第3章 魔術科2年生
第59話 大森林でー魔術科2年
この春、魔術科の2年生になり、制服の胸元のリボンが青色になった。
火の曜日の午後は変わらず魔法演習の授業で、毎週レオおじいちゃんが迎えに来てくれるけど、3年になったら魔法の演習は午前になるそうです。他の授業でも迎えに来てくれるのかな? ふふ、レオおじいちゃんには関係ないかもね。
店に帰ると、リアム様が来ていることもあって、いつもテオと何か真面目な話をしている。
リアム様が店に来るようになったのは去年の冬休みに入った頃で、マジックポーションが出来たと連絡したら店まで取りに来たの。その時、リアム様は淡い青紫色のマジックポーションを手に取って、うっとり見つめていたなぁ。
それから、ポーションが出来るとわざわざ店まで来るようになって、私の顔を見ると必ず話し掛けてくれる。
「アリス、マジックポーションを作ってくれてありがとう。学園で困ったことはないですか? 変なのが近寄って来たりしていませんか?」
「変なの? リアム様、いませんよ」
ドラゴン討伐の後、知らない先輩が話を聞きたいって声を掛けて来たりしたけど、
その後、私が、レオおじいちゃんの孫だと言う噂が流れてちょっと困ったけど、あの時……宮廷魔術団の人達が、『お気に入りじゃなくて溺愛する孫だな』と言ったのが広まったんじゃないかと思う。それか……私が『レオおじいちゃん』と呼んでいるから、勘違いされたのかもね。
「アリス、茶にしようかのお」
「はい、レオおじいちゃん。お茶を淹れて来ますね」
リアム様とテオが何を話しているのか気になって、レオおじいちゃん達が帰った後、テオに聞くと「学園でのアリスの様子を聞かれただけだ」と言う。
でもね、リアム様が来る時は、レオおじいちゃんとは別に美味しいお菓子を持って来てくれるから楽しみなの。ふふ。
今日は、リアム様の家の料理長が作った、細かく砕いたナッツとバターたっぷりの焼き菓子を持って来てくれた。焼き立てみたいでほんのり温かくて美味しかった~。
◇◇◇
夏が来る前、<リッヒ王国>の西隣にある<ナルク王国>でスタンピードが起きた。
<ナルク王国>で起きるスタンピードは、そのほとんどが大陸の西の海岸近くにあるダンジョンで起きるから、<リッヒ王国>の騎士団が国境近くに派遣されることはなかったそうです。
でも、今回スタンピードが起きたのは、<ナルク王国>の北にある山脈――<北の帝国>との国境になっているあの山脈は、<大森林>から大陸の西にある海まで続いている――にある<リッヒ王国>に近いダンジョンだった。
魔物が、隣国との国境になっている大きな河を越えてこちら側に来る可能性は低いけど、河の近くにあるにデイル伯爵領の街に、第一騎士団と宮廷魔術団が派遣されたとレオおじいちゃんが教えてくれた……デイル伯爵領って、アルバート様の実家がある所だよね。
「今回は、リアムを行かせた。テオ殿、わしは留守番じゃ」
「ああ、前回、レオ様は暇だって言ってましたね」
「うむ。リアムにも、副団長としての経験を積ませんとな。まあ、ドラゴンのことを思えば、どんな魔物の討伐でも
「あぁ~、あれと比べたら、
確かに、ドラゴンに比べたら……どんな魔物が現れても何とかなりそうな気がする。
「レオおじいちゃん、お茶のおかわりを淹れましょうか?」
「うむ。アリス、頼む」
エリオット様達やリアム様が帰って来たのは、それから2ヶ月も経ってからだった。
今回、隣国で溢れた魔物の中には空を飛ぶ魔物が多くいて、数体がデイル伯爵領内にまで入って来たとか。隣国からスタンピード討伐完了の知らせが届いた後も、隣国が討ち漏らした魔物がこちら側に来ないか、数日の間様子を見ていたそうです。
◇◇◇
10の月の第2光の曜日、私の13歳の誕生日。今年もテオに服を買ってもらった。
水色の裾の広がったワンピースで、腰の辺りから段々と色が濃くなって、スカートの途中から青色になっているの。腰の部分を結べる同じ色のリボンと、丈の短い青色のベストも付いていて、普段着には勿体ないけど気に入ってしまった。
「アリスは何を着ても可愛いな!」
「ふふ、テオ……ありがとう」
テオの親バカ発言は、有難く受け取っておこう。店の人は愛想笑いでニコニコしているしね。
お昼は、テオと屋台を食べ歩いて帰ります。夕方に、エリオット様とレオおじいちゃんのプレゼントが届くからね。
夜は……何を作ろうかな? オークハムをいっぱい乗せたサラダに、コカ肉に香草を混ぜて団子にしたスープとチーズを乗せたパン。それとメインは……、
ドラゴンの肉にしようかな? 油にニンニクを焦がさないように焼いて、塩コショウしたドラゴン肉を焼くだけのステーキ! ジューっと、少し焦げ目を付けて……玉ねぎのソースを掛けても美味しそうだね。うっ、考えただけでヨダレが出てくる。
◇
午後、執事のトーマスさんが、エリオット様からのプレゼントを持って来てくれた。
「アリス様、エリオット様からの誕生日プレゼントです。どうぞ、お受け取りください」
「ありがとうございます」
お礼を言って、大きな箱を開けてみると淡いオレンジのフリルの付いた綺麗なドレスと、黄色の宝石が付いたネックレスとイヤリングだった。添えられてあるカードには、
『私の大切なアリスへ、13歳のお誕生日おめでとう。エリオット・フィリップス』
と、書かれていた。近頃、エリオット様は『女神』という言葉を使わなくなったのが嬉しい。
後ろから覗いているテオが「俺の大切なアリスだ……」と呟くのが聞こえたけどスルーしておく。トーマスさんにも聞こえたみたいで「フフ、アリス様は愛されていますね」と笑っている。恥ずかしいな……。
毎年、エリオット様はドレスをプレゼントしてくれるんだけど、一度も着る機会がないの。
時々、部屋でこっそり着てみるんだけど、ドレスのサイズは大きめに作ってあって、去年もらった黄色のドレスが今ピッタリなの。
11歳の時にもらったドレスは少しきついんだけど、淡いピンクのフリフリに隠れている編み上げの紐を調整して広げれば、まだ着られる。スカートの丈が少し短いけど……庶民は気にしな~い。自分の部屋の中なら大丈夫!
3年生になったら一般教養でダンスの授業があって、男の子は制服で女の子はドレスを着て授業を受けるんだって。庶民には学園でドレスを貸してくれるって聞いたから、それを着るつもり。
だって、エリオット様からプレゼントされたドレスを汚したくないからね。もしかしたら、その為にドレスをプレゼントしてくれたのかも知れないけど……。
エリオット様からプレゼントのドレスを着るのは、学園の最後にある3年生の卒業パーティーになりそうだな。
夕方、リアム様が来られた。
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