第24話 騎士による荷物チェック

「では、こちらが配達の報酬となります。……しかし、カーティスさん。今回も特急馬車を使われていますがお金は大丈夫ですか?」

「ははは、まぁ何とか」


 魔銃の練習をした翌朝。

 今日も朝から馬車に乗り、荷物の配達の仕事の為、ウバイツの街へやって来たんだけど……仕事の完了報告をしたら、受付のお姉さんに、心配されてしまった。

 僕はゴミを買い取って貰えるから……とも言えず、適当にごまかしていると、


「まぁギルドとしては、配達さえしていただければ、手段は問いませんが……早くD級冒険者になりたい理由があるんですね。わかります。魔物退治は冒険者の華ですもんね。ですがその反面、危険も伴うんです。幼い妹さんを連れているのですから、その辺りは気を付けていただきたく……」


 何故か物凄く長い話を聞く事に。

 別に僕は早く昇級したい訳でもないし、クリスは妹じゃなくて、どちらかというと弟的な存在なんだけど……と、心の中で突っ込み、


「では、北のカンパッチの街への荷物運び、宜しくお願い致しますね」


 ようやく冒険者ギルドを出る事に。


「お兄ちゃん。何だか、随分と話が長い人だったね」

「うん。疲れたし、ゴミ捨て場へ行く前に、どこかで休憩しようか」


 クリスと二人でカフェに入り、まったりしていると、


『カーティスさん。マリーが南西から、この街に向かっているのですが、同行者が増えていますね』


 シャルロットが話しかけてきた。


「……ジェームズは一緒なんだよね?」

『前に攻撃してきた人ですね? はい、一緒です』


 ジェームズはシャルロットを探していたけど、僕たちが逃げているから、実家から人を呼んだのかな?

 だけど、それなら実家のある南東から向かってきそうだし、そもそも実家で横柄な態度を取っていたジェームズに同行しようっていう人は居ない気がするんだけど。


 そんな事を考えながら、休憩を終えた僕たちはゴミ捨て場を回る。

 だけどイリアスの街と一緒で、数日前に僕たちが綺麗にゴミを片付けてしまったので、街のゴミ捨て場を全て回ったけど、余り大した量を収納出来なかった。

 一先ず、クリスと一緒にお昼ご飯に。


「やっぱり、新しい街へ行ってみるのが正解みたいだね」

「そうだね。お兄ちゃんと、二人で暮らすお家の為にも、いっぱい稼がないとね! クリス、お仕事ではあんまり役に立てていないから、いっぱい家事を頑張るね」


 く、クリスが見た目だけでなく、内面まで男の娘化が進んでる!?

 これはもう、下手に辞めさせようとするのではなく、受け入れるべきなのかな?

 そんな事を考えていると、


『カーティスさん。マリーが街に到着しました』


 マリーさんとジェームズたちが、この街に着いたと、シャルロットが教えてくれた。

 今は、街の西側の食堂なんだけど……あ、やっぱり西に向かって来るよね。

 だけど、マリーさんはシャルロットみたいに調べる性能が高くないないって話だから、ピンポイントで僕たちの所へ来る事はないだろう。

 そう思っていたら、鎧を身に纏い、腰に剣を差した男がお店に入って来た。


「失礼。この周辺に、国家反逆を企てる者が潜伏しているという情報がある。悪いが全員持ち物を調べさせてもらう」


 突然の事で店内が騒つくけど、誰も逃げようとしたり、抵抗しようとはしない。

 というのも、入って来た男が正規の騎士だからだ。

 全く関係ない事件に巻き込まれてしまったけど、ここは従うしかないかな。


「お兄ちゃん、国家反逆だって。怖いね」

「あぁ、そうだね。まぁでも、僕たちには関係ない話だからね。持ち物を調べるって言っても、変な物は何も持っていないし、大丈夫だよ」


 僕とクリスが持っているのは、買い物に使う用の財布と、それぞれの武器や杖に、シャルロットくらいだ。

 別に見られても……って、シャルロットはマズいか。

 これは何だ? って聞かれたら、答えられないしね。

 一先ず、こっそりゴミ保管スキルでシャルロットをストレージに格納して少しすると、僕たちのテーブルに騎士がやって来た。


「では、荷物を改めさせてもらう……これだけか?」

「はい。他には何もありません」

「そうか。だが、決まりでな。失礼する」


 騎士が僕の身体を服の上から触り……何事もなく終了する。

 一方、クリスの番になり……お店のウエイトレスさんが呼ばれ、騎士に代わって服の上からチェックする。


「何も持ってないと思いますが」

「わかった。このテーブルが最後か。……食事中失礼した。何か怪しい物を持っている者を見つけたら、近くの騎士に連絡して欲しい」


 騎士がお店中に響き渡る程の大きな声で謝罪し、お店から出て行く。

 元々関係ないから何かがある訳ないんだけど、一先ず何事も無くて良かった。

 そう思って席に着くと、


「良かったーっ! あの男の人に身体を触られなくて。クリスの身体を触って良い男の人は、お兄ちゃんだけだもん」


 クリスがほっと胸を撫で下ろす。

 男の娘モードだから仕方ないのかもしれないけど、僕も触ったりしないからね?

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