アルバート・デイルのつぶやき ①
『テオの薬屋』を出て、第一騎士団に戻りながら考えていた。
アリスが、エリオット副隊長の呪いの痛みを消すほどのポーションを作っていた。しかも今回、マジックポーションまで作ったと言う。更に、回復魔法のスキルも持っている。あんな幼い子が……危ういな。テオ殿が黙っていたのも頷ける。
騎士団に戻り、エリオット副隊長の執務室に入るとロペスもいた。
「戻りました。エリオット副隊長、テオ殿からポーションを更に30本納品してもらいました」
「30本! それは助かるな」
成人男性のHP(ヘルスポイント)は、個人差はあるが45~100位で、騎士団員になるとHPは300以上になる。基本、一度に使えるポーションは1本で、次のポーションは数時間開けないと使えない決まりになっている。基本はだ。
ダンジョン産のポーションはHPを50回復するが、『テオの薬屋』の自家製ポーションは、壁に貼ってあった商業ギルドの証明書には『HP60回復』と書いてあった。自家製ポーションの場合、プラスマイナス5程度の誤差はあるのだが、訓練中に痛みが出た副隊長が、テオ殿のポーションを飲んでHPが100も回復したことが分かった。
再度、テオ殿のポーションの回復量を調べる為に、副隊長から1本譲り受け、鑑定が出来る者を2名揃えて別の騎士に飲ませたら、HPが102も回復した。素晴らしいポーションだ。
騎士には有難い効能で、しかもポーションの値段が銀貨3枚銅貨3枚など破格の値段だ。本当は、テオ殿のポーションを騎士団に納品して欲しいのだが、今は上層部の息が掛かった大手の薬屋が納品しているので、勝手に取引相手を変えることが出来ない。良くある話だ。
まあ、HPを65回復すると言われているからダンジョン産より良いが、HPの多い騎士は個人的に『テオの薬屋』へ買いに行く。私も保険に1本買って持っているが、魔物の討伐で怪我をした時、HP65より100回復するテオ殿のポーションを飲むだろう。自分の命が掛かっているからな。
そのポーションをアリスが作っていたとは……驚きだ。
「それと、これを預かってきました」
2本の淡い青紫色のマジックポーションを机の上に置くと、エリオット副隊長とロペスが興味深そうに見る。
「アルバート、これは……まさかマジックポーションか? 普通のマジックポーションと色が違うな。テオ殿はマジックポーションも作れるのか?」
「いえ、副隊長。このマジックポーションは、アリスが試作品として作ってくれました」
「何? アリスがマジックポーションを作ったのか……」
「アリスが……」
私の報告に、エリオット副隊長とロペスが驚いている。ええ、私も驚きましたよ。
「はい。ただし、2個しか作れなかったので、MPの回復量を調べていないそうです」
マジックポーションは作るのが難しく、ベテランの錬金術師でも失敗すると聞く。ここ王都でも、安定して作れる錬金術師は数名しかいないと聞いた。
「それと、副隊長、実はポーションもアリスが作っていたそうです」
「何だって……アルバート、それは確かなのか?」
「えっ、あのポーションを……」
そう、あの効果の高いポーションを作っていたのがアリスだった。2人とも目を見開いて驚いている。
「はい。テオ殿とアリスから聞きました。以前は、テオ殿が作っていたそうですが、今はアリスが作っていると」
「なるほど、アリスが作っていたのか……」
副隊長は、何故か納得した表情をしている。
アリスが、子供の自分が作っていると知られると面倒になると思い、テオ殿が作っていることにしたのだと話した。それと、アリスが隠していてごめんなさいと言っていたことも伝える。
「テオ殿とアリスには、他言はしないと伝えております」
「そうだな、アリスが作っていることは口外しない。ロペスも肝に銘じておいてくれ」
「勿論です。しかし、アリスは凄いですね。回復魔法も使えて、マジックポーションまで作れるなんて」
「ああ、そうだな。さすが私の『女神様』だ……」
副隊長が
「アルバート、そのマジックポーションはお前が持っていてくれ。回復量が分からないのは使い手が困るだろう」
「分かりました」
「だが、ポーションであの効果だからな。普通のマジックポーションより回復量が多い気がする……」
「副隊長、「ありえますね」」
成人の魔力量、MPは10~100程度だが、属性魔法を使える者のMPはもっと多い。騎士の中にも属性魔法を使える者がいて、低レベルの火魔法が使える私でMP200程。中には300以上のMPを持ち、中レベルの攻撃魔法を使える者もいる。エリオット副隊長とロペスがそうだ。
宮廷魔術師になるとMP500以上あるらしい。通常のマジックポーションはMPを100程度回復するのだが、アリスが作ったマジックポーションはどれぐらい回復するのだろう。楽しみだな。フフ。
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