第52話 カーティスのお世話

 今度こそ直したシャルロットをストレージから取り出すと、突然視界が銀色に染まる。

 それが長い銀髪だと気付いた所で、今度は視界が肌色に変わり、


「元の姿に戻れましたっ! カーティスさんっ! ありがとうございますっ!」


 シャルロットの声と共に、抱きつかれた。

 不意の事で、ベッドに押し倒される形になってしまい、青い瞳の可愛い女の子の顔が、視界いっぱいに広がる。


「えーっと、シャルロット?」

「はいっ! シャルロットです! カーティスさんのおかげで、自由に動く事が出来るようになりましたっ! 本当に……本当にありがとうございますっ!」


 そう言うと、笑顔を浮かべたシャルロットが、僕に覆い被さるようにして再び抱きついてきた。

 マリーさんがお姉さんと呼ぶだけあって、年齢が少し上みたいで、女性を象徴する二つの弾力のある柔らかい膨らみが、むにゅっと押し付けられていて……


「お、お姉様っ! お待ち下さいっ! 服……服を着ておられませんっ!」

「え……えぇぇぇっ!?」

「いきなり現れたかと思ったら、何をしてるのーっ!? お兄ちゃんから離れてっ!」


 マリーさんの指摘でシャルロットが顔を赤らめながら起き上がる。

 慌てて目を逸らしたけど、クリスのそれよりも、遥かに大きな膨らみが見えてしまい……あ、クリスが思いっきり頬を膨らませていた。

 とりあえず、クリスの服を取り出し、着てもらう事にしたんだけど、


「……カーティスさん。ちょっと苦しいです。胸の部分が」

「むーっ! こ、これから大きくなるんだもんっ!」

「い、いえ、決してクリスさんを貶めている訳ではなくて、現状を報告しているだけで……」

「うぅっ……お兄ちゃん! シャルロットっていう人がいぢめるーっ!」


 クリスと年齢差があるから、シャツを着てもかえって胸が強調されてしまい、おまけにお腹が見えているし、スカートは凄く短いし、更に下着がないから目のやり場に凄く困る。

 一先ず服を買いに行こうと提案し、立ち上がった所で、シャルロットが上目遣いで僕を見つめてきた。


「カーティスさん。改めて、ありがとうございます。これから私は、恩人であるカーティスさんに、誠心誠意ご奉仕させていただきますので、どうかお側にいさせていただけないでしょうか」

「一緒に居てくれるのは僕も嬉しい……って、待って。今、変な事を言わなかった? 奉仕って?」

「はい。私は自由に動けるようになった分、これまで以上にカーティスさんから雷魔法で魔法力を供給いただく必要があります。ですので、是非お仕えさせていただきたくて」

「いや、そんな事をしなくても、魔法力はあげるよ? というか、ちょっと近くない!?」

「そんな事ありません。恩人であるカーティスさんに、それくらいさせていただきたいですし、あと、いつもカーティスさんの胸に抱かれていましたので、その……接していないと私が落ち着かなくて」


 いや、確かにいつもシャツの胸ポケットに入れていたけどさ、シャルロットは僕より背が低いから、今の格好で近付かれると、顔を見るだけで視界にその……肌色の膨らみが見えてしまう訳で。


「そ、そうだ。恩人といえば、マリーさん……ありがとう。ローガンに命令されても時間稼ぎをしてくれた上に、僕を庇ってくれて」

「べ、別に貴方の為じゃないわっ! お、お姉様……そう、お姉様の為なんだからっ!」


 シャルロットの話で、マリーさんにようやくお礼を述べる。

 シャルロットが元に戻れた事も、僕やクリスがこうして無事でいられるのも、マリーさんのおかげだという話をしていると、


「むー……お兄ちゃんっ! クリスもっ! クリスもくっつくのーっ!」

「えぇっ!? クリスっ!?」

「別にいーでしょっ! シャルロットさんやマリーさんだって、お兄ちゃんにくっついているんだもん!」


 仲間外れ? を嫌がったらしいクリスが飛びついて来た。

 というか、シャルロットもマリーも近くには居るけど、抱きついている訳ではないからね?

 だけど、そんな僕の内心そっちのけで、三人が騒ぎ出す。


「クリスさん。これからは私がカーティスさんのお世話をしますので、大丈夫ですよ?」

「待ってください。お姉様にそんな事をさせる訳には参りません。ですので、カーティスのお世話は私がいたしますね」

「ちょっと、二人共何を言っているのっ!? お兄ちゃんのお世話は、クリスがするって決まっているんだからーっ!」


 一先ず、シャルロットもマリーも無事に修理する事が出来たんだけど……これから大変な気がするのは、僕だけだろうか。

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