第41話 セックするぞ!

「おぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」


 再びレインの脳内世界。

 大人レインは特大の絶叫とともに、背中から砂場に倒れて転がって砂まみれになる。


「落ちつきなさい」


「なんでセックスするなんて言い出すの?! すぐ隣にシルちゃん居るよね?! 先輩、同意しちゃったよ! どうするの?!」


 緊急事態なのでうぶなレインも、つい普段は口にできない「セックス」という単語を口にしてしまった。


「どうも、こうも、セックスするのよ。愛し合う私達は恋人になるの。貴方が望んだことよ」


「順番が逆だし、いきなりすぎだよ?! 今日のわたし自転車で来てるから軽く汗をかいてるかもしれないし、2000円のTシャツと、ジーパンで、スポブラだよ?」


「大丈夫よ、ほら」


 幼女レインが公園の端っこにある柱を指さす。

 柱の上の方にはスピーカーがある。地域の防災無線か何かだろうか。


 そこから、よく知る人の声がする。


『あー。ちょっと待っててくれ。日本に行っていい感じの服を買う……のは厳しいからレンタルしてくる。ゴムとかは買った方がいいよな。ちょっと行ってくる……。その間に……シャワー浴びてて……』


 トッシュの声だ。

 照れくさそうにしている口調が、妙に生々しい。


 幼女レインが大人レインに現実世界の音を届けるために小細工したのだ。


「ね。トッシュが服を買ってきてくれるそうよ。スクール水着とかブルマとか、変態チックじゃないのだといいわね」


「な、ななな、なにを言ってるんですか?! というか今の声、本当にトッシュ先輩の発言ですか?!」


「そうよ。貴方だって私なんだから、今のが現実世界で実際に聞いた言葉だって、分かるでしょ?」


「そ、そうですけど……」


『もちろん、シルもだ。仲間はずれになんてしないよ。ちょっとキツくて痛いかもしれないけど、我慢してもらうからな』


「え、待って。前後の会話が聞こえてないんですけど、先輩、シルちゃんもってどういうこと?」


「ど、どうやら、3Pのようね。望むところだわ」


 さすがに幼女レインもちょっとだけ動揺している。


『……俺、やり方とか知らないから、調べてくる。ちょっと遅くなったらすまん』


「どうやらトッシュは童貞のようね。処女の私にちょうどいいわ。お互い失敗しないように頑張らないと。かしこさ150でも、知らないものは知らないわ。けど、いざことが始まれば、このかしこさで、お互いの気持ちいところを即座に見つけ出して最高のセックスにしてみせるわ」


 幼女レインが決意を固めている頃、大人レインは事態についていけず、ほげーっと涎を垂らしていた。脳内世界の中に居ながら、さらに脳内の自分世界へと現実逃避していたのだ。


 幼女レインが限られた知識を基に、どうすればお互いの体の相性を最高に高めて絶頂を迎えられるか脳内のさらに脳内でシミュレートする。

 私の体を忘れられなくしてあげる。

 肉欲と快楽の虜にして、一生、私なしでは生きていけないようにしてあげる。

 幼女のくせに、とんでもないことを考えていた。


 もしかしたら、この幼女レインすら、かしこさ150が生みだした仮想レインかもしれない。


 真の大人レインはほげーっと放心を続け、そして――。


 スキルを使って超加速して日本に行き、必要なものを手に入れたトッシュが息を切らして戻ってきた。


「はぁはぁ……。始めようか……」


「う、うん……」


 シャワーを浴びたあとのレインはバスタオルで身を包んだだけだ。


 幼女レインはトッシュの視線を胸元に感じた。


「下着は?」


「つ、つけてないよ……」


「ああ、良かった。すぐに始められるね」


 さすがの幼女レインも、これから始まることへの期待と不安で胸がドキドキだ。


 洋館はナーロッパの荒野にあるから、外から覗かれる心配はないのだが、トッシュはカーテンを閉めた。


 応接間の中には、トッシュ、レインの他に、シルが居るし、ルクティも呼ばれた。


(初めてで4Pなんて、トッシュ、大胆で無謀ね)


 幼女レインの脳内幼女レインは、かしこさが150あるからちょっとだけおかしいと思った。

 いくらなんでも、「初めて」で「やり方をよく知らない」男が、いきなり女を3人も集める?

 まずは、失敗しても許容してくれそうな私からやるべきでは? 知り合ってから一番長いんだし。


 それに、レインは幼児退行していても肉体は17歳だからヨシとして、ルクティは14歳だけどナーロッパ人だし巨乳だからヨシとしても、7歳のリアル幼女のシルまでセッ――?!


 だが、確かにトッシュは「コスチュームをレンタルして、ゴムを買ってくる」と言って日本に行ってきた。


 貞操観念の緩いナーロッパで淫らなパーティがこれから始まるのでは……?


「さあ、せっくするぞ!」


 トッシュは宣言し、紙袋を開けた。

 中には花柄模様の和風な服。着物だ。


 さらにヘアゴムもある。


「シルが7歳、幼児退行したレインが5歳くらい。だから、節句がしたかったんだろ」


 セックス、節句する!

 トッシュは聞き間違えて、節句の七五三だと勘違いしていたのだ。


 そして、レインが幼児退行した原因は、幼少期の思い出にあるのでは?

 七五三のお参りに行けば元に戻るのでは?

 ほら、神社の神聖なパワー的ななにかで、治る……?


 そう考えて、急遽、七五三の節句を祝うことにしたのだった。

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