『誰かの日記』

式の式

第1話 探しもの



「……ない」私はさっきから探している。早くしないと積み木が崩れる。


 ふと一冊のノートを手に取る。表紙には『日記』。


 私のものではなかった。だから開けたくなかった。


 しかし中が見えていた。長細いやつが命令に背いたせいで。


 仕方がないから、今回ばかりは多めに見てやった。むしろ褒めてやりたいぐらいだ。


 

 それで、主人公は……男だ。小汚い字がどんどんマシになっている。女も出てきた。一人、二人、いや三人で止まった。それから、今度は小さい男が出てきた。男と女と小さい男はよく一緒に出てきた。


 谷を越えた。小さい男はもう出てこなかった。間もなく男と女が出てきたが、一度しか出てこなかった。そのあとは女が出てこなくなり、男も出たがっていなかった。


 やがて、誰も出てこなくなった。代わりに忘れるな、とだけ出てくるようになった。一度ではなかった。何度も出てきていた。



 『日記』は終わった。積み木は揺れが止まった。


 私は探していた。


 


 


 




 




 

 

 

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『誰かの日記』 式の式 @s_3y

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