第105話 スタンピード⑪ 北門の詰所に
レオおじいちゃんは、持っていたマジックポーションを使い切ったのか「そろそろ戻ろうかの。アリス、茶を淹れてくれんか?」と言う。「リアムよ、後は、ひよっこに任せようかのぉ」だって、レオおじいちゃんらしいです。
「エリオット、後は任せたぞ」
「マルティネス様……」「「……」」
エリオット様達が呆れた顔でレオおじいちゃんを見る。
リアム様が「エリオット副隊長、代わりの者を」と言って、2人の宮廷魔術師を呼び寄せると、深緑色のマジックポーションをいくつか渡していた。
あれは、私が作ったマジックポーションじゃない……宮廷魔術団に納品されているマジックポーションかな?
「……リアム副団長、マジックポーションを頂いても宜しいのですか?」
「ありがとうございます。リアム副団長」
宮廷魔術師の1人は、信じられないと言った様子で、まじまじとリアム様とマジックポーションを交互に見ている。
「ええ、数に限りがありますから、考えて使うように」
「「はい!」リアム副団長」
もう1人の宮廷魔術師は、銀色の髪で青い目をしたルーカス・フェルナンデス様だった。リカルド様のお兄さんだ……目元が似ているかな。
こっちを見たので軽く頭を下げた。何か言いたそうな顔だけどスルーします。又、『溺愛している孫』とか言われたくないしね。
「アリス、知り合い?」
「うん。タロウ、前に店に来た、公爵家のリカルド様を覚えているかな? そのリカルド様のお兄さんで、ドラゴン戦で一緒だったの」
「へえ……あいつの兄弟か」
タロウ、公爵家の方を「あいつ」って……誰かに聞かれたら不敬だって言われるよ。テオも兄弟なのかと驚いているけど、あれ? 言ってなかったっけ。
「わしのMPは、すっからかんじゃ。邪魔にならんように戻るが、後はひよっこに任せたぞ」
「では、後をお願いしますね」
「「はい! マルティネス団長、リアム副団長」」
その場を後にして、レオおじいちゃんは真っ直ぐ北門に戻って行く。私達もレオおじいちゃんに付いて行くけど、あれ? 街に入る時は、東門か西門を使うんじゃ……宮廷魔術団は関係ないのかな?
ふと、空を見上げると、もう日が傾いている……あっという間だったな。
◇
北の詰所に戻って、レオおじいちゃんが使っている大きなテントに入った。
みんなにお茶を淹れて休憩です。
「ズズズ……ふう~、落ち着くわい。リアムよ、後はひよっこ達だけで十分じゃな」
「マルティネス様、早く終わらせる為にベテラン組も参加させます。後処理もありますからね」
魔物の亡骸は、街から少し離れた場所に運んで解体処理をしてから埋めるとか。冒険者ギルドにも依頼を出すけど、穴掘りや焼却に時間が掛かるから宮廷魔術師も参加するそうです。
「まあ、後処理は研究員と新人に任せますけどね。そうだ、アリス、タロウもお腹が減っていませんか? あちらに軽食があるので遠慮せずに食べて下さい。テオ殿もどうぞ」
そう言われると、朝食べてから何も食べてないな。
テントの隅にあるテーブルに、銀色の丸い
あっ、お腹が小さくグルグルって鳴った……お腹が空いていたんだ。
「リアム殿、ありがとうございます。遠慮なく、ご馳走になります」
「「いただきます!」」
お皿には、一口サイズの料理が並んでいて美味しそう~! 小皿とフォークを取って、テーブルの端にあるお皿から順番に食べる。
この黒いソースが絡まった肉はオークかな? 濃い目の味付けでパンを頬張ってしまう。ふふ。
テオは、「旨い! これは酒が欲しいな!」と言って肉ばっかり食べている。タロウは左手にパン、右手のフォークで料理とパンを交互に口に入れている……タロウ、小皿を使った方がいいよ。
「ところでアリス……」
「はい、リアム様?」
……何だろう?
「今回は、片手剣に『聖魔法』を付けて貰って助かりましたが、人前では『付加魔法』を使わない方が良いですよ。馬鹿なことを考える連中が出て来るかも知れませんからね」
リアム様に優しい口調で注意された。
「はい、リアム様……」
テオが、「今回アリスは、
「テオ殿、アリスが『付加魔法』を使えることは、わしもリアムも知っておるから気にせんでも良いんじゃ。ただ、リアムの言う通り、目立つと良からぬ奴が寄って来るからのぉ。気を付けた方が良いかも知れんな」
「えっ、俺は今日知ったのに……レオ様、御存じだったんですか?」
「なんと、テオ殿は知らんかったのか! この茶や、前にもらったクッキーや干し肉にも『聖魔法』や『回復魔法』が付加されていたではないか。フォフォフォ」
「ええっ!? ただ、旨いとしか……」
今回、初めて『付加魔法』で『聖魔法』を付けるって願って魔法を使ったけど、普段使わないスキルはテオに話してないからね。
今後、属性の付加が必要になる時は、なるべく人前で『付加魔法』を使わないように気を付けます。あぁ、属性魔法を付加した小さな魔法陣とか、魔道具が出来ないか考えても良いかも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます