第8話 シャルル家の茶会
皆様こんにちは、緊急事態なフルールです。
今日はシャルル家のお茶会にお招きいただいております。
とても大きなお屋敷で、お手洗いをお借りしたのですが······。現在迷子になっております。大変です。皆さんに舞をお見せするお約束でしたのに。一刻も早く戻らなければ······。
確か6つ目の扉だった
「失礼しまー······す。まぁ······なんて綺麗なんでしょう」
やはり硝子細工のようですが、見たことの無い種類のお花です。
細部まで
「フル~ル〜。どこだーい?」
ビクッ──
いけません、夢中になっていました。ラーファ様が探してくださっているようです。
「は、はーい。ラーファ様······ここにおります」
私は慌てて部屋を飛び出しました。
「フルール、見つかって良かった。迷っちゃった?」
「はい、お恥ずかしいです。お手洗いを出てから、6つ目の扉だと記憶して行った筈なのですが······」
「あ〜、反対側に来ちゃったんだ。トイレを出たら左に6つ目だね。フルールが来たのは右に6つ目だよ。ふふふ」
「そうだったんですね······。お待たせしてしまい申し訳ありません。それに勝手にお部屋に入ってしまって······」
「大丈夫だよ。無駄に広いからね、この家。僕も小さい頃よく迷子になったよ。あの部屋はただの保管庫だから気にしなくていいよ。ガラクタみたいなのばかり置いてあるだけだし」
「ガラクタだなんて。素敵な硝子細工のお花がありましたよ。そのお花を近くで見てみたくて無断で入ってしまいました······。すみません」
「そうだったの。気にしないでいいよ。さぁ、戻ろうか。皆、可愛い
「そうですよねっ。急ぎましょう!」
「フルール、慌てると危ないよ。気をつけ······」
「きゃっ」
目を開くと、ラーファ様がふわっと受け止めてくださいました。
「ほーら、危ない」
「あ、ありがとうございます」
「フルールって、案外おっちょこちょいなんだね。そこもまた可愛いけど」
「父にもよく言われます」
「それではお姫様、お手をどうぞ」
そう言ってラーファ様は私の手を握られました。
「ラーファ様さまは、······誰にでもこんな風にされるのですか?」
ラーファ様が立ち止まり、振り返ったお顔は少し怒っているようでした。
「そんなわけないでしょ。こんな風にするのはフルールにだけだよ。そうだ、こないだの答え合わせをしようか」
「答え合わせ······ですか。あの後何度考えてみても、
「その答えって?」
「その······ラーファ様が、私に······えっと······ご好意······を······いえ、ですがそんな畏れ多い······」
「正解だよ」
そう言いながらラーファ様は私の手首にキスをされました。
「ラーファ様······!! 何を······え? 本当に私を······?」
よもや私に想いを寄せていただけるはずはありませんのに。
「好きだよ。僕は初めて会ったあの日、フルールに恋をしたんだ」
「そんな······嬉しいですが、畏れ多い事です」
「もしかして階級のせい? そんなの気にしないで、フルールの気持ちを聞かせてよ」
いつものラーファ様らしからず、余裕の無い表情をされています。
階級を無視して······そんな事が許されるのでしょうか。私はラーファ様の事を本当にお慕いしているのでしょうか。今までのラーファ様の言動を思い返し、顔が熱くなってしまうのは······
「私はラーファ様の事が······好き······なのだと思います」
「······ホントに?」
「わっ、わかりません!! こんな事初めてで······」
頭がいっぱいで泣いてしまいそうです。
「落ち着いて、フルール」
ラーファ様は優しく抱きしめてくださいました。
「ゆっくりでいいから。無理に僕の気持ちに答えなくていいから、フルールの気持ちを聞かせてよ」
「私の······気持ち······は、初めてお会いした時は弟を慰めるように思っておりましたのに、その後お会いした時は別人のようで、まるで兄のように思っておりました。ですが、ラーファ様が私を大事だとか特別だとか仰るから、わけがわからなくなってしまいました。ラーファ様は上級貴族であられます。ですが、もしもラーファ様が私を好いてくださっていたらと思った時に、自分自身の想いにも気付いてしまいました。私も······ラーファ様をお慕いしております」
「やった······嬉しいな。本当に、嬉しい······」
バァァァン──
突然扉が開いたので驚き見ると、ラーファ様のご両親と執事さんとメイドの方々が号泣されていました。えっと······状況がわかりません。
「父様、母様! まさか聞いて······!?」
「ごめんなさいね。私たちも扉の向こうでドキドキしながら聞いていましたの。こんなに早くうちにお嫁さんが来てくれるなんて······」
「ラーファよ、お前は良い目をしておると思っておったよ。こんなに素敵なお嬢さんを見初めるとは」
『ラーファ様、おめでとうございます』
執事さんやメイドさん達まで······。
「ラーファ様······これは······」
「ごめんね、フルール。僕ん家みんなこんな感じなんだよ······」
「うふふ、素敵なご家族ですわ。ですが、お嫁さんというのは些か早すぎるような······」
「何を言っているの、フルールちゃん。想い合っているなら、あなたはれっきとしたお嫁さん候補よ。むしろもうお嫁さんね」
「そうだよ、フルールちゃん。いつでもお嫁に来てくれて構わないんだよ。私たちは歓迎するよ」
いつの間にかフルールさんから、フルールちゃんに変わっていました。
「あ、ありがとうございます。身に余る光栄です。えっと······ゆっくりになってしまうとは思いますが、ラーファ様と共に歩んでいけたらと思います」
「おめでとう、ラーファ。フルールちゃんを大事になさいね」
「父様も母様も気が早いよ。フルールも乗らないで······。お嫁さんにはしたいけど、何よりフルールの気持ちが大事だからね。もうっ! さぁ、
「そうでした。今からで良ろしければ、披露させていただきます」
「勿論お願いするわ。ね、
「あぁ、早く見せておくれ」
「はい、喜んで!」
私はシャルル家の皆様に感謝の気持ち込め、全身全霊の演舞を披露致しました。沢山のお花も皆様に喜んでいただけたようで一安心です。
なんだかハプニングが沢山ありましたが、とても良いお茶会でした(*´︶`*)
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