第44話 ダンジョン攻略

 着替えを終えたクリスに改めて謝り、再び魔物を探してダンジョンを進む。

 シャルロットが魔物の位置や罠などを教えてくれるので、危険な状態に陥る事なく、あっという間に最初の階層を踏破し、次の階層へ。


「ふふっ、楽勝ね。これなら、ダンジョンの魔物を全滅しちゃいそうね」

「あれ? ダンジョンの魔物を全部倒したら、もうここはダンジョンじゃなくなるって事なのー?」

「ううん。どういう仕組みなのかは分からないけど、ダンジョン内では一定期間が過ぎると、魔物が新たに生み出されるんだって。……ボスモンスターも含めて」


 マリーさんの言葉を聞いてクリスが不思議そうに声をあげたので、


「だったら、こんなに魔物を倒しても、意味がないって事なのー?」

「いや、放っておくと、ダンジョン内に魔物が増え過ぎて、スタンピードって言う災害が起こってしまうんだ。だから定期的に魔物を倒す必要があって、冒険者に依頼が出るんだよ」

「へぇー、そうなんだー」


 魔物を倒す理由を説明してあげたんだけど……ギルドの職員さんが説明していたからね?

 そんな話をしつつ、次の階層でも魔物を綺麗に倒し、更に次の階層へ行こうかというところで、


『カーティスさん。洞窟の入り口に、十人程人が集まっていますね』


 シャルロットから、別の冒険者パーティが来たという話が出て来た。

 けど十人って、冒険者パーティにしては多いんだよね。

 ギルドでは、連携とか報酬の取り分とかで、パーティは六人くらいを上限として推奨している。

 もちろん、それを無視して十人以上のパーティを組む事も自由だし、強い魔物に挑む時は冒険者を集めたりするから……あ、わかった! きっと、ボスモンスターを倒しに来たんだ。


「クリス、マリーさん。どうやら、他の冒険者パーティかクランかが、ボスモンスターを倒しに来たみたいだ。次の階層の魔物を倒したら、道を譲ってあげよう」

「えぇっ!? そんな事をしたら、お姉様をなおせないじゃない! イヤよ」

「いやいや、どっちにしろ、僕たちはボスモンスターと戦えないからさ。それより、早く行かないと、魔物と戦っている時に、追いつかれちゃうよ」

「魔法で通路を塞いで、後続を通れなくすれば……」

「それ、下手をすれば僕たちが出られなくなるから絶対にしないでね」


 割と本気でやりそうなマリーさんに釘を刺しつつ、次の階層へ。

 サクサクと倒していき、この階層の魔物を殲滅したので、比較的広い場所で道を譲ろうと思ったんだけど、


『カーティスさん。入り口に居る人たち……動いてませんよ』

「……え? そうなの? 何をしているんだろ?」

『流石にそこまでは分からないですね』


 そのパーティが洞窟に入って来ない。

 まだ人が増える予定で、仲間を待っているとか?

 それとも、一旦休憩してから入るの?

 実は冒険者じゃない街の人たちが、そこでキャンプしてます……って、流石にダンジョンの入り口でそんな事はしないよね?


「……という訳で、さっき言ったパーティが降りて来ないんだ」

「だったら気にしなくても良いんじゃない? 私たちは魔物を沢山倒してB級冒険者に昇格。そして、お姉様をなおす為の魔石を手に入れるのよっ!」

「まぁ確かに、入って来ないのであれば、気にする必要はないかもしれないけど」

「それに、そのパーティがボスモンスターを倒しに来ているのなら、私たちがダンジョン内の他の魔物を倒しておいてあげれば、その人たちの体力温存になるし、良いでしょ。お姉様の修理に繋がり、かつ人助けにもなる。良い事じゃない」


 確かにマリーさんの言う通り……かな。


「クリスは、体力とか大丈夫?」

「うん、全然平気だよー。お兄ちゃんが、汚れを綺麗にしてくれるし……という訳で、お兄ちゃん。お願ーい」


 一先ず、周辺に魔物が居ない事を確認し、クリスをストレージに入れて、服などを綺麗にして……クリスを出して、すぐに後ろを向く。

 残念ながら、ストレージの中で服を脱がす事は出来ても、着せる事は出来なかったんだよね。

 しかも、出す時も見える範囲にしか出せないらしく、どうしても一瞬クリスの身体が視界に……こほん。

 後ろ手で服や下着をクリスに渡し、


「お兄ちゃん。もう、いいよー」


 改めて次の階層へ。

 ……あれ? そういえば、このダンジョンって、次が最下層だったような気がする。

 とりあえず、ボスモンスターには遭わないようにしないとね。

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