


 ワタシを拉致った青白い顔の男がワタシに一礼して、

「200万円はありがたく頂いとく…生前、俺は切り裂きジャックと呼ばれていた、知ってるか?」


「ロンドンで女を何人も殺した殺人鬼か」


 切り裂きジャックは一緒に下りてきた、後ろにいる背のかなり低い醜い顏の男2人を親指で指し、

「この2人はラモン兄弟、コロンビアで俺より多い数の人間を殺している、俺同様に現生では捕まってないがな。 無間地獄から共に逃亡して、今は俺と、この家で暮らしている」


 ラモン兄弟は待ちきれないようにハア~ハア~と息が荒い。


 ワタシは上の階を見て、

「この家の住人は?」


 ラモン兄弟は嬉しそうに、

「家の3人ころして…やまおくすてた」

「魔獣のエサになってた…ハアハア」

「おまえも…ドリルで穴開けまくって…100開ける? ききき」

「あにき…おれ…イトノコギリ… ききき」


 ラモン兄弟はきったない歯を見せつける様に笑う。


 切り裂きジャックは2人に言い聞かすように、

「ユキノは閻魔女王とかいう大物らしい、コメカミにドリル穴くらいならかまわんが、なるべく頭部は傷つけるな。 ユキノの頭部を『イブ』に持って行けば大金を貰えるかもしれん」


 切り裂きジャックは壁のナイフを吟味しながら鼻歌を歌う、

「オ~レはジャック~♬ 地獄に堕ちても、この衝動を止められない~♪」


 首をゆっくりと振りながらラモン兄弟も長テーブルをセットしながら、

「俺達兄弟も~♪ 地獄に堕ちても、この衝動を止められない~♪」


 くそみたいな歌…



 ワタシの脳裏に、

 カサンドラの街の、イブの鎖蛇のグルグルの瞳と笑みが甦る…

 こんな殺人鬼ごときに殺されているようでは…

 アレには勝てない。


 よし準備は出来た…

 いっちょやりますか!

 殺し合いのSMを!


 まずはリーダー格のジャック!

 ワタシは!

 弱々しく…

「切り裂きジャック様~どうか命だけは~ワタシの体切らないで~」


 切り裂きジャックは「はあ?」という顏の後で、

「ちがーーう!! そうじゃな~い!! お前は死ぬまで屈さないんだから! お前は死ぬのは怖くないの~! だから! 最高なんだからー!!」


 ズタズタっと歩いてきた。

 無防備に…

 ワタシは、ずっと手の後ろの死神のキセルで縄をグリグリして、緩めていた!

 射程距離に入った切り裂きジャックに! 力の限り死神のキセルをブッサス!!

 横っ腹に45度上げめ 横にグリグリ これマメな?


「うっうぅぅぅぅ・・ぅ」


 切り裂きジャックは横っ腹を抑えながらモゾっと砕ける。


 ワタシは動けなくなった切り裂きジャックをニーハイブーツで背中を踏みつけ、

「お前の言う通りでしたっと…」

 次にラモン兄弟を見ると、


「ひいい!! やめで!!」

「うげうへ!! にへろ!!」


 ラモン兄弟は階段を昇ろうする。

 やっぱりヘタレだと思ったわ…

 動きもおそっ…


 ワタシは壁の1番でかいナイフを一つ取り、振りかぶって~~

「誰が行っていいって言った」


 ビュン!


 グサ~ン…


「ん? ん! んんーー!!」


 ラモン兄弟の兄?弟? どっちでもいいけど、背中にストライク。


 おいおい、ナイフ背中刺さってジャンプ? ぷっ 

 直後、

 リアクション芸人の様なオーバーリアクションでバランスを崩して、

 後ろに兄?を巻き込んで階段から崩れ落ちる。


 あほか? こいつら まじうける~


 ドジ兄弟に、ついついたまらず、腹を抱えて、

「はっはっうははは、なんじゃいそりゃ、カメラあれば良かったーあーくるすぃ」


 ワタシは壁の電動ドリルを手に取りONにする。


 ビュリュリュル~~~~


 ナイフが刺さってないドジ兄弟を見下ろし、

「おまえだっけ? ワタシの体に100穴開けるって言ったの?」


 もう1人のナイフが刺さったドジ兄弟を、必死の形相で右のヒトサシ指でさし、

「ちがう! こいつ!! こいつ!!」

 人差し指にドクロの指輪? なにこいつ? いっちょ前にオシャレ?? 


 あほすぎる~


 笑いをこらえて…

「ううっ…ぷっ…ごめんどっちでもいいわ」


「うぎゃげいぇがやうぇえ!!! ごえええ!! やめうぇえええ!!」



 5分後…



「よいしょっと」

 ワタシは長テーブルに足を組み座る。


 目の前には虫の息の切り裂きジャックとドジ兄弟。


 ワタシはパンパンっと手を叩き、

「これから閻魔女王ユキノが、バカ3人を裁判しまーす」


 切り裂きジャックはこっちを見て、

「たすけてくれ…ハアハア」

 ドジ兄弟も、

「もう悪いことはしません…早く病院に…」

「命だけは…もう穴だらけぇぇ救急車…」


 上の階のごみ箱の中で見つけたムチを床へ!


 パ―――――ン!!


「静粛に!! 判決でます!!」


「く…どっちだ…」

「たすけて」

「救急車」


「判決…… 3人死刑 以上 問答無用」


「やっぱり」

「やめて」

「むごすごる」


「そうねえ… 衝動を止められないんだよね? なら3人で殺しあえ、1人だけ生かしてやるよ」


 3人はお互いの顏を見合った後


 ●✖△●✖△●✖△●✖△●✖△●✖△

 ●✖△●✖△●✖△●✖△●✖△●✖△


 切り裂きジャックは、ドジ兄弟の凄惨な骸を両脇に足を延ばし座る…

 刺された脇腹、兄弟に噛まれた顏も手も血だらけでロクに動けない。


「やっ約束だ…もう立てない…」


「わかった約束な、じゃあね、バイバイ」


 ワタシは階段を上る。

「おい…まって…」


 ワタシは左手に持っていた電動ドリルをポイ、ガンっと落とし、

「生きるの諦めたら、それでコメカミに穴でも開けたら」


 電動ドリルを、口を開けボーっと見つめるジャックに、


「もうあんま電池ないけど、がんば」


 ワタシは上がり、地下室への床戸をバタンと閉め、


 テーブルに上にあった200万円と、卑弥呼メロンレディのスマホを胸の隙間に入れて家を出た。

「え? どこ? ここ?」

 周りを見渡すと、高い木に囲まれてる?

 山の中? 


「ユキノ様!☆」


 セントの声?

 木の隙間から、三体鬼ケルベロスが見えた。


 へえ…


 今回は走ってんじゃない♪

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