第87話 テオ達とダンジョン20階から・ステータス

 ◇◇◇

 週末の闇曜日、テオ達とダンジョンへ向かう辻馬車の中で、次の『魔物討伐の実習』から、2パーティーで協力して20階のワープ・クリスタルを目指すことになったと話した。


「先生からね、冒険者パーティーが増えるから注意するように言われたよ」

「ああ、冒険者ギルドでも、学園の生徒がダンジョンに入る時期になると知らせが出るんだが……」


 毎年、冒険者と生徒の間で「魔物を取った、取られた」と言ってめるらしい。


「貴族の子供はプライドが高いっていうか、偉そうなのが多いからややこしくなるんだ」


「俺は、テオに知らない貴族には関わるなって言われたから、貴族っぽい冒険者を見かけたら目も合わさないよ。ダンジョンの外でも無視している」


「ああ。タロウ、それで良いぞ」


 タロウは、どっちかと言うとおとなしいけど、ちゃんと自分の意見を言う。そして、テオから言われたことはしっかり守ろうとするのよね。


 学園の授業でもダンジョンでのマナーを教えてもらったけど、テオから教えてもらったのと余り変わらない。


 違うのは、他の冒険者パーティーからの救助要請は受けないように言われたことかな。最終判断はリーダーに任されているけど、私達は未成年で授業としてダンジョンに入っているからだって。


 ◇

「ダンジョンに着いたぞ。アリス、タロウ、『身体強化』をしっかり掛けろ!」

「「はい!」」


 インプ狩りにも慣れたから、今日はダンジョンで1泊して30階のワープを目指す。


「アリス、今日はなるべく魔法を使うな。魔法を使うのはインプやゴブリンメイジの詠唱カットだけで良いぞ。25階からコカトリスが出て来るから、MPは極力温存してくれ」


 コカトリスから『石化』攻撃を受けた時の為に、ってことね。


「うん、分かった」


 でも、ハイオークとオークの3体組が出て来たら『スリープ』を掛けよう。その方が安心してテオ達の狩りを見ていられるからね。


「今から、26階にあるセーフティエリアを目指す。今夜はそこで野営をするからな」

「「はい」」


 ダンジョンには『セーフティエリア』と呼ばれる安全地帯があって、その場所には魔物が入ることも、湧くこともないから安全に野営が出来るんだって。


 今夜はそこで野営をして、明日30階のワープ・クリスタルを目指すけど、無理そうだったら引き返す予定。


「お前達に『帰還石』を渡しておく。良く聞け、25階から先に進むと冒険者パーティーに出くわすことも増えるだろう。誰かに、これを売ってくれと言われても絶対に手放すな。これは自分の命を守る石だからな」


 テオから、片手で包み込める大きさの黒い石を渡された。


 この『帰還石』は、ランクB以上の特定の魔物が落とすレアアイテムで、ギルドでの買取り価格が金貨10枚と高額だけど、深い階層で狩りをする冒険者には必須アイテムだから、ドロップしてもほとんど売らないそうです。


 因みに、<リッヒダンジョン>で最初に『帰還石』を落とす魔物は、30階から出て来るジェネラルオークだって。


「自分の命を守る石……分かった。売らない」

「この黒い石が金貨10枚もするの?」


 黒光りしていて宝石みたい。


「この石の使い方は、強くにぎり締めて魔力を流すんだ。魔力を使い切ってない時は、強く地面にたたきつけるとダンジョンの入口にワープ出来るからな」


 25階から出て来るコカトリスとジャイアントスネイクを狩ってみて、キツそうだったら20階まで戻るか、場合によっては、この『帰還石』使ってダンジョンの外に出るからなと言われた。


 ◇

 3人で20階までワープして最短距離を進んで行く。


 ギルドで売っている40階までの地図を持っているから、迷うことはないけど……魔物が多い。ホブゴブリンとゴブリン、ハイオークとオークは2~3体で出て来るから、狩る数が多いよ!


 先週も、ダンジョンの20階から24階辺りで狩りをしていたけど、他の冒険者パーティーは見なかった。コカトリスの肉や上質肉狙いの冒険者は、ワープで30階まで飛んで29・28階辺りで狩るんだって。


 だからかな~、魔物の数が多いのよね。20階からのフロアーでは、下層への階段まで来るのに、たっぷり1時間半は掛かる。


 途中、24階へ向かう階段でお昼を兼ねて休憩する。ここに来るまでに見かけた冒険者パーティーは1組だけだったなと考えながら、テオ達にサンドパンを2個ずつ渡した。


「アリス、残りのMPは?」

「うん、まだ半分あるよ。足りなくなったらマジックポーションを使うね」


 学園で支給されたマジックポーションは使えないけど、自分が作ったのが3本あるからね。


「半分あるなら大丈夫だろう」


 テオ達はサンドパンを食べた後に干し肉も齧っているけど、イーサン様とユーゴの食べっぷりを考えると、サンドパン2個では足りないんだろうな~。でも、食べ過ぎると動きが鈍くなるからね。


 休憩が終わって、地図を確認しながら25階へと続く階段を目指して進むけど、相変わらず魔物の数が多い……あっ、階段だ。


 階段を下りて、25階のフロアーに入ると――目の前に、ハイオークが2体のオークを連れて出迎えてくれた。こっちに向かって咆哮をあげている。


「俺、上質肉!」


 タロウが、叫びながら中央にいるハイオークに『挑発』を入れて突っ込んで行った。


「ブッ! じゃあ、俺はオーク肉だな!」


 テオは左にいるオークに『挑発』を入れてから、右側のオークへと突っ込む。


 肉って、2人とも余裕だね。私は、この前『風魔法』のランクが上がったから、ここからは普段使わない魔法を使おうかな『ステータス・オープン』。


 ――――――――――――――――

 名前  アリス

 年齢  13歳

 HP   45/47

 MP  413/758

 攻撃力  C

 防御力  B

 速度   B

 知力   A

 幸運   B

 スキル・生活魔法 ・鑑定B ・料理A ・身体強化B→A

 ・火魔法B ・風魔法A ・土魔法B ・水魔法B

 ・闇魔法A ・光魔法A ・雷魔法B ・氷魔法B

 ・回復魔法S ・聖魔法S ・無属性魔法A ・空間魔法C 

 ・付加魔法A ・浄化魔法S ・短剣C ・錬金術A

 ・片手剣E ・盾F ・棍棒F

 ――――――――――――――――

 MPはまだ半分はある。あっ! 『身体強化』が『A』に上がっている。ふふ、嬉しいな。


 今日は『火魔法』を使おうかな。先ずは、テオが『挑発』を入れた左のオークに『スリープ』を入れておこう。

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