第7話
「はぁ・・・、今日はホント災難だったわ・・・もう銭湯は懲り懲りよ」
スーパー銭湯から出る時には、入った時より体力も気力も奪われ、げっそり疲れ果てていた。
「確かに大変だったかも・・・でも、楽しかったでしょ?」
「まぁ、思ってたより・・・は、ね」
桃は私よりも疲れてる筈なのに、まだ笑顔を絶やさないだなんて・・・
やっぱり私が勝てる筈が無かったわね。
「それにね、もっといい事があるんだよ!頑張った分は御天道様が、ちゃーんと見てるんだから!」
そう言って桃がポケットから取り出した物は、キラキラ光る硝子玉が付いたキーホルダーだった。
「紫もきっと持ってる筈だよ?」
そう言われて鞄を開けてみると、中に同じような硝子玉が付いたネックレスが入っている。
おかしい、身に覚えのないネックレスが鞄に入る訳がない。
「私、こんなネックレス知らないわ!?桃が入れたの!?」
「私じゃないよ、御天道様が紫を選んだんだね。これはサンキャッチャー。皆が嬉しかったり楽しかったり、幸せな気持ちになると溢れ出るサンシャインを集めて貯えてくれるものだよ。ほら、中に光の玉が見えるでしょ?」
ネックレスを覗き込むと、確かに光の玉が見える。
そうか、バッドレイニーがレインドロップを集めるように、サンレンジャーはサンシャインを集めていたのか。
だから桃はいつも必死に――
だとしたら桃にも叶えたい願いがあるのだろうか――
「それは紫が集めた幸せだよ!サンシャインには大きな力があってね、何でも願いを引き寄せられるんだって。だからこの力で願いを叶えて紫!」
「確かにレインドロップよりも大きな力を感じる・・・だけど、これだけじゃ届かないわ。
私が、もっと早くに自分の愚かさに気づき、悔い改められていたら――もしかしたら違っていたのかもしれないわね。
でも、これでよかったんだわ。
私は人々に恐怖を与えた罪人、罰を受けるのは当然だもの」
すると突然、桃は私の腕を掴んで走り始めた。
一体何故なのか、分からないまま引かれ走っていると前方から真っ赤なスポーツカーが走ってくる。
私達のすぐ隣で止まったその車に乗り込むと、前から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「行き先は何処だい?」
私は一瞬躊躇った、行きたい所は決まっている。でも――
『紫・・・俺もう駄目みたいだ。最後まで君を守ってあげられなくて、ごめん。すまない紫・・・またな――』
「天泣病院へ行って!」
私、何度間違えたら気が済むんだ。
また間違えるところだった。
あの時、晴人の手を掴めなくて泣いたんじゃないのか?
あの時、晴人に行くなと言えなくて後悔したんじゃないのか?
もう一度、もしももう一度があるとするのなら私は――
『彼を、救いたくはないか?』
『叶えようよ!!』
『無理じゃない!無理なんて無いんだよ紫!』
今度は絶対間合って、晴人を救ってみせる!!
晴人がしてくれたように――。
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