挿話6 リベンジを企てるジェームズ
『よう。今、いいかい』
「お前……こっちは貴族で、雇い主なんだぞ。もう少し態度をマシに出来ないのか?」
『へっへっへ。まぁ気にするなって。通話魔法で話しているんだから、オレの態度なんて気にならないだろ?』
こいつ……いや、まぁいい。
その道では有名なシーフらしいからな。
高額な分、相応の情報をよこすはずだ。
どうでも良い情報だったら……いや、先ずは話を聞くか。
「で、どうしたんだ?」
『ターゲットを発見した』
「な……ど、どっちだ!? 女の方か? 男の方か!?」
『男だ。容姿も聞いていた話と概ね一致したし、行動を共にしているという女児も一緒に居た』
「お……おぉ。で、女は!? 女は一緒じゃないのか!?」
『それがなぁ……確かに一人、綺麗な女が一緒に居たんだが、こっちは聞いていた容姿と全然違ったぞ?』
む……どういう事だ?
コイツが別の人物と勘違いしているのか、それともマリーが変装しているのか?
だが、あんなに美しい少女だ。
多少変装したところで、分かりそうなものだが。
「マリーが……女が変装しているのではないのか?」
『いや、あれは変装って感じじゃねーな。俺も仕事がら変装するし、変装を見分けるポイントも分かる。だから変装ではなく、十中八九別の女だぜ』
「……目はどんな感じだったんだ? 冷たくなかったか?」
『いや、普通……というか、優しそうな目と顔だ。あと、胸元が大きく開いた服を着ていたが……』
「な、何だとっ!? 見たいっ! ……じゃなくて、それで?」
『…………あー、話を続けるが、胸は結構大きかったぞ』
ならば、マリーではないか。
全く無い訳ではないが、控えめだったからな。
『だが、男と女児は間違いなくターゲットだろう。その女がカーティスと呼んでいたしな』
「ほぉ……ならば、間違いなさそうだな。胸糞悪い話だが、アイツは昔から女をたらし込むのだけは上手かった。よくも俺のマリーを……」
『まぁアンタの恨みはさて置き、前金で貰っている報酬では捜索までだ。どうする? オプションで捕縛や暗殺。その男の前で女を嬲るっていうのもあるぜ』
「最後のはとても魅力的だな。一緒に居る女児も……」
『…………』
「こほん。冗談だ。アイツへの報復は俺が自分でやるから、オプションは要らん」
『…………』
おい。どうしてさっきから無言なんだ?
俺が追加の依頼となるオプションを断ったからだよな?
女児はあくまで可愛かったから……いや、可愛いっていうのも変な意味ではないんだ!
おい、何か言えよっ!
「あー、それより、もう一人のターゲット……マリーの捜索を頼む」
『……へいへい、女の方ね。黒髪の美少女っていうのも、まぁ一応情報が無くは無いんだが……』
「何っ!? 本当かっ!?」
『いや、ただなぁ。突然道の真ん中で黒髪の少女が現れた……なんて話だったから、ちょっと怪しくてな』
いや、その話は信憑性が高いな。
コイツには教えていないが、マリーはマジックフォンとやらで、カードの形から人の形に変身する。
俺からマリーを奪ったカーティスが、マリーに魔力を注ぎ、カード型から人型へ戻したのだろう。
アイツはまともな魔法が使えないくせに、魔法力の量だけは多いからな。
「一先ず、その唯一の手掛かりの場所を当たってくれ」
『おいおい、いいのか? 突然人が現れたっていう、クソみたいな情報なんだそ?』
「構わん」
『そうかい。まぁ俺としては金を貰っているから何とも言えんが、まぁ当たってみるさ』
「頼んだ。で、そのターゲットが居た場所は?」
『ロールシア国の国境の村だ。そうそう、奴はカーディという名で身分証を作っていたみたいだぞ』
「分かった。覚えておこう」
マリーを奪い、騎士団長を殺した悪人カーティス。
何故か騎士団の中では死んだ事になっているが、俺は絶対にしぶとく生きていると思っていたぜ。
俺がお前を倒し、マリーを救うんだ!
そうすれば、カーティスから助けられたマリーが、必ず俺に惚れるはずだっ!
……ふはははっ! 待っていろよ! 麗しのマリーっ!
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