第2話

※ ※ ※


――サンタウン某所。



「ここまでだレイン!俺たちの必殺サンエナジーでお前を倒す!」


港近くの空き倉庫に悪の軍団『バッドレイニー』のボス、レインを追い込む事に成功したサンタウンの正義のヒーロー『サンレンジャー』。しかしレインの顔には諦めではなく余裕の笑みが浮かぶ。


「馬鹿を言うなスマイルレッド、全ては私の計画通りだ!」


レインが漆黒のマントをはためかせると、倉庫の天井一部が轟音を立て崩れ、落ちてくる。


「皆大丈夫か!?」


「あぁ、平気だ!それよりレッドあれを見ろ!」


粉塵の中ジャスティスブルーが指した方向、さっきまでレインを追い詰めていた方へ目を凝らすと、そこにはバッドレイニーの幹部達が勢揃いしていた。


「くそ、あと一押しだったのに」


「そう落ち込まずともいいさ、まとめて捕えられるチャンスと思えば気持ちも晴れるものだよレッド」


拳を握り締めるスマイルレッドの肩を叩いたのはリッチマンイエローだった。


「その声・・・忘れもしないにっくき声、あぁぁ片時も耳を離れないその声はぁぁリッチマンイエロぉおぉぉぉおぉぉ!!!!」


リッチマンイエローの声に反応したのか、物凄い形相で1人のバッドレイニー幹部が飛び出し、迷わずイエローに向き合う。


「やぁ、リストラッド。久々だけど元気にしていたかい?」


いつもながらの爽やかな笑顔で挨拶するリッチマンイエローだが、リストラッドは目を血走らせながら呪いの言葉を呟くばかり。

そして我慢の限界とばかりイエローに襲いかかった。


「リッチマンイエロぉぉおぉぉおぉぉ!!!!」


「どうやら、愚問だったようだね。レッド、コイツは僕に任せて。さ、リストラッド。僕の時間は高いからね!!」


リストラッドの攻撃を華麗に避けながら、イエローは遠くへと駆けていく。

と、同時に煙の中から高笑いが聞こえてくる。


「全く、馬鹿は困りますね。meより目立とうだなんて10億年早いというもの!さぁ、ここからはmeのtime!」


「させるか!」


大きなハットと黒い燕尾服に真っ赤なリボンの蝶ネクタイ。肩から垂れる黒いマントと真っ白な手袋は嘘と真実を、顔を覆う仮面はその心の内を覆い隠す。バッドレイニー幹部、怪盗バッドロボーが煙から姿を現し両手を広げたその瞬間、傍らから飛び出したジャスティスブルーが怪盗バッドロボーに斬りかかった。

しかしその剣先は、怪盗バッドロボーのステッキで止められてしまう。


「おっと危ないですね。狂犬はちゃんと繋いでおいて貰わないと困りますよ・・・」


「怪盗バッドロボー!今日という今日はこのジャスティスブルーが貴様を捕まえる!!」


剣先が受け止められようと、ステッキごと断ち切らんばかりに剣に力を込めるジャスティスブルーに、怪盗バッドロボーは空いている手を仮面の眉間にあて溜息をつくと、指をパチリと鳴らしてブルー共々消えてしまった。


「こうなったら仕方ない!二人でレインを倒しちゃおうよレッド!」


「ピンク。そうだな、やるしかないんだ!ありがとうピンク!君の元気には救われてばかりだ。二人でレインを倒そう!!」


サンレンジャーの紅一点、女性だからと言って甘く見てはいけない。キメハダピンクは持ち前のとても前向きな元気で、サンタウンの住人だけでなく、仲間達も危機から幾度となく救ってきた素晴らしいヒーローである。


「そうはさせないわ。アンタ達の相手は私、ハダアレイニーがしてあげる」


レインまであと一歩という所まで迫った、スマイルレッドとキメハダピンクであったが、バッドレイニー唯一の女性幹部、ハダアレイニーが二人の前に容赦なく立ちはだかった。


「しまった!このままではレインに逃げられてしまう!」


「大丈夫だよレッド!ここは私に任せてレインを追って!秘技、潤いミストハグ!!」


ピンクの剣から放たれた水は細かい霧状に広がり、ハダアレイニーをあっという間に包み込んだ。


「すまないピンク、ここは頼んだ!」


レインを追って走るレッドの背中へ、手を振って送り出したピンク。

だが、ハダアレイニーがこのまま大人しくなってくれるような敵ではない事を勿論ピンクは知っていた。


濃霧に包まれ白い球体になっていたハダアレイニーは、まるで羽虫でも払うかのようにさっとピンクの濃霧をかき消して退屈そうに垂れ下がった髪を弄んでいる。


「私に水は効かない。アンタが私に勝てない事なんて日を見るより明らか――って、ゴメン。日なんて出てなかったわね!」


襲い来るハダアレイニーに臆すること無く立ち向かうピンク。


「それでも私は負けない。太陽があるから皆が輝くんじゃない、皆が輝いてるから太陽が輝くんだ!!」


キメハダピンクとハダアレイニーの壮絶な戦いが今始まる――

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