第320話 とも二響く

自分が苦しんだら、人のイタミがわかるとか



涙をながせば、人の気持ちがわかるとか



傷ついたぶんだけ、人の傷がわかるとか



歌や小説や言葉で美しくならべれている



けれど私は、そう思わない



誰1人として、たとえ家族でも同じ1分1秒を



同じ時間を生きていないから



ただ、私にわかったのは



地獄みたいな人生のなかで



辞めたくなる人生のなかで



とまらない涙のなかで



一生かかえていく苦しみと気持ちと痛みがあると



人の苦しみと気持ちと痛みを共感できることだけがわかる



ともに生きられないけれど



心はともに共感、ともに響く



だから、私はひたすら今日もだれかの心を聴いている







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