第13話 先にいた先輩
物事は一手目、最初が肝心だと僕は思ってるし、その準備は万全にしておくべきだと思う。
人間関係もそうだ。最初の印象で僕に対してとっつきやすい印象を持ってもらうことは大切だと思う。
だけど、予想以上に、他クラスやまさかまさかの上級生にまで話しかけられて時間を奪われるとは思わなかったよ。
5時限目が終わると僕も近藤くんと同じく教室を飛び出した。もうひとつ授業が残っている。
放課後までに準備を終わらせると決めた近藤くんを追いかけるようにして歩いた。
「昼飯食べれなかったよ部長・・・」
「北村・・・おまえってトラブルメーカーじゃねぇか?ってかまだ俺が部長やるって決めてねーけど」
「新規部活動申請で、書類出す時にまず自分を部長にして提出するよね?というか僕が主体で問題を起こしてるわけじゃないよ。巻き込まれ体質と言ってくれないかな?」
「部長の欄は仮だけどな。しっかし、やっぱり時限爆弾のお前と距離を取っておいて正解だったわ」
「部員候補の三田くんのセリフを借りるならひどしっ!だよ・・・」
「わりーな。俺は同じ部のやつと仲良くできればそれでいいからさ」
「割り切り早すぎじゃない!?100人くらいとは話したから、出会いの場ではあったと思うよ?」
「でも、ほとんどお前から情報を聞き出しただけで、見返りなんて何も無かっただろう?名乗らない相手にくれてやる時間は無い。女子だけは別だかな」
「ほんと、近藤はちゃっかりしてると言うかさ」
「俺はまだ何も得してないぞ?北村に部員集めはやってもらってるがな」
「部長が勧誘しなくてどーするのさ」
「だから部長じゃねーっての。メンバー決まってからトップは決めたらいいだろ?」
「発起人が喋らないと。僕の説明じゃふわふわするでしょ。理念とか無いの?部の理念」
「・・・そんなの必要か?」
「じゃないと、ただの出会い系サークルになるって中村さんが言ってたよ?」
「中村?なかむら・・・あぁ、あのちっこいリスみたいな女子か」
一年の教室群は一階だ。職員室や保健室は一階にあるから行きやすいと言える。
そして、階段を登って2階へ。2ー5の教室の隣に、美術室があった。
「ここを使うの?」
「ああ。文芸部と美術部が一緒になってるから、ここは空いているらしい」
ガラッと迷いなく教室を開ける近藤くん。
そこには美術部らしきキャンバスや筆など落ちていることもなく、かといって机や椅子が積まれているわけでもない。ただの木の床が広がっているだけだった。
ただ、ところどころに絵の具をこすった跡があり、そのまま残っている。美術部だった名残はちゃんとあった。
「片付いてるね。片付けすぎてて色々足りないというか・・・」
ベランダの方を見ると、メガネの男子生徒と目が合った。
えっと・・・ここで何してるのかな?
「だ、誰ですか?」
声を発したのは相手の方だった。なぜか窓が空いていたので声はちゃんと聞こえる。
「僕は1年の北村と言います」
「いっ、一年生がなぜここにっ?こ、ここは空き教室のはずだろう?」
「今日からここは恋のキューピット部になるんです。あなたは2年生ですか?」
「にっ、2ー5の蒲生(がもう)だ。ここは僕のっ、永遠にして不可侵の安住の地なんだ。邪魔しないでくれっ!」
「1年の近藤っす。先輩、邪魔って言われてもここ、今から部室になるんで。どっちかと言うと蒲生先輩の方が邪魔っす」
「な、なんだとぉぉお!?」
あれ?どうしよう。この問答、早く終わらせないと次の授業が・・・。
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