第62話 再び狙われるシャルロット?

「おはようございます、カーティスさん。今は朝の七時です。そろそろ起きる時間かと……あと、マリーはいい加減カーティスさんから離れなさい」

「うーん、むにゃむにゃ」

「むにゃむにゃって言いながら寝る人なんて居ませんっ!」


 いつも通りシャルロットに起こされたんだけど、今日……というか、昨晩からマリーが離れてくれない。

 というか、マリーは起きているなら、早く朝の準備をしようよ。


「ふふっ……じゃあ、頑張ってね」


 結局、何だったのかは分からないけれど、約束だからと言って、寝る時は一切離れなかったマリーだけど、朝はすんなりと離れてくれた。


「まぁカーティスさんが起きている時は、胸ポケットで密着……こほん。何でもありません」


 シャルロットがよく分からない説明をしかけて……気になるなぁ。


「お兄ちゃん。そんな事より、早く早く。クリスのパパとママに会いに行こうよっ!」


 クリスに急かされ、朝食を終えて宿を出ると、いつも通り乗合馬車の停留所へ行くんだけど、何か様子がおかしい。

 チケット売り場に列が出来ていて……いや、列が出来て居るのはいつもと変わらないんだけど、それが列の進み具合が遅過ぎる。


「クリス、ちょっと様子を見てくるから、並んでおいてくれる?」

「うん、分かったー」


 列を離れて前の方を見てみると、冒険者らしき男性たちが、チケットを買おうとしているお客さんに何かを聞いていて、それが終わるまで買えないらしい。

 これって営業妨害じゃないのかな?

 そう思っていると、同じ事を思った人がいて、


「おい、アンタらは何なんだ! こっちは急いで居るってのに!」

「悪いな。俺たちはベルナルド伯爵に雇われているんだ。俺たちに従わないって事は、伯爵の命に従わないって事になるぜ」

「くっ……ベルナルド伯爵か。最悪だな」


 何だか偉い人の名前を出されて静かになる。

 ベルナルド伯爵って誰だろうか。


「……っていう話だったんだけど、クリスはベルナルド伯爵って知ってる?」

「んー、聞いた事があるような気もするけど、分からないや。ごめんね」


 まぁ普通は貴族の名前なんて、そうそう知らないよね。

 かく言う僕だって、近隣の貴族の名前しか知らないしね。


「周囲の人たちの反応から察するに、あまり評判が良くなさそうな気はしますね」

「うん。何となくだけど、そんな感じだったね」

「どう致しますか? また歩いて行かれますか? 遠回りする街道を無視して、草むらを突っ切れば、それ程遠くはないかと」

「じゃあ、そうしようか。クリスも大丈夫?」


 クリスも構わないと言ってくれたので、列から外れ、街の門から出て行く事に。

 どうやら先程の人たちは馬車で出て行く人をチェックしているけど、徒歩で出て行く人までは流石に無理らしい。

 何が目的かは分からないけど、時間を取られるのも嫌なので、草むらの中を進んで行ると、


「カーティスさん。街から大勢の人がこちらへ向かっています」

「え!? こちらへ……って、こんな所に何かあるの!? それとも……」


 まさか、マリーみたいにシャルロットを追って来ているとか?

 でも、どうやってシャルロットを!?


「まさか……シャルロット! この近辺にある、魔鋼鉄の位置を調べて!」

「え? は、はい……あ、あれ!? かなり近い!? というか、さっきの街にありますね。前に調べた時は凄く遠い場所に思えたのですが、そんな所まで移動していたんですね」

「移動していた……とかじゃなくて、その魔鋼鉄って、マリーみたいにシャルロットを狙っているんじゃないの!?」

「あっ!? そういう事……に、逃げましょう! カーティスさん!」


 逃げるのは逃げるんだけど、マリーに出てきてもらって、攻撃魔法で牽制してもらうべきだろうか。


 けど、こっちにマリーが居ると分かれば、向こうが違う手を取ってくる可能性がある。

 ゴミスキルでストレージに入れれば、マリーがシャルロットを検知出来なかったのは確認済み。

 なので、向こうがマリーの存在を知らない今、一度限りの奥の手になり得るマリーは、まだ隠しておくべきだろうか。

 一先ず、シャルロットをゴミスキルでストレージに入れ、何かあっても惚ける事にしたところで、


「お待ち下さい」


 先程乗合馬車の停留所で見かけた人たちに追いつかれた。

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