第6話 告白と友達

「君のことが、好きダァッ!!」


次の日の朝の風景。屋上にて、小野寺さんが名も知らない男子から告白を受けていた。決して、僕が彼女に告白したわけじゃない。


屋上の扉を開けたらこんな状態だったんだ。別にこの問答を聞くつもりは無いし、出かけた右足を戻そうか迷っていた。


「あ」


こちらを向いた小野寺さんが、にこっと笑って胸のあたりで手を小さく振っている。


とんでもないタイミングで来てしまった気がする。あの後直接話したいとか言うから応じてHR前に来たのに、先客がいてまさか告白を聞いてしまうとは思ってなかった。


朝から告白するのはやめたほうがいいと思うよ、うん。


「助けてよ彼氏」


こっち向いて言うなああああああ!!!


小野寺さん、朝から暑苦しい告白受けて困ってるのはわかるけど、助けを求めないでよ。


「か、彼氏?」


さっき大声を出していた人。僕が言うのもなんだけど、パッとしなくて制服がまだフィットしてない少し大きめのブレザーを着ている男が真っ赤な顔でこちらを睨んでくる。


「彼氏って何のこと?僕は・・・」


「彼氏でしょ?昨日彼氏になるって言ってくれましたよねっ!?」


「おまえは同じクラスのパッとしないやつ!昨日付き合ったってどういうことだ!?」


いやああああああ!!まさかのクラスメイト!気まずい。気まずすぎる。


「えっと、君はどちら様?」


「同じクラスの近藤だ。近藤歩」


「近藤くん、その子はやめたほうがいいよ。僕の元カノなんだ」


「は?どういうことだよ。説明してくれ」


「かなり嫉妬深くて睡眠時間削ってくる。かなりヤバいやつなんだ。やめたほうがいいよ?」


ごめん、小野寺さん。重い女認定されるのは不本意だろうけど、こうでもしないとこの人、諦めてくれそうにないでしょ?


「マジかよ。それを受け止めてこそ男ってもんだろ?好きなやつが眠れない時にそばにいることこそ、必要なんじゃ無いか?」


はい?誰もそばにいろとか、言ってないんですけど。想像を膨らますのは勝手だけど、それを口に出すのはやめたほうがいいと思う。


ほら、なんか小野寺さんの顔が笑顔作れてなくて引いてるし。少しは表情とか観察して、わかってあげようとしなよ。自分の世界から抜け出してくれー。


「小野寺さん、早く答えを言ってあげたら?」


「待て待て、まあ待て」


どうしてステイ?あとは答えを聞けばいいだけじゃないか。怖気づいたのか?


「彼氏持ちに告白するなんて馬鹿にも程がある。告白してないことにしたいんだけど、いいですか?」


か、かっこわるー!!


「え、本気で言ってるの?」


「本気っていうか、男が出てくると思わなかったっていうか・・・つうか、同じクラスだろ?今のこと、黙って見逃してくれないか?」


「やだよ。嘘つくの苦手なんだ」


「え?ほんとですか?」


じろっと小野寺さんに見つめられる。話がややこしくなるから、あんまり変な反応しないでくれる?


っていうか、敬語やめてほしいんだけど。バレたらどうするの?


「たのむー。まじで、たのむー」


どうやら、自分のことでいっぱいいっぱいになってるみたいで、近藤くんには怪しまれてないみたいだ。


「じゃあ、わかった。僕と友達になろう?」


めんどくさいけど、僕と小野寺さんの関係が知られた以上、近くに置いておきたい。


近藤がどういう人だかはわからないけど、想像はできる。もしかしたら、友達多いのかもしれないし。友達いないならいないで、余計なこと喋らないからいいかも。


用は、彼は僕と同じ高校生活駆け出し組なのだ。そうだと思いたい。近藤の多少空回ってる感じは、みんなも同じなんだ。クラスの人と仲良くしたいし、まだ自分の居場所を探っている最中だから。


「なんで、友達にならないといけないんだ?」


あれ?僕の実感と大分違うぞ?おかしいな。僕、そんなに変な人に見えるのだろうか?


「友達になるの、嫌なのかい?」


「なんか、いきなり弱みを握られた感じがしてなぁ。素直に友達と呼べるかどうか微妙だ」


なるほど。僕もそれはわかる気がする。弱みにつけこんで近藤くんを利用するつもりは無いんだけど、友情として破綻しているか。意外に、友人と呼べる基準をちゃんと考えているらしい。


もっとも、僕にとっての友人はたまに話し相手になってくれる程度だから。近藤くんはそれとは違うらしい。

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