第42話 特性付与
翌朝。昨日と同じ様に、寝相の悪い二人に挟まれて起きると、早速冒険者ギルドへ。
一番難易度の高い依頼を請けようと思って、C級冒険者用の掲示板を眺める。
とりあえず報酬が一番高いのが、一番強い魔物が出るのだと思って、貼られた依頼を一枚手に取ると、
『待ってください、カーティスさん。その依頼よりも、三つ隣に貼られている依頼書の方が良いと思います』
シャルロットが待ったをかけてきた。
「……そうなの? こっちの方が報酬が良いよ?」
『報酬はその通りなのですが、今お持ちの依頼書は対象となるダンジョンが遠いという理由も含まれているかと。一方、こちらのダンジョンは街から近いので、安く見えるだけかと思います』
シャルロットの言う通り、依頼書をよく見てみると、僕が手にしていた方は移動だけで片道二日もかかる場所のダンジョンらしい。
もう一方で、シャルロットにオススメされた依頼書は、ダンジョンまで小一時間くらいだ。
これなら、断然後者の方が良い。往復四日している間に、もっと沢山依頼が請けられるからね。
「よし。じゃあ、こっちにしよう」
「わかったー! 頑張ろうね、お兄ちゃん」
ギルドの受付で手続きを済ませ、いざダンジョンへ。
……と言いたい所だけど、受付のお姉さんに止められてしまった。
「お二人は初めてのダンジョンですので、推奨品の説明を致します。あと強制ではありませんが、シーフやヒーラーといった役割の方と一緒に行かれる事をオススメします」
後者のパーティメンバーの話はともかく、前者のランタンとか非常食、薬や予備の武器とかって、割と当たり前の話じゃないかな?
「こういう事を当たり前の話だ……って舐めて掛かる人がとにかく多いんです。いざっていう時に困るのは冒険者の皆様なので、しっかり準備してくださいね」
お姉さんが僕の思考を読んだかのように釘を刺してきた。
きっと、今までいろいろあったんだろうな。
なんて事を思っていたら、
「そっかぁー。ダンジョンって洞窟の中とかだもんねー。灯りが無いと見えないし、お腹が空くのは嫌だなー」
わかっていなかった子が居た。
とりあえず、マリーさんが治癒魔法を使えると聞いているし、罠とかならシャルロットが見つけてくれそうなので、ランタンと非常食を買いに行く。
それから予備の武器は、ゴミスキルで何か作れないか確認してみる事にした。
「クリスは今、鉄の短剣を使っているんだよね。けど、同じものしかないから……≪ゴミ錬金≫」
最近はゴミの回収も行っていなかったし、ゴミ修理ではこれと言った物が見つからなかったので、錬金スキルを使ってみると、変な言葉が表示されている。
「何だろう、これ? 鉄の短剣(ビーストキラー:ランクD)って表示されているんだけど」
「ビーストキラー? クリスには見えないけど……とりあえず作ってみたら?」
「必要な材料は、壊れたナイフと鉄屑に、ワイルドウルフの血? ……あれかな? この前実験で分別スキルを魔物の死骸に使った時の残り」
分別した魔物の死骸はギルドに買い取ってもらったけど、血は邪魔になると思ってストレージに入れっぱなしだったんだけど、まさか武器を作る材料になるなんて。
一先ず、ビーストキラーと表示されている武器を作り、ストレージから取り出してみると、刃に変な模様が浮かんだ短剣が出て来た。
『カーティスさん、そのスキルは凄いですね。まさか特性付与まで出来るなんて』
「……特性付与? どういう事?」
『その名の通り、ビーストキラー……つまり、獣系の魔物に攻撃した時、通常よりも大ダメージを与えられますよ。ただ、それほど効果は高くないようですが』
「……あー、使ったのがD級冒険者でも倒せるワイルドウルフだからかな? 強い魔物の血を使ったら、もっと効果が高いかな?」
『流石にスキルの事までは分からないので、おそらくとしか言えませんが、そういう事ではないかと』
なるほどね。という事は、シャルロットを修理するための強い魔物と戦えば、ついでに強い特性付与が出来る様になるみたいだね。
一先ず、ビーストキラーという特性が付与された短剣をクリスに渡し、ダンジョンを目指して街を出る。
シャルロットに方角を教えてもらって少し歩いていると、突然マリーさんが人の姿に戻った。
「街を出て人の目も無いし、そろそろこっちの姿になっても良いわよね。カーティス、私と会えなくて寂しかった?」
「……お兄ちゃんにはクリスが居るから大丈夫なのっ!」
「ふふん。でもカーティスだって、どうせなら可愛い私と一緒に歩きたいわよねー?」
「く、クリスだって可愛いもんっ! ね、お兄ちゃん!」
「ふふっ……私の方が可愛いわよね? カーティス」
えーっと、僕たちは強い魔物を倒す為にダンジョンを目指して居るはずなんだけど……どうして、全然関係の無い話になっているの!?
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