第51話 ゴミ修理

 岩から少しだけ顔を出して様子を伺うと、黒焦げになったボスモンスターが……まだ生きてるっ!?

 洞窟が揺れる程の攻撃でも耐えられるのか。

 ただ、かなり弱っているらしく、殆ど動こうとせず……近くの岩を掴んで投げつけたっ!?


「うぉっ! 危ねぇ……お、おい! 逃げるぞっ!」

「た、隊長は良いんですか? それに、さっきの爆発は!?」

「んなこた知るかよ! それに、隊長が今ここに居ないって事は、あの追って居た男共々、この魔物にやられたって事だろ!? なら、副隊長である俺が指揮を取る! 撤退だっ!」


 副隊長を名乗る騎士が怪我人を無視して、真っ先に逃げ出し、その後に怪我人を担いだ騎士たちが続いて行く。

 その後を、魔物が追うそぶりを見せたので、氷魔法の魔銃で倒すと、一旦岩陰に隠れ、


「クリス、ここで伏せていて!」

「お兄ちゃんは!?」

「僕はボスモンスターを倒して来る」

「だ、だったらクリスも……」

「大丈夫だから。クリスはそこに居て」


 赤い魔銃に程々の魔力を注ぐ。

 準備が整った所で、岩陰から身を躍らそうとして――ヒュウッと、風を切る音と共に目の前を何かが通り過ぎて行く。

 ……おそらく、ボスモンスターが投げた石。

 ただの投石だけど、壁にぶつかった石が粉々に飛び散る程の力で投げられているから、気は抜けない。

 こっちは連射が出来ないから、タイミングを見計らって岩から出て……撃つ! そのまま向こう側にある岩の影まで走り、再び轟音が響く。

 その直後、何かが近付いてくる足音が聞こえて来た。

 更にダメージを与えたはずだし、ボスモンスターは動けないはず……違うっ! 普通の魔物だっ!

 赤い魔銃は至近距離で打ったら、僕までダメージを受けてしまう! かといって、氷魔法の魔銃には魔力を込めてないっ!

 一先ず鉄の剣を構えて魔獣の攻撃を防ぐものの、これだと魔銃が撃てず、いずれ僕がやられてしまう……って、そうか。


「≪サンダーボルト≫」


 最近、魔銃で攻撃し過ぎて、自分が魔法使いだっていう事を忘れてかけていたよ。

 再び、ボスモンスターの様子を伺うと、先程の攻撃が効いたのか、動く気配はない。

 念の為に、もう一発攻撃を放ち、


「≪ゴミ保管≫」


 ようやくボスモンスターと魔物の死骸を回収した。

 ……ただ、一緒に亡くなった騎士の亡骸まで回収してしまった気がするけど。


「シャルロット。周囲に魔物の気配は?」

『この近くには居ません』

「そっか。クリス……大丈夫?」


 クリスの居る岩の陰を覗き込むと、


「お、お兄ちゃん。た、倒したの? もう大丈夫なの?」

「うん、大丈夫だよ。さぁ、帰ろう」

「お兄ちゃーんっ! 良かった……良かったよーっ!」


 凄い勢いで抱きつかれてしまい、少しよろけながらも受け止め……一旦街へ戻る事に。

 冒険者ギルドにも寄らず、真っ先に宿へ戻ると、すぐにゴミスキルを使って、


「あった! 作れるよ、魔鋼鉄!」


 シャルロットを修理する為に必要な材料を作成した。

 それから続けざまにスキルを使い、


「……あれ!? どうして、マジックフォンが出てこないんだ!?」


 修理可能な一覧にシャルロットが出てこない。

 少し表示方法を変え、魔鋼鉄を使って修理出来るものを表示させると、


――壊れた鬲泌ー主ー大・ウ。:繝槭Μ繝シ(修理可)――


 というのが表示された。

 これ……かな? いつもシャルロットはリストを見ずに出し入れしていた事が、こんな所でアダになるなんて。


「シャルロット。修理するのって、この意味不明な表示の物で良いのかな?」

『さぁ……私はカーティスさんのスキルを見る事が出来ないので、おそらくとしか……』


 シャルロットに聞いてみても分からないと言われたけど、他に該当しそうな物が無いし、きっとこの謎の表示に間違いないはずだ! と、


「≪ゴミ修理≫!」


 スキルで状態が優に変わった、謎のゴミを取り出す。

 すると、


「カーティスっ! なおしてくれて、ありがとう! で、お姉様は?」

「マリーさんっ!? 良かった……けど、少しだけ待ってね」


 現れたのはマリーさんで……って、よく考えたら、シャルロットをストレージに格納せず、会話していたんだから、直せないか。

 改めてシャルロットをゴミスキルでストレージに格納し、


――壊れた鬲泌ー主ー大・ウ。:繧キ繝」繝ォ繝ュ繝・ヨ(修理可)――


 よかった。

 ボスモンスターを二体倒したからかな? 作った魔鋼鉄が二人分あったようで、


「≪ゴミ修理≫!」


 今度こそシャルロットを修理した。

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